みかんのきもち
3.マグロは天然モノに限る?
その場の流れと言うよりは、修斗の強引さに流され高橋さんとメッセージアプリのiD交換を済ませる。
真面目なのにそういうアプリをちゃんとダウンロードしているんだなあ、なんて感想を持つ時点で、少し偏見を持ちすぎているのかもしれない。
何も、彼女達だって四六時中勉強ばかりしている訳では無い。
四かける六で二十四。二十四時間、丸一日。
机に肘を立て、右の掌を天井に向けた状態で自分のアゴを支える。手乗りタイガーならぬ、手乗り美柑。
手乗りミカンは普通だな。
そのままの姿勢で高橋さんの事を観察する。
昨日も思ったけど、近くで見ると目が大きくて、キラキラと輝いているのがよく分かる。
黒目が大きいのかな? 化粧をしているわけでは無さそうだけど、それでも薄く無い。えっと、薄いのが醤油顔だっけ? あれ? 塩顔が薄いんだっけ……?
まあ、いいや。それでいて清潔感のある雰囲気から、ただの優等生と言うよりは、なにか気品の様なものを感じる。もしかしていいとこのお嬢様?
それならば尚更、仲良くなれそうに無い。私みたいな、なんの取り柄もない一般人とは住む世界が違うだろうに。
「あ、あの……私の顔に何か付いていますか?」
どうやら見つめ過ぎてしまったみたいだ。不思議に思ったのだろう。少し顔を背け、気まずそうに問いかけてくる。
「ああ、ごめんごめん。凄く綺麗だなって思って」
「……えっ?!」
「お化粧はあんまりしないの?」
「は、はい。そう言うのよく分からなくて……」
「お化粧しなくても綺麗って羨ましいなぁ」
「そんな事は……」
「美柑だって殆ど化粧して無いじゃん!」
「分かってないなあ修斗は。ナチュラルメイクとナチュラルの間には、越えられない壁があるんだよ」
天然のマグロと養殖のマグロ。素人は見た目では判断が付きにくいが、食べれば何となく気付いてしまう。
ただ、味と同じで個人個人で好みがあるのが人間の面白いところであり、同時に面倒くさいところだ。
天然モノが好きな人もいれば、養殖モノの方が好みな人もいる。……いるよね?
「あの……日比谷さんの方が、綺麗……だと思います」
「そんなことないよ? でも、ありがとう」
……やっぱりこの子は少し苦手かもしれない。とても良い子で、気を使ってくれているのが馬鹿な私でも分かる。だからこそ、なんだけど。
相手に気を使われると、此方も気を使わない訳にはいかない。
昔はそれでも我慢して、周りに合わせて笑顔を振りまいていた。
その結果私の周りは、浅く広くのうわべだけの人間関係で埋め尽くされていた。
別にそれが悪い事だとは思わないし、実際私もそれなりに充実した日々を送っていた。
だけどある日、私は自分がひどく疲れている事に気付いた。
友達に囲まれて、俗に言うリア充的な学生生活を送っていたはずなのに、心は満たされない。
どんなに気を付けていても、それなりの人数を有するグループに属していれば、トラブルがゼロでは無い。
誰が誰のことを好きとか、この人とこの人は相性があまり良くないとか。
その場にいない人の陰口を叩き、またその人も誰かから陰口
を叩かれる。
外から見れば、微笑ましい仲良しグループに見えるんだろうけど、蓋を開けてみれば大概そんなものだ。
出会って間もないんだから気を使うのは当たり前じゃないかって?
