ボクの彼女は頭がおかしい。

来世ピッチャー

男という性


「もうすぐ夏休だね」
「うん」
「海とか花火とかバーベキューとか」
「うん」
「色んなとこ連れてってね」
「その前にテストね」



3日後に二学期最後の定期テストが控えていた。

勉強するつもりで一杯だったのに、校門付近で例の彼女に捕まってしまった。

「そんなに急いでどこ行くの?」
五月だ。
テスト期間だけは、彼女は僕の敵となる。

僕はきっちり勉強してテストに臨むタイプ。
それに対し彼女は一夜漬けタイプ。
まさに出会ってはいけない二人が出会っているわけだ。

「今日は勉強するから、ごめんね」
「わたしと遊んだあとに勉強すれば?」
「昨日もそう言われて、遊んだ結果どうだった?」
「早瀬くんが帰宅できたのは11時過ぎ」
「だよねそうだよ。だから今日は真っ直ぐ家に帰って勉強する。五月もたまには頑張ってみればいいのに」
「わたしは頑張らなくても点数取れるし」

そうなのだ。
実に悔しいことに、彼女は頭が良い。

だいたいいつも、僕が5~10位あたり。
彼女も10位あたり。
(一学年400人)

勉強時間には相当な差があるはずなのに、なぜだか順位に差がでない。
彼女のポテンシャルは明らかに僕より上。
あぁ、神を恨むよ。

前回の定期テストなど、僕が9位で彼女は7位だった。

ちなみにその時の試験前日。
彼女は僕の家に泊まりに来て、隣で小説を書いていた。
恋人が突然のど飴に変身してしまって、ラストは風邪を引いた主人公が泣く泣くのど飴をなめるという切ないラブストーリーだった。


そんな彼女とほとんど差がつかないどころか負けてしまうこともあるのだから焦らないはずなどない。
それなのに彼女は……

「お願い!遊ぼう!!」

実に困るし、不愉快だ。
「あのね、僕は君と違って勉強しないと点取れないんだよ」

「それは知ってるけど」


このままだと帰れそうにない。強行突破だ。
「……じゃ、そういうことで」

「どういうこと?」
「そういうこと」

僕はその場を立ち去ろうとした。

しかし不意に聞こえる、彼女のつぶやき。

「寂しいな」

あぁ。僕の負けです。





そうして現在、僕の部屋で勉強会を行っているわけです。
しかし当然、勉強しているのは僕だけで。

「うわぁ。面白い物がたくさん出てくるよ」

部屋を荒らされています。
無視して勉強。

「ドストエフスキーなんてホントに読んでるの?」
「まぁね。頼むから本棚には触れないで」
「ふーん、怪しい」
「え……あちょっと、やめて」

突然、本棚の本を床に落とし始めた彼女。
慌てて止めようとする僕。

数秒後、必死の抵抗むなしく発掘されてしまった神秘の秘宝。

あぁ、女神様。


「男の子ですね、早瀬くん」

「そうですごめんなさいゆるしてください」
僕は床に正座した。
なんだこの奇妙な敗北感は。

彼女は発掘した財宝を蔑んだ目で観察している。
「これは没収していきます。よろしいですね?」

「はい、かまいません。どうぞお持ち帰りください」

「早瀬くんにはわたしがいるし、こういうのは必要ないはずです」

「それって……」
「うわぁいやらしい」
「ごめんなさい」
「まぁいいけど。それにしても、胸の大きい人ばっかりだねこれ」
「それはきっと五月様の気のせいでございます」

「いやいや、『巨乳』って文字がところどころに書いてあるし」
「鋭い観察眼をお持ちなのですね。さすがです。いつもあなたの観察力には感心しておりまして――」
「話を逸らさないの」
「はい」

「……」

「……」


あぁ気まずいです。
どうしよう。
普通、こういう時(HなDVDが最愛の彼女に見つかった時)ってどう対応するものなんでしょうかね。
誰か教えてください。

なんて内心あたふたしていると、五月がこちらに背を向けポツリとつぶやいた。


「おかしいな…」

ん?
何をしているのだろう。





「……大きさなら、わたしも負けてないと思うんだけど」


凄まじく悶えた。

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