過去に戻り青春を謳歌することは可能だろうか

おざおざ@新シリーズ作成中

6話 どこか懐かしいと思ったのだ


 気づくとそこは昨日夢に出てきた公園だった。時間はお昼って感じがする。空は青くちらほらとまばらに雲がある程度。
 
 季節はいつなのかは分からない、寒いのかも暑いのか、肌が気候を教えてくれない。その時点で夢だろうと思った。
 
 昨日可憐が座っていたブランコに俺は座っている。

 「直斗くん」

 右隣のブランコから透き通るような声音で俺の名前が呼ばれた。俺は呼ばれた方に目を向ける。そこには昨日夢に出てきた、長い茶髪を風になびかせた女性が立っていた。逆光で顔はよく見えない。
 
 身長は163センチくらいで雰囲気的には同い年という印象を受けた。
 
 よく見たらその女性の着ている服は長嶺原高校の制服だった。昨日の夢は割と速攻で終わってしまったので気付けなかった。
 
 長嶺原高校にこんな人はいたのだろうか。という疑問が出てきたが、それよりもこの場にふさわしくない感覚が胸の中にわだかまった。
 
 どこか懐かしいと思ったのだ。
 
 「君はいったい…」
 「ねー直斗くん、最近変わったことはありましたか?」

 俺の問いかけを遮るようにその女性は言葉を発した。

 「え…えっと…少しだけ過去に戻りました」
 「そうですか」

 ニコリと女性は微笑んだ。
 その微笑みを合図に視界に霧がかかる。
 ああ、夢から覚めるんだ。
 そう思った。

 
 「……………さい」

 見覚えのある声。
 
 「うぅ…」
 「…………なさい」
 「あと5時間」
 「はぁ……」

 諦めたらしい。もう一度深い眠りにつこう。

 「いて、いててて!!」

 頬を引っ張られた痛みから慌てて目を開ける。
 
 目を開けると、視界に入ってきたのは天井ではなく可憐の顔だった。

 「可憐さん、普通おはようのチューでしょ」
 「いいから起きなさい。」
 「はい」

 体を上げふあぁと大きめのあくびをする。
 この涙はあくびのせいだろうか。

 「おはよ」
 「おはようございます」
 「朝ご飯できてるから、さっさと支度しなさい」
 「新婚ですね」
 「もう一回やるわよ」

 頬の肉を軽めに可憐は摘んできた。

 「はい支度します」

 リビングから洗面所に向かい顔を洗いながら俺は可憐の言ったことを頭の中で何度もリピートする「朝ごはんできてるから」
 
 まさかこんな美人と新婚プレイができるとは思ってもいなかった。いつもなら起きても数分ぼーっとしているが今日は一段と目が冴えた。
 
 制服に着替えたあとリビングに向かい用意してあった味噌汁とごはんとシャケを食べた。材料が少なかったので朝ごはんは質素だ。しかしとても美味しかった。

 「とても美味しかったです、ごちそうさま」
 「食材があればもっと美味しいの作れるわよ」
 「なにそれ俺と結婚するって意味?」
 「なわけないでしょ」
 「ですよねー」
 「もう歯磨いたらすぐに出ましょ」
 「そうっすね」

 食器をキッチンに持って行く可憐の姿は本当に俺の嫁になったのではないかと錯覚してしまいそうになり頬の筋肉が緩む。

 少しの時間めるちゃんといちゃつき、そして可憐と一緒にアパートを出た。
 
 いつもは自転車で5、6分という短い時間で学校に向かうが可憐は歩きなので俺も歩きで行くことにした。徒歩だと15分くらいだが今の時間から出れば学校には余裕で間に合う。

