【コミカライズ配信中!】消しゴムで始まる制御不能彼女との日常-さっちゃんなんしよ~と?(原題:ボクの彼女は頭がおかしい。)
賭け
テストが終わった。
五月が僕のところに飛んでくる。
「数学、100点取った!絶対取った。うん、間違いない」
仁王立ち、大きく一人でうなずく五月。
…うそだろ。
あの数Ⅱ・Bのテストで100点だと。
ありえない。
1週間前からコツコツこの日に備え、そして昨日は6時間も費やして勉強したこの僕でさえ、手応え的に80点前後。
ノー勉の五月が100点を取るなど、あっていいはずがない。
(後から聞いた話によると、前日に2時間ぐらいは勉強したらしいです。なんでもノーベル物理学者のドキュメンタリーを見て火が着いたんだとか)
「じゃあ今回は、五月の数学の点数が100点かそうじゃないかで賭けることにしない?」と、僕は提案した。
ものすごく僕に有利な賭け。
さて、彼女は乗ってくるだろうか…。
「え、わたし勝っちゃうけどいいの?」
あっさりお乗りになった。
自信満々の五月。
まったく、バカな人。
「楽しみだね、答案が返ってくるの」
3日後。
昼休みに先生から呼び出された。
僕を呼び出したのは、2年生の数学を担当している先生。
なんだろう?
「これ見ろ」
職員室、先生が僕に一枚のプリントを押し付けてくる。
ん……これは。
「どうして僕に渡すんですか?」
そう聞かずにはいられなかった。
なぜならそのプリントは、3日前に行われた定期テストの、数学の、「五月の」答案用紙だったからだ。
「いいから見ろ」と、先生。
「はい」
五月の答案に目を通す。
うそ、うそだろ。
○、○、○、○、○。
○の嵐。
どこにも×がない。
つまりは完璧な100点の答案用紙。
「100点…ですか」と、僕は言った。
「いや、0点だ」と、先生は言った。
「え。バツなんかどこにもないのに」
「確かにな。でも、名前のところ。よく見ろ」
先生に言われたとおり、答案用紙に書かれている名前の欄を見る。
思わず笑った。
まったく、バカな人。
そこには、『早瀬五月』と記入されていた。
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