諸行無常な恋模様 ―恋は常に変化する―
第2話 再婚
俺はリビングから出ると、階段を登り妹の部屋の前まで来た。
「光。大丈夫か?」
「⋯⋯」
ドアの向こう側へと問いかけるが返事はなかった。
「光。部屋、入ってもいいか?」
「⋯⋯」
今度は部屋へ入ると伝えたが、返事はなかった。
光は嫌なことは嫌ってしっかりと言うやつだ。
俺の要望に光が返事をしなかったということは嫌じゃないということ。
俺はドアノブに手をかけ、回し、ドアを開ける。
光の部屋は俺の部屋の隣で構造も同じ。
部屋は6畳程で、部屋の左端に机、右端にはベットがある。
そして光は地面に座りベットにもたれかかっていた。
「光、大丈夫か?」
「うん。いきなりだったからちょっと、ね」
そう言う光は俯いていた。
そんな顔してちょっと、かよ
「嘘つけ!!」
「ちょっ、ちょっと、何すんのよ」
俺は暗い顔をしている光を元気づけるため、光の髪をワシャワシャした。
光は髪をワシャワシャする俺の手を退けるため、俯いていた顔をあげ必死に抵抗していた。
「それがちょっとな訳あるか。だったら、なんで泣いてるんだよ」
「これは、違っ」
光は泣いていた。
それを隠すため俯いていたのだろう。
「これは、涙が勝手に」
「光は母さんの再婚、反対か?」
「そういう訳じゃないけど。でも、なんか受け入れられなくて。だって知らない男の人がお父さん、パパになるんだよ?」
「ああ」
「あの女の子も家族になるんだよ? 由樹の妹になるんだよ?」
俺たち兄妹は親がシングルマザーということもあり、かなり距離が近い。
母さんにあまり負担をかけないように何かと協力していたからだ。
だから、俺は妹のことを光と呼ぶし、光は俺のことを由樹と呼ぶ。
俺は光に由樹と呼ばれることに違和感はなく、逆に心地良い気さえする。
光の言うこともわかる。けど、それも含めて俺は⋯⋯
「ああ」
「怖く、ないの?」
「別に」
「どうして?」
「俺は母さんの幸せを優先したい。俺たちを女手一つで育ててくれたのは誰だ?」
「⋯⋯お母さん」
「だろ? 母さんは今まで一人頑張ってきた。だから、俺は母さんには幸せになってもらいたい」
「由樹⋯⋯」
光を見るともう涙は流れていなかった。
先程まで暗い表情をしていた光はどこへやら、今はもう明るい柔らかい表情に変わっていた。
「うん。⋯⋯そうだよね。私もお母さんには幸せになってもらいたい」
「よく言った。それでこそ俺の妹だ」
「ちょ、ちょっと、やめてよ由樹」
またしても俺は光の髪をワシャワシャした。
今度は元気づけるためではなく、ただのスキンシップ。
光は口ではそう言いながらもどこか嬉しそうだった。
「それじゃあ光。母さんたちのところへ行こうか」
「⋯⋯うん」
そうして俺たちは部屋から出て一階へと向かった。
ギシッ、ギシッと降りるたびに軋む階段。
その軋みは光の緊張を表しているようだった。
「母さん」
「光はどうだった?」
リビングに入ると母さんが光の心配をしてきた。
それに答える代わりに俺は、横へと避け背後に隠れていた光を表に出した。
「光」
「お母さん。私も、お母さんに幸せになってもらいたい。だから、再婚しなよ」
「光⋯⋯」
「光ちゃん」
光の意志を知り、母さんは目から涙を零していた。
「本当にいいのね?」
「うん」
「わかった。私、裕二さんと再婚します」
「佳子さん⋯⋯」
佳子とは俺の母さんの名前だ。
再婚相手の男性が母さんの名を呼んだ時、これから家族になるんだなと、どこか感慨深い思いがした。
「それじゃあ改めて、君たちのお義父さんになる佐々木裕二です。そして由樹君、光ちゃんのに妹になる佐々木紗英です」
「⋯⋯」
やはりここでも俺と光の妹になる紗英は喋ることなく軽くお辞儀をしただけだった。
「紗英しっかり挨拶しなさい」
「⋯⋯は、はじめ⋯⋯⋯⋯まして」
裕二さんに促され恥ずかしながらも挨拶をする紗英。
俺はその姿を妙に可愛いと感じた。
「これから私達は家族になります。すぐにはお義父さんと呼べないかもしれないけど、いつか呼んでくれると嬉しいです」
「私のこともお母さんって呼んでくれていいからね紗英ちゃん」
「⋯⋯」
母さんの問いかけにコクリと頷いた紗英だった。
「それじゃあ今日はこのくらいで」
「裕二さんたちは明後日にこっちに引っ越して来るからね」
「それじゃあ、紗英の部屋は俺の右側の部屋が空いてるからそこかな」
「そうね。紗英ちゃんの部屋は階段を登って一番左の部屋ね」
入江家の2階には3個部屋がありその内2つは俺と光の部屋だ。
階段を登って一番右側が光の部屋。
その左隣が俺の部屋。
そして俺の左隣の部屋は空き部屋になっている。
その部屋が紗英の部屋のようだ。
「それじゃあ、また」
「はい。裕二さん。また」
そして裕二さんと紗英は自分の家へと帰っていった。
ばたんと玄関のドアが閉まり、裕二さんたちが帰ったのを確認して母さんは俺たちの方へと向いてきた。
「由樹、光ありがとね」
「ううん」
「べ、別に」
こうして母さんは後日色々手続きを踏み俺たちは家族となった。
