元カノと俺と。

片山樹

元カノと俺と。

 俺には元カノが居た。弁当を毎日作ってくれたり、勉強を教えてくれたり、本当に良い女の子だった。おまけに俺のオタク趣味にも付き合ってくれ、俺が「今期の〇〇は原作はエロゲで〜」とか「あ、そういえば△△は来年の春には劇場版決まったんだ」とか言うオタク丸出しの気持ち悪いトークにも顔色一つ変えず、笑ってくれた。そんな彼女と何故別れたのかと言うと、重かったんだ。
 うん、かなり重かったんだ。別れようと言ったら、涙を流して何度も何度も俺を殴りつけてきたんだ。それに当時の俺達は学生で、大学に行くとなると別れ離れになるのは目に見えていた。
 彼女は俺と比べて、とても頭が良かった。だからそんな彼女を自分と同じ大学に行かせることは出来なかった。というか、俺が嫌だったんだ。彼氏なのに彼女よりも頭が悪い大学に居ると思われるのが嫌だったんだ。彼女の親御さんは父が弁護士で母は税理士の金持ち。それに比べ、俺の家は普通の家庭。釣り合わなかった。一度だけ、彼女に俺の事を彼女の親御さんはどう思っているのかと尋ねたことがある。その時、彼女は言った。
 「母親は許してくれてると。だけど父親は……」と。
 その後、俺は猛勉強したさ。彼女と同じ大学に通う為に。
 けれど俺は落ちた。そして彼女は受かった。
 別れはもう告げていた。二度と俺に関わるなと言ってしまった。ショックだったんだ。一緒に大学に通えると思ってんだ。
 だから突き放した。彼女の気持ちなんて考えずに。
 そういうことって誰にでもあるだろ。感情的になることってさ。
 おまけに彼女は優し過ぎるんだ。フォローの仕方が尺に触ったんだ。
 で、今現在俺は宅浪中。彼女は大学在学中。死にたくなった。
 正直最初の頃は彼女の通っている大学よりも上の大学に行こうと考えていた。けれど上の大学はC判定しか出ていないんだ。
 彼女と同じ大学はA判が出てて、過去問を解いても八割、九割ぐらい解けててもう受かると自覚してる。
 親からは二浪はさせないと言われているので、安全圏の彼女と同じ大学に行って欲しいと言われている。
 正直俺もそれでいいかと思っていたんだ。で、12月24日。
 俺は最悪な物を見てしまった。最初からTwitterなんて開くべきじゃなかったと思ってる。でもやはり見てしまったんだ。
 彼女のTwitterにはこう書かれていた。


 『今日は〇〇君とお泊り♡』
 そこにはあの美しかった黒髪が穢らわしい茶色に染めた彼女の姿と俺ではない他の男の姿。
 おまけに男のTwitterには午前三時頃には初処女貰ったとかいう糞みたいなツイートがあるんだ。泣いた。泣いた。泣いた。泣き続けたよ。マジで殺してやりたいと思った。

 その瞬間、俺の中で何かが壊れた。最悪だった。吐き気がやってきた。画面を見ながら笑った。不敵な笑みを零した。
 涙が出てきた。身勝手だと本当に思う。でも俺のやってきたことって全部彼女の為だったんだ。正直俺は彼女の事が好きで好きで仕方がなかった。だからどんなに辛い時でも彼女の姿を思い返すだけで俺は頑張れた。けど……もう彼女には好きな人がいたのだ。
 一度だけ俺は彼女に性行為的なことを持ちかけたことがあった。その時、彼女から今はまだ早いと言われ、俺は二度とそんな破廉恥なことは言わなかったんだ。彼女が嫌がることは絶対にしなかった。
 だが今現在かなり後悔してる。あのとき、俺が無理矢理にでも奪っておけばよかったと。そうしておけば、こんな気持ちにならなくて良かったのに。初恋の人の処女が奪われる。それがどれだけ辛いことなのか分からないだろう。

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