【コミカライズ配信中!】消しゴムで始まる制御不能彼女との日常-さっちゃんなんしよ~と?(原題:ボクの彼女は頭がおかしい。)

来世ピッチャー

昨日の敵は今日の友①


「沙紀に協力してあげてくれない?」

「僕が?」

「そうそう」

「協力って何を?」

「えっとね、沙紀の恋愛相談役を……」

「それは厳しいと思う」




ある日、五月に頼み事をされてしまった。
牛くんのことが好きな女王(=沙紀)にアドバイスをしてやってくれないかと。

いやしかし僕と女王の関係は完全に冷え切っていて、とてもとてもアドバイスなど出来る状態ではない。

しかも僕にはそもそも恋愛経験がほとんどない。
たまたま身の回りに頭のおかしい美少女がいて、たまたま付き合っているがゆえに今があるだけで。
本来ただのオタクボッチである。


それなのに五月のやつ。

「お願い!私そういうの苦手だからさ。それにやっぱり男の子の意見もあったほうが助かると思うし」

「そうかもしれないけど女王と僕は――」

「だから、これを機に仲良くなっちゃいなよ!」

「いやいや君はそんな簡単に言うけど――」

「毎日毎日、沙紀に早瀬くんの悪口を言われ続けてる私の気持ち分かる?ものすごく辛いんだよ。本当はめちゃくちゃカッコよくて優しくて最高の彼氏さんなのに、沙紀はそれを知らないばっかりに。うえーん」

「…分かった、頑張ってみるよ」


涙目になりながら頼まれたら断れません。
だって可愛いんだもん。
(たとえそれが見え見えの演技だったとしても)

それによく考えてみたら、女王と手を組むというのはそう悪い話ではないのかもしれない。

いや、それどころかもしかすると一石二鳥にも三鳥にもなりうる可能性を……。

なぜなら、僕が女王に協力して牛くんと女王をくっつける→牛くんは雫さんを追いかけない+女王から少しは認められて五月が気まずい思いをしなくてすむ。

よし、やろう。やるだけやってみよう。

まずは牛くんを探してっと……







はい発見。

今日もワックス半端ないっす。

とりあえず彼のタイプを尋ねてみる。
「どんな女の子が好みなわけ?」

「可愛くておっぱいが大きければオールオッケイ!!」

それなら女王でいいじゃないか。
いや、彼女の胸が大きいかどうかなんて知らないけれども。
「雫さんを無駄に追い掛け回すよりも藤堂さん(=女王)と付きあったほうが早いんじゃないの?」

「いや、アイツはダメだ。確かに見た目だけなら余裕でイケるぜ?だけど性格がな、ありえねぇんだよな」

あなたの性格もありえねぇよ、と心の中でツッコみ、最後にもう一つだけ質問。

「じゃあもしも藤堂さんの性格が今とちょっとでも変わったなら、そしたら牛くんは彼女と付き合ってもいい?」

「いいぜ。けど、変わるなんて無理だろ。それに今の俺には雫ちゃんがいるし」

いや、いないよ、と心の中でツッコみ、僕はその場を後にした。







続いて女王を探す。

こちらもすぐに見つかった。

とある教室の中央、七人の女子に囲まれて何やらガールズトークを繰り広げているらしいご様子。

「あのー、藤堂さん」と、少し離れたところから声をかけてみる。

女王と取巻きさんたちが一斉に振り返った。
目線に殺気を感じる。
ほんと怖い。

「何か用?」と、爬虫類みたいな顔をした取巻きAが言う。

「藤堂さんに、ちょっと牛くんのことで話がありまして」
僕がそう言うと、冷え切った女王の目線がやや泳いだ。
なのでありったけの勇気を振り絞って畳み掛けてみる。

「最近牛くんと話す機会がありまして、いい情報があるのでお伝えできればと」

「あなたしつこいよ」
「五月ちゃんの彼氏だからって馴れ馴れしい」

口々に毒を浴びせてくる従者たち。
だが、女王が右手をサッと振って周囲を黙らせた。

先ほどまでは僕のことを、まるでゴキブリでも見るかのような蔑んだ目で見ていたのに、今は身を乗り出してきている。

「あなたたち、外しなさい」と、女王は言った。

同時に取巻きたちが教室の外へと素早く退散する。

権力を間近で見た瞬間だった。




「最初に言っておくけど、あたし、あなたと五月のこと認めてないから」

「そうですか」

「そうよ。でも、今回は牛ピーの話らしいから、聞くだけ聞いてあげようじゃない」


僕は女王に、出来るだけ手短に分かりやすく計画を話した。

まずは牛くんの好みの話(間違っても女王に胸の大きさなど尋ねてはいない)。
それから、女王が少しだけ変わってみせれば牛くんと付き合えることなど。

「どうせ五月の差し金なんでしょうけど、まぁいいわ。それであたしは、具体的には何をすればいいのかしら?」


思いっきりバレてるじゃないですか五月さん。

まぁでも、それだからこそこんなにも事が簡単に運んでいるのだろう。


「ギャップを使いましょう。普段は強気な藤堂さんですから、気弱な部分を見せればいいんです」

(つづく)


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