そして翌日、裕二さんと紗英ちゃんが家に来る日を迎えた。
「光。大丈夫か?」
「⋯⋯」
ドアの向こう側へと問いかけるが返事はなかった。
「光。部屋、入ってもいいか?」
「⋯⋯」
今度は部屋へ入ると伝えたが、返事はなかった。
光は嫌なことは嫌ってしっかりと言うやつだ。
俺の要望に光が返事をしなかったということは嫌じゃないということ。
俺はドアノブに手をかけ、回し、ドアを開ける。
光の部屋は俺の部屋の隣で構造も同じ。
部屋は6畳程で、部屋の左端に机、右端にはベットがある。
そして光は地面に座りベットにもたれかかっていた。
「光、大丈夫か?」
「うん。いきなりだったからちょっと、ね」
そう言う光は俯いていた。
そんな顔してちょっと、かよ
「嘘つけ!!」
「ちょっ、ちょっと、何すんのよ」
俺は暗い顔をしている光を元気づけるため、光の髪をワシャワシャした。
光は髪をワシャワシャする俺の手を退けるため、俯いていた顔をあげ必死に抵抗していた。
「それがちょっとな訳あるか。だったら、なんで泣いてるんだよ」
「これは、違っ」
光は泣いていた。
それを隠すため俯いていたのだろう。
「これは、涙が勝手に」
「光は母さんの再婚、反対か?」
「そういう訳じゃないけど。でも、なんか受け入れられなくて。だって知らない男の人がお父さん、パパになるんだよ?」
「ああ」
「あの女の子も家族になるんだよ? 由樹の妹になるんだよ?」
俺たち兄妹は親がシングルマザーということもあり、かなり距離が近い。
母さんにあまり負担をかけないように何かと協力していたからだ。
だから、俺は妹のことを光と呼ぶし、光は俺のことを由樹と呼ぶ。
俺は光に由樹と呼ばれることに違和感はなく、逆に心地良い気さえする。
光の言うこともわかる。けど、それも含めて俺は⋯⋯
「ああ」
「怖く、ないの?」
「別に」
「どうして?」
「俺は母さんの幸せを優先したい。俺たちを女手一つで育ててくれたのは誰だ?」
「⋯⋯お母さん」
「だろ? 母さんは今まで一人頑張ってきた。だから、俺は母さんには幸せになってもらいたい」
「由樹⋯⋯」
光を見るともう涙は流れていなかった。
先程まで暗い表情をしていた光はどこへやら、今はもう明るい柔らかい表情に変わっていた。
「うん。⋯⋯そうだよね。私もお母さんには幸せになってもらいたい」
「よく言った。それでこそ俺の妹だ」
「ちょ、ちょっと、やめてよ由樹」
またしても俺は光の髪をワシャワシャした。
今度は元気づけるためではなく、ただのスキンシップ。
光は口ではそう言いながらもどこか嬉しそうだった。
「それじゃあ光。母さんたちのところへ行こうか」
「⋯⋯うん」
そうして俺たちは部屋から出て一階へと向かった。
ギシッ、ギシッと降りるたびに軋む階段。
その軋みは光の緊張を表しているようだった。
「母さん」
「光はどうだった?」
リビングに入ると母さんが光の心配をしてきた。
それに答える代わりに俺は、横へと避け背後に隠れていた光を表に出した。
「光」
「お母さん。私も、お母さんに幸せになってもらいたい。だから、再婚しなよ」
「光⋯⋯」
「光ちゃん」
光の意志を知り、母さんは目から涙を零していた。
「本当にいいのね?」
「うん」
「わかった。私、裕二さんと再婚します」
「佳子さん⋯⋯」
佳子とは俺の母さんの名前だ。
再婚相手の男性が母さんの名を呼んだ時、これから家族になるんだなと、どこか感慨深い思いがした。
「それじゃあ改めて、君たちのお義父さんになる佐々木裕二です。そして由樹君、光ちゃんのに妹になる佐々木紗英です」
「⋯⋯」
やはりここでも俺と光の妹になる紗英は喋ることなく軽くお辞儀をしただけだった。
「紗英しっかり挨拶しなさい」
「⋯⋯は、はじめ⋯⋯⋯⋯まして」
裕二さんに促され恥ずかしながらも挨拶をする紗英。
俺はその姿を妙に可愛いと感じた。
「これから私達は家族になります。すぐにはお義父さんと呼べないかもしれないけど、いつか呼んでくれると嬉しいです」
「私のこともお母さんって呼んでくれていいからね紗英ちゃん」
「⋯⋯」
母さんの問いかけにコクリと頷いた紗英だった。
「それじゃあ今日はこのくらいで」
「裕二さんたちは明後日にこっちに引っ越して来るからね」
「それじゃあ、紗英の部屋は俺の右側の部屋が空いてるからそこかな」
「そうね。紗英ちゃんの部屋は階段を登って一番左の部屋ね」
入江家の2階には3個部屋がありその内2つは俺と光の部屋だ。
階段を登って一番右側が光の部屋。
その左隣が俺の部屋。
そして俺の左隣の部屋は空き部屋になっている。
その部屋が紗英の部屋のようだ。
「それじゃあ、また」
「はい。裕二さん。また」
そして裕二さんと紗英は自分の家へと帰っていった。
ばたんと玄関のドアが閉まり、裕二さんたちが帰ったのを確認して母さんは俺たちの方へと向いてきた。
「由樹、光ありがとね」
「ううん」
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