隻眼の現人神《隻眼のリビングゴッド》
少年の決意
目覚めたら見知らぬ天井だった。
狭い個室に鼻にくる消毒液の臭いが立ち込めている隅に設置された純白のベッドからゆっくりと起き上がる隼人。
「おはようございます。と言っても、もう夜ですが」
ベッドサイドの椅子に腰掛けていたハトホルは、紫陽花のような深い蒼紫色の髪を揺らし暖かな笑みを隼人に向け、言う。
「和奏は…和奏は無事なのか…?」
「ええ、長く噴煙を吸っていたので普通の人間であれば死んでいたはずなのですが、彼女の身体は見かけによらず頑丈だったようです。身体になんの異常も見つからなかったのですが、今はまだ別室で寝ていますよ」
「そうか…よかった…本当によかった……」
隼人は心底安堵した様子で呟くと、瞳を潤ませる。ハトホルは咳払いをし、そのまま続けた。
「後、貴方が抱えて来た小娘ですが…」
「來花か!?まさか手遅れだったのか……?」
「いえ、私の権能で一命は取り止めました。ただ、出血が余りにも多かったため、今は手術を受けている状態です。おそらくしばらく目覚める事は無いかと思います。彼女には色々と聞く必要があったのですが、まだ先のようですね…」
ハトホルは少し険しい顔をすると、今度は目の前で胸を撫で下ろしている少年に問いかける。
「隼人、貴方にも聞かなければならない事があります。察しは付いているかと思いますが、よいですね?」
「…ああ」
「貴方が再び立ち上がった時に感じた感覚、貴方が炎を操り道を作った時の残渣、私が間違えるはずがありません。」
「貴方は、ホルスなのですか?」
「違う。けど、あんたの旦那とは会ったよ。そして今も多分俺の中にいる。」
「…どういう意味ですか?」
ハトホルは怪訝そうに顔をしかめる。
「俺、來花に刺されて一回死んだんだ。 そんで目を開けたらなんか壁に人やら動物やらが彫り込まれてて、真ん中に高価そうな金の椅子が2個置いてある遺跡みたいな所に飛ばされててさ、そこでホルスに会ったんだ」
隼人は思い出すように視線を宙に向けながら続ける。
「で、俺の願いを聞くなら生き返らせてやるし、俺の力もくれてやるって言われて気づいたらモールに居たんだよ。」
「金色の玉座と壁の彫刻、戦いの前の私たち夫婦の神域、エドフ神殿ですね…今はもう形を残って居ませんし、貴方が知る由もない場所。 どうやら嘘ではないようですね。」
ハトホルは不思議そうな顔をして続ける。
「ホルスは貴方に何を願ったのですか?」
「俺はもう戻れないから代わりにあんたのことを守ってほしい、ってさ」
言い終わると同時にハトホルは純白のベッドに泣き崩れ、嗚咽を上げる。
隼人は、純白のベッドに顔を埋める目の前の女性の頭をゆっくりとさすりながら呟く。
「初めて権能を使った時な、使い方なんて全く知らないのに身体が勝手に動いたんだよ。 だから多分、ホルスは俺の中で生きてる。またいつか会えるかもしれないだろ?」
「その時までホルスの代わりに俺がお前を守ってやるからさ、泣くんじゃねえ」
隼人はハトホルに優しく笑いかけると、ハトホルは顔を上げ、真っ直ぐに隼人の紅蓮の瞳を見つめて口を開く。
「本当にお人良しなのですから…今回の件、おそらく彼女は私を狙って来ていたのですよ?私と共にいればまた殺されてしまうかもしれません。それでも貴方は私を守ってくれるというのですか?」
「まあ、そん時はそん時だ。男同士の約束は絶対守るってのが俺の信条なんでね!」
「全く…貴方という人は…でも、貴方に会えて、初めて出会った時に貴方を選んで、本当によかったです」
「それでは、守ってもらうことにしますので、今後ともよろしくお願いしますね?」
ハトホルは小首を傾げ、満面の笑みを隼人に向ける。
隼人は顔を赤らめ、照れ臭そうに小さく返事をした。
狭い個室に鼻にくる消毒液の臭いが立ち込めている隅に設置された純白のベッドからゆっくりと起き上がる隼人。
