逢着するのは世の理か

雅蛇

一章 一話:逃走

神威「はぁ…はぁ…はぁ…頑張れ紗羅…もうすこしだ…」

紗羅「うん…はぁ…はぁ…」


月光が照らす夜。神威と紗羅は森を駆け抜けている。


人間「おい!居たぞ!あそこだ!」

  「くそっ!逃げ足だけは早いやつめ!」

  「おい!早く捕まえろ!」



神威と紗羅は茂みに隠れた。

神威「いいか、紗羅…よく聞くんだ。俺はお前のおとりになる!」

紗羅「嫌!…それだったら、私も一緒に……」

神威「ダメだ!!」


神威がそう言葉を発した瞬間、周りがしーんと静かになった。


神威「いいか?よーく聞くんだ。俺がお前の囮になる。だから、俺が捕まったら必ず助けに来てくれ。約束だ。」


紗羅の目から涙が溢れでた。
そして、紗羅は神威に約束を誓った。


紗羅「うん…!絶対助けに行くから……。」


神威「じゃあ、外すぞ。」


そう言い、神威は紗羅の首輪を外した。

外すと紗羅は、小さい可愛いバクになった。



神威「いいか、逃げ切れたらこの首輪を誰かに付けてもらえ。そして、一緒に俺を助けに来い。いいな?」


紗羅(死なないでね…)


神威「大丈夫簡単に死ぬ俺じゃないって…。ってお前その姿でも喋れんのか…」


紗羅  (喋れるよ!馬鹿にしてる!?精神感応テレパシーくらいは使えるよ!)


神威「はい、すみませんでした………。」


人間「おい!あそこに人影が見えるぞ!」



神威「チッ!見つかった……ほら、早く逃げろ!首輪も忘れるな!」


紗羅  (うん、死なないでね!)


神威「俺はここに居るぞ!!」


人間「ガハハッ!捕まえたぞ!雷獣と鬼のあいの子!!」

  「おい、あの女はどうした!」
  
神威「さぁ?逃げたんじゃない?」

人間「まぁいい、後でとっ捕まえてやる!来い!」

そう言い、神威は捕まってしまった。


紗羅 (神威……ううっ…絶対助けに行くからね!!)


紗羅は走った。ただ、ひたすら走った。止まったら、捕まる。神威は、私の為に捕まったんだ。寝る暇を惜しまずただただ、走った…。





【人のさと

人間「オラッ!入れ!妖怪め!」

神威は、牢に閉じ込められた。

神威「チッ!妖怪使いの悪いヤツめ!ペッ!」

神威は、人間の顔に唾をかけた。

人間「チィっ!この糞ガキいぃぃー!!」

人間は、神威に木刀で暴力を振るった。

神威「ぐはぁ…!くうぅ……。」

神威は口から血を吐いた。

神威「やるじゃねぇか!おっさん!」

人間「餓鬼が口聞いてんじゃねぇよ!!!」

神威「ぐはっ…がはッ……」

バシバシと、木刀でいたぶる音が響き渡る。

人間「おいおい、そんなにやったら死んじまうぞ?」

  「おーっと、そうだったなぁ。手下にする為なのに殺しちゃ勿体ないもんなぁ!」

「「「ガハハッ!!」」」

人間達の笑い声が牢に響き渡る。

神威は瀕死の状態だった。
顔は傷だらけ身体中血が出ている。
もはや、ピクリとも動かない。



数時間後、ようやく神威の目が覚めた。

神威「俺は…あっそうだ。俺は紗羅の代わりに捕まったんだ。」


???「そこのお主。お主も捕まったのか…?」

神威「お前は?」

???「俺か?俺は……」

神威「お、お前は!?」





育斗「あー…師匠は遅いわ。暇だわ。何もやることないなぁ…」

僕の名前は育斗。
妖狐ようこだ。いつもは帰ってくる師匠が何故か帰って来ない。これで1ヶ月経つ。

育斗「もう自分から探しに行くか…」

僕から師匠を探しに行くことにした。

刀をさやにしまい。
早速師匠を探しに行くことにした。


【竹林】

2キロくらい歩いたのかな…まだまだ続く竹林もういい加減にしてくれ……

すると、竹林の茂みがゆらゆらと揺らいだ。

育斗「だ、誰だ!?」

咄嗟に刀を構えた。

すると、出てきたのは黒色をした小さく可愛い獏だった。

紗羅 (あの!そこのお狐さん!助けてください!)

育斗「うん?僕?」

紗羅 (はい!そうです!)

育斗「って言うか、この獏が喋っているのか?にわかには信じがたい…」

紗羅 (さっきから、私に向かって喋っているのに、なんで疑うのですか!)

育斗「いやいや、そんなことは無いよ…」

紗羅  (そうですか、ではこの首輪を付けてもらってもいいですか?)

育斗「う、うん。」

育斗は言う通りに獏に首輪を付けた。

すると、桃色の光が獏を包み人の姿になった。

育斗「おぉー…」

紗羅「自己紹介をしてませんでしたね。私の名前は紗羅と申します。さっき見ての通り獏でございます。」

続けて育斗もした。

育斗「育斗と言います。妖狐です。」

紗羅「育斗さん!助けてください!神威を助けてください!」

育斗「あー、えーっと僕はその…」

紗羅「お願いします!人間に捕まったんです!」

育斗「!!人間に!?」

紗羅「はい…」

確か…僕の師匠は人間の郷に行くとか言ってたような…まさか、師匠も人間に捕まったとか?

育斗「わかりました…では、一緒に行きましょう。」

紗羅「はい!」


こうして、僕と紗羅は人間の郷に向かうことにした。

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