異世界から帰還した人類最強はひっそりと生きていたいそうです
買い物からのスカウト
ということで、妹と原宿にやってきました。
現在高校2年生の俺はそんなに散財すると怪しまれるので、バイトをしていることにして今日は5万円以下に抑えましょー。
「優奈なんか欲しいのあるのか?そろそろクリスマスだし買ってやるよ?」
「うーん...特にないかなー。色々貰っちゃったし、この間教えてもらったしね〜...魔ほ!?むぐっ!」
「優奈がそれを使えることは秘密だって言ったろ?みんなに見せびらかしたり自慢したいのはわかるけど、だめだぞ?」
「はーい」
全く、こういうところがあるから危ない。
軽くちょいちょい買い物をしながら歩いていると、スーツを着たお兄さんに声をかけられた。最初は優奈目当てかと思い少し身構えたが、どうやら俺目当てらしい。
「何のようですか?」
「いえ...スタイルも顔も良い男性をスカウトしてこい、とのことでしたので、目に入りましたあなたに声をかけさせて頂きました」
「すみません...話が見えないのですが...何のスカウトですか?」
スタイルも顔も悪くはないと自負しているが、そこまで良いわけではない。探せばイケメンなんていっぱい居るだろう。
「モデルのスカウトです。ある程度の運要素もあったんですけどね。偶々でもあります。それでは、後日こちらの連絡先までお伺いください。もしもお誘いに応じていただけない場合は、お手数ですが、そちらの連絡先に書いてあります私、木村へとお電話いただければ幸いです。それでは失礼します」
用がすんだとばかりに歩き去っていった。終始優奈はぽかんとしていた。
すると我に返ったのか俺の方を見る。
「ねぇ、今渡された連絡先に書いてある「certify」って超有名なファッション雑誌だよ?!」
「そ、そうなのか」
「そこからのスカウトだよ!凄いよお兄ちゃん!」
小声で叫ぶという器用なことをしながら妹は目を輝かせている。
「行ったほうが良いのかな」
「勿論、行くべき!一生に一度のチャンスだよ絶対!」
「そ、そうか、わかった」
そういえば、白井さんも頻繁にスカウトされるんだっけなぁ、なんてことを考えながら、暇な日に事務所へ伺おうと決意した俺であった。
そしてついに暇な日が来た。
...暇な日ってなんだろう
「お、おお、でかいな」
目の前に立っている20階建てくらいのビルに軽くビビっていると、なかから木村さんが出てきた。
「おや、あなたは以前原宿でお会いした...」
「あ、黒崎です」
どうやら覚えててくれたらしい。だが名前を教えていなかったことを思い出し今伝えておく
「そうでしたね、お名前をお聞きするのを忘れていました。それで、ここまで来てくださったということは...」
「はい、妹にも言われて少し興味が湧いたので、やってみようかと」
「そうですか!ありがとうございます!それではついてきてください」
つい今さっき事務所から出てきたというのにまた中へと戻っていった。俺はそれについていく。
「日向さん!連れてきましたよ!高身長でスタイルも顔も良い高校生」
「ん?あら、ありがとう!それで、彼がそうかしら」
事実なのかどうかもわからないし、目の前でそんなことを言われると少し照れてしまう。
「はい、黒崎君、というそうです」
「そう、よろしくね、私は日向夏美よ、黒崎...」
「あ、悠馬です」
「よろしくね、悠馬くん」
優しそうな女性に声をかけられた。とりあえず俺もよろしくお願いしとく。
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
「うん、まずは仕事内容の説明からだね。えーと、うちは基本的に服やアクセサリーなどを紹介する雑誌なの、それで、あなたは顔が良いから、顔も出してもらうことになるけど...大丈夫かしら」
「大丈夫です」
妹からも顔出せと言われているため顔出しも許可を出した。
「そう!ならそっち方面で話を進めるわね。色々おしゃれに着飾ってもらってカメラの前で表情、雰囲気、ポーズとかカメラマンの指示に従ってくれればいいからね!」
「はい」
異世界に居たせいでポーカーフェイスなんかはかなり得意になっている。ある意味向いてるかもな。いや、流石にないか
「ん、簡単に言えばそんなもんだと思うけどねぇ。人気が出ると街中を歩き難くなるかも」
「何故です?」
「有名なモデルさんが街歩いてたら女の子に囲まれちゃうでしょ。有名じゃなくてもイケメンでモデルやってたら囲まれるのに...」
「そ、そうなんですか......」
それは面倒くさそうだ。マスクなんかもすれば大丈夫かな。
「わかりました!頑張ります!」
「うん、よろしくね!」
「はい!」
殺るからには本気で殺る、と異世界の騎士団長も言っていた。だからモデルもやるからには本気でやってやる。
ちなみに月収は最初から25万だそうだ。モデルとしては高いのか安いのかよくわからないが、人間1人が満足に生活するには20万前後はあったほうが良いらしいので、一人暮らしはしようと思えばできる額だ。そして、この事務所なのだが、かなり家から遠い。毎回ここまで来るのはかなり骨が折れる。俺が住んでいるのは千葉県なため、毎回事務所がある六本木まで来るのは学生には辛いのだ。なので、引っ越そうと思う。お金ならある程度あるし、生活費も25万入るまでは金を借りたことにしておこう。
「お兄ちゃん引っ越しちゃうの?」
「そうだな、お父さんもお母さんも居ないからな」
うちの家庭は両親を子供の頃に亡くしている。当時4歳の妹と7歳の俺を残してな。
交通事故だそうだ。身寄りが俺しか居ない妹を1人残して異世界に行った時は心配したものだ。まぁ、結果的に何故か時が止まっていて助かったのだがな。
その話はまた今度だ。親も居ない中妹をひとりここに残すのもダメだろう。というわけで、優奈もつれて東京まで引っ越すことにした。
もうすでに俺と優奈の学校には言ってある。ので、後は引っ越すだけだ。
こうして俺は池袋のマンションに引っ越した。ついでにモデルになった。
「あ、私もモデルになれたよ!お兄ちゃんと同じところ!」
!?
優奈もモデルになったそうです
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