 「先に自転車で行けばいいのに」
 「一緒に行きたいんですよ、察してください」

 今日はバイトも無いし急いで帰る必要も無い。ならば一緒に行くのが得策だ。

 「自分で言ったら本末転倒ね」

 可憐は「いいわよ」と付け足し微笑んだ。そして俺と可憐は歩き出す。
 
 1時間目開始5分前の予鈴が鳴ると同時に俺は教室に入り1時間目の生物の教科書を鞄から漁り、筆記用具と一緒に出した。
 
 1時間目が始まるまで待っていると慌ただしい様子で1人の男子生徒が前から迫ってきて俺の肩を組んだ。暑苦しい。

 「お前なぁ…」
 「説明しろよ」

 ニヤニヤしながらかけるは言ってきた。
 こうなることは予想していたことだ。

 「お前、何で夏ノ先輩と一緒に登校してんだよ」

 登校中に他の生徒からの目がこちらに向き注目を浴びていたことは分かっていた。友達の多い翔なら俺と可憐が一緒に登校しているところを見たと情報を入れる友人が1人や2人いても何もおかしくない。だからこの質問が来ることは分かっていた。

 「色々あるんだよ」
 「色々ね」
 「ああ、色々」
 「今日中庭で飯食おうな」
 「はぁ…分かったよ」

 親友の翔にはできるだけ隠し事はしたくない。

 お昼の時間になり中庭で昨日忘れた弁当を食べながら過去に戻った話以外の昨日あったできごとを包み隠さず翔に話した。翔は話の中で何度も「なにそれ!ラブコメじゃん!ラ・ブ・コ・メ」と言ってきた。
俺はそれに対して「そ・れ・な」と返した。
 
 まさか自分がこんなにもおいしい立ち位置に回れるとは思ってもいなかった。しかし、そういってる翔は中学の頃からかなりモテるし現に今付き合って一年目の彼女がいる。

 「お前も大概だけどな」

 その発言の意図を読み取り翔はニコニコして「イェーイ」とVサインを俺の顔の前まで近づけてきた。このリア獣め。

 後半の授業も終わり帰りのホームルームが終わると教室内は下校を待っていた生徒や他クラスの生徒のお迎えなどで喧騒に包まれた。

 「今日可憐さんどうするんだろ」

 この喧騒の中でだったら誰にも聞こえないだろうと思ったが周りはその言葉を境に静寂に包まれた。
 
 俺の声ってそんなに響く?と思ったが、静寂に包まれた理由は俺の発言ではなさそうだ。

 「帰るに決まってるじゃない」

 可憐が横に立っていた。意外な人の登場とその人が意外なやつの隣にいるという意外な光景に周りは呆気を取られ言葉を失っていたのだ。

 「どこに?」

 可憐の方を向き口を開いた。

 「どこって、直斗の家に決まってるじゃない」
 「そっすね」

 その瞬間、周囲からは「うそでしょ」「なんで」「可憐さんと町くんってどういう関係?」などと多くの疑問符が飛び交っていた。

 「ほら行くわよ」
 「はい」

 教室を2人で出るとそれまで静かだった空間は再び喧騒に包まれた。話題は俺と可憐のことだろうと思ったが別に気には止めなかった。
 
 校門を出て俺は可憐さんに「わざわざ教室までありがとうございます」と礼をした。

 「しょうがないじゃない、直斗の連絡先、私知らない」

  可憐は少しだけ顔を赤らめたような気がした。

 「そういえば交換してなかったっすね」
 「あまり携帯使わないの?」
 「使わないなー」

 言いながら俺はメッセージのやりとりと通話が可能なアプリのQRコードを可憐に提示したそれを可憐は読み取り「これで次から連絡できるわ」と呟いた。


 「私もあまり使わない、男の子ならゲームとかで沢山使うと思ってた」

 「他の男子は使いますよ、ただ俺は興味ないだけっす」

 「そうなんだ」

 「あ、そういえば」

 俺は可憐にふと聞きたくなったことを聞いた。

 「可憐さんって付き合ったりとかしたことあるの?」
 「私キスもしたことないわよ」

 即答だった。 

 「てことは処…」
 「………」

 可憐の睨む眼差しで後に続く言葉を遮られた。

 「すみません」
 「さいてー」

 頭痛を抑えるかのようにこめかみに手を当てている。
 
 その後も俺の失礼な発言で何度か叱られながら下校した。帰り道、今日の夕飯の食材を買いにスーパーに寄った。
 

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