【コミカライズ配信中!】消しゴムで始まる制御不能彼女との日常-さっちゃんなんしよ~と?(原題:ボクの彼女は頭がおかしい。)
突き指
「大変だ大変だー!!」
本当に大変なのか?と疑いたくなるようなセリフとともに、五月が僕の胸にダイブしてきた。
場所は学校、時は休み時間。
クラスのみんなは、何か微笑ましいモノでも見るかのように僕たち二人を眺めている。
迷惑そうな顔をしている人が一人もいないのは、間違いなく五月の人望によるものであろう。
「どうしたの?」
彼女の頭を撫でながら訊ねる。
「指が……」
そう言って左手を見せてくる彼女。
その表情は焦りと不安に満ちていて落ち着かない。
ケガでもしたのかな、指。
「どれどれ」
五月の細くて綺麗な指を眺める。
あぁ滑らかで美し――ん、そういうことか。
一本だけ、痛々しく腫れ上がっている指がある。
けれども骨折しているようには見えない。
よくあるただの『突き指』だろう。
それなのにどうして五月はこんなにも焦っているのだろう。
「そんなに痛いの?」と、彼女の顔色を伺いながら言う。
「ちょっと痛い……ってか重要なのはそこじゃなくて、これ何日か経ったら治るんだよね?大丈夫だよね?ね?」
その瞬間、彼女の言わんとすることが分かった。
思わず笑みがこぼれる。
「大丈夫。すぐ治るから」
「ほんとに?」
「うん、ほんと。じゃ、氷もらってくるからここで待ってて」
「ありがと早瀬くん」
僕は教室を出て保健室に向かった。
それは氷の入った水袋をもらうため。
ひいては五月の腫れ上がった左手の薬指を冷やすため、である。
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