「おはようございます。と言っても、もう夜ですが」
ベッドサイドの椅子に腰掛けていたハトホルは、紫陽花のような深い蒼紫色の髪を揺らし暖かな笑みを隼人に向け、言う。
「和奏は…和奏は無事なのか…?」
「ええ、長く噴煙を吸っていたので普通の人間であれば死んでいたはずなのですが、彼女の身体は見かけによらず頑丈だったようです。身体になんの異常も見つからなかったのですが、今はまだ別室で寝ていますよ」
「そうか…よかった…本当によかった……」
隼人は心底安堵した様子で呟くと、瞳を潤ませる。ハトホルは咳払いをし、そのまま続けた。
「後、貴方が抱えて来た小娘ですが…」
「來花か!?まさか手遅れだったのか……?」
「いえ、私の権能で一命は取り止めました。ただ、出血が余りにも多かったため、今は手術を受けている状態です。おそらくしばらく目覚める事は無いかと思います。彼女には色々と聞く必要があったのですが、まだ先のようですね…」
ハトホルは少し険しい顔をすると、今度は目の前で胸を撫で下ろしている少年に問いかける。
「隼人、貴方にも聞かなければならない事があります。察しは付いているかと思いますが、よいですね?」
「…ああ」
「貴方が再び立ち上がった時に感じた感覚、貴方が炎を操り道を作った時の残渣、私が間違えるはずがありません。」
「貴方は、ホルスなのですか?」
「違う。けど、あんたの旦那とは会ったよ。そして今も多分俺の中にいる。」
「…どういう意味ですか?」
ハトホルは怪訝そうに顔をしかめる。
「俺、來花に刺されて一回死んだんだ。 そんで目を開けたらなんか壁に人やら動物やらが彫り込まれてて、真ん中に高価そうな金の椅子が2個置いてある遺跡みたいな所に飛ばされててさ、そこでホルスに会ったんだ」
隼人は思い出すように視線を宙に向けながら続ける。
「で、俺の願いを聞くなら生き返らせてやるし、俺の力もくれてやるって言われて気づいたらモールに居たんだよ。」
「金色の玉座と壁の彫刻、戦いの前の私たち夫婦の神域、エドフ神殿ですね…今はもう形を残って居ませんし、貴方が知る由もない場所。 どうやら嘘ではないようですね。」
ハトホルは不思議そうな顔をして続ける。
「ホルスは貴方に何を願ったのですか?」
「俺はもう戻れないから代わりにあんたのことを守ってほしい、ってさ」
言い終わると同時にハトホルは純白のベッドに泣き崩れ、嗚咽を上げる。
隼人は、純白のベッドに顔を埋める目の前の女性の頭をゆっくりとさすりながら呟く。
「初めて権能を使った時な、使い方なんて全く知らないのに身体が勝手に動いたんだよ。 だから多分、ホルスは俺の中で生きてる。またいつか会えるかもしれないだろ?」
「その時までホルスの代わりに俺がお前を守ってやるからさ、泣くんじゃねえ」
隼人はハトホルに優しく笑いかけると、ハトホルは顔を上げ、真っ直ぐに隼人の紅蓮の瞳を見つめて口を開く。
「本当にお人良しなのですから…今回の件、おそらく彼女は私を狙って来ていたのですよ?私と共にいればまた殺されてしまうかもしれません。それでも貴方は私を守ってくれるというのですか?」
「まあ、そん時はそん時だ。男同士の約束は絶対守るってのが俺の信条なんでね!」
「全く…貴方という人は…でも、貴方に会えて、初めて出会った時に貴方を選んで、本当によかったです」
「それでは、守ってもらうことにしますので、今後ともよろしくお願いしますね?」
ハトホルは小首を傾げ、満面の笑みを隼人に向ける。
隼人は顔を赤らめ、照れ臭そうに小さく返事をした。
「現代アクション」の人気作品
-
-
4,126
-
4,981
-
-
986
-
755
-
-
817
-
721
-
-
756
-
1,734
-
-
186
-
115
-
-
184
-
181
-
-
183
-
157
-
-
181
-
812
-
-
149
-
239
コメント