魔王様は現代社会で無双できない

脇道

反逆者

 「単刀直入に申し上げますと社員がストライキしました」

 開始早々konozamaである。

「え?なんて?‪w」


 連日の書類整理と免許を持たぬ部下の送迎で疲労しきった魔王はやけくそ気味に答える。


 「思考能力が幼児ほどに低下した今の魔王様に分かるように説明致しますと……社員約180名が給料増やせと言って自宅ダンジョンに引きこもってしまいました。」

 「は?」

 「魔王様は母国語のリスニングもまともにできないんですか?」


 何でコイツは常時威圧的なんだと考えながら、正常な思考を取り戻そうと苦労すること3分弱。


 「…先程の話、詳しく聞かせよ」


 結局自力で正常な思考は取り戻せなかったのでエナジードリンクに頼り回復する。

 やべぇめっちゃ目冴えた、翼をさずけるってのは本当だったのか。


「今回ストライキを行ったのは1ー2の洞窟に配備されていたスケルトンたちです」

「む?あそこ亀と椎茸の化け物しか居ないんじゃ?」

 そんなことを言った瞬間、頭に激痛が走った。

 秘書に飛び膝蹴りされる魔王なんてどの世界線探しても我1人だろう。

「これ以上ふざけるのなら夜空の星にして差し上げますよ?」

 マジ怖ぇ

「すまぬ、それスーパー森男もりおブラザーズの話だった許せ我が秘書」


 そんな魔王の謝罪を完全にスルーして秘書は続ける。

「ストライキを扇動したのはあの暗黒騎士です」


 ホントなんでもやってくれるな我が騎士あのアホ


 部下が使えないと愚痴っていたがその言葉をそっくりそのまま返したい…。


 「致し方ない…我が直接出向こうぞ……竜族ドラグーンで手の空いているものを数名招集せよ」

 「トカゲども…ですか……それはまたどう言った理由で?」

 「1ー2ステージまで魔王城ここからだと相当時間がかかるだろう?」

 「いつもの車で行けば良いのでは?」

 「昨日、北の砦に出向いた際ガソリン入れて帰るの忘れてな…」

 「あ、そうですか」

 さして興味のない様子で手元の書類に目をやりながら答えられ魔王は少ししょんぼりする。

 そんな秘書を残し玉座の間を後にする。


 本来、上司はストライキを起こした者たちと妥協点を探し話し合いをするのが筋だろう。


 駄菓子菓子!ここは泣く子も黙る魔王軍。

 つまり……


「これより!我…魔王に反逆した愚か者どもの討伐に向かう!ボーナス出ない!残業手当も出ない!そんな日頃のストレスを心ゆくまで反逆者にぶつけるがよい!」


 わずか5分足らずで招集された竜族の軍を前に魔王は咆哮する。

「ねじ伏せろォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」

  「「ヴォォォォォォォォォォォォォ」」

 
 その雄叫びを合図に魔王は竜族と共に城を出た。


 その後近所から騒音についての苦情が山ほど来ることを魔王はまだ知らない。





今月の目標
                ガソリンの補充

コメント

コメントを書く

「コメディー」の人気作品

書籍化作品