確かにそうなんだけど、[礼儀を欠く]のと、[気を使わない間柄]は、イコールではない。
何を当たり前の事をドヤ顔で言ってるんだって思われるかもしれないけど、この違いって案外難しい。
もう私個人がどう感じるかって話になってしまうんだけど、少し話をすればなんとなく分かってしまう。
まあ、相手からすれば、こんな性格の悪い私と深い仲になろうとは思わないだろうから、丁度いいんだけどね。
と言う事でいつも通り、付かず離れず、程よい距離感で接していこう。
波風立てず、平穏な毎日が送れれば、今の私には十分だから。
真面目なのにそういうアプリをちゃんとダウンロードしているんだなあ、なんて感想を持つ時点で、少し偏見を持ちすぎているのかもしれない。
何も、彼女達だって四六時中勉強ばかりしている訳では無い。
四かける六で二十四。二十四時間、丸一日。
机に肘を立て、右の掌を天井に向けた状態で自分のアゴを支える。手乗りタイガーならぬ、手乗り美柑。
手乗りミカンは普通だな。
そのままの姿勢で高橋さんの事を観察する。
昨日も思ったけど、近くで見ると目が大きくて、キラキラと輝いているのがよく分かる。
黒目が大きいのかな? 化粧をしているわけでは無さそうだけど、それでも薄く無い。えっと、薄いのが醤油顔だっけ? あれ? 塩顔が薄いんだっけ……?
まあ、いいや。それでいて清潔感のある雰囲気から、ただの優等生と言うよりは、なにか気品の様なものを感じる。もしかしていいとこのお嬢様?
それならば尚更、仲良くなれそうに無い。私みたいな、なんの取り柄もない一般人とは住む世界が違うだろうに。
「あ、あの……私の顔に何か付いていますか?」
どうやら見つめ過ぎてしまったみたいだ。不思議に思ったのだろう。少し顔を背け、気まずそうに問いかけてくる。
「ああ、ごめんごめん。凄く綺麗だなって思って」
「……えっ?!」
「お化粧はあんまりしないの?」
「は、はい。そう言うのよく分からなくて……」
「お化粧しなくても綺麗って羨ましいなぁ」
「そんな事は……」
「美柑だって殆ど化粧して無いじゃん!」
「分かってないなあ修斗は。ナチュラルメイクとナチュラルの間には、越えられない壁があるんだよ」
天然のマグロと養殖のマグロ。素人は見た目では判断が付きにくいが、食べれば何となく気付いてしまう。
ただ、味と同じで個人個人で好みがあるのが人間の面白いところであり、同時に面倒くさいところだ。
天然モノが好きな人もいれば、養殖モノの方が好みな人もいる。……いるよね?
「あの……日比谷さんの方が、綺麗……だと思います」
「そんなことないよ? でも、ありがとう」
……やっぱりこの子は少し苦手かもしれない。とても良い子で、気を使ってくれているのが馬鹿な私でも分かる。だからこそ、なんだけど。
相手に気を使われると、此方も気を使わない訳にはいかない。
昔はそれでも我慢して、周りに合わせて笑顔を振りまいていた。
その結果私の周りは、浅く広くのうわべだけの人間関係で埋め尽くされていた。
別にそれが悪い事だとは思わないし、実際私もそれなりに充実した日々を送っていた。
だけどある日、私は自分がひどく疲れている事に気付いた。
友達に囲まれて、俗に言うリア充的な学生生活を送っていたはずなのに、心は満たされない。
どんなに気を付けていても、それなりの人数を有するグループに属していれば、トラブルがゼロでは無い。
誰が誰のことを好きとか、この人とこの人は相性があまり良くないとか。
その場にいない人の陰口を叩き、またその人も誰かから陰口
を叩かれる。
外から見れば、微笑ましい仲良しグループに見えるんだろうけど、蓋を開けてみれば大概そんなものだ。
出会って間もないんだから気を使うのは当たり前じゃないかって?
確かにそうなんだけど、[礼儀を欠く]のと、[気を使わない間柄]は、イコールではない。
何を当たり前の事をドヤ顔で言ってるんだって思われるかもしれないけど、この違いって案外難しい。
もう私個人がどう感じるかって話になってしまうんだけど、少し話をすればなんとなく分かってしまう。
まあ、相手からすれば、こんな性格の悪い私と深い仲になろうとは思わないだろうから、丁度いいんだけどね。
と言う事でいつも通り、付かず離れず、程よい距離感で接していこう。
波風立てず、平穏な毎日が送れれば、今の私には十分だから。
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