異世界から帰還した人類最強はひっそりと生きていたいそうです

しろくまさん

黒崎悠馬




どーも、黒崎悠馬くろさきゆうまでっす。ついこの間異世界から帰還してきました。

まぁ、帰還したっていうか、帰還させられたんだけどな...

俺を含む24人の勇者は、俺たちを呼び出した王国の上層部によって送り返された。

勝手な事情で送り返されたことには文句をいいたいが、送り返してもらったことは嬉しかった。


「悠馬くん、何をしてるの?」


今俺は学校の屋上に居る。4年前に異世界召喚されたときから一切時が進んでおらず、帰還したと同時に時が動き出した。だから行方不明判定にもなっていなかったし、学校に通い直すなんて面倒なこともしなくてよかった。


「悠馬くん!聞いてるの?」
「ん、あぁ、考え事をしていた」


本来今は授業中、けど抜け出して屋上に来ていた。別に授業を受けたくないとか、イジメられているとかではない。ただ単純に面倒なだけだ。それを白井さん...うちらのクラス委員長は良しとしないようで...毎回屋上に来る度に呼びに来ている。


「授業、戻ろ?」


はっきり言うと、俺は異世界でも学校に通っていたため、もう4年分こいつらよりも先に進んでいるのだ。要するに授業を受ける意味がない。知っていることは勉強してもしなくても変わらないし、テストの時はしっかり授業に参加している。テストのときだけだが。


「俺は戻らないぞ」
「なんでよ!授業聞かないとダメだよ?」


ただ授業をサボってるわけじゃない。勇者たちは同じ勇者たちを探して一緒に王国への復讐を図っているそうだ。今は7人ほど一緒に居るんだが、力を持つものは振るいたがる。勇者たちは警察や軍隊が手を出せないことを良いことに好き放題やっている。すでにヨーロッパの方は勇者たちに征服されている。日本には俺を含めて4人の勇者が居るため、向こうも迂闊に手を出せないのだ。それに日本に手を出せば、勇者の中でも最強と言われていた俺の協力を仰ぐことができなくなるため、向こうは日本に手を出さないのだ。だが、万が一の自体に備え、俺はこうしていつも日本全体に結界を張って、その結界の敵感知を行っている。普段は家に居るまわりの人間には見えない精霊に感知させているのだが、俺がやったほうが勿論効率は良いため、こうして学校に居る時はほぼ感知に時間を費やしている。不慮の事故を防ぐため、いわゆる未然防止だな。


「大丈夫だ、白井さんこそ、頭は良いけど俺みたいなのに話しかけてると内申点が落ちる。あまり俺にはかかわらないほうが良い」


白井さんは一般人、勇者側俺ら側とは違う、巻き込むわけには行かない。

まぁ、ちょくちょく異世界の王国から勇者を始末しようと強力な魔物が送られてくるが、8割は日本に到達する前に俺が葬っている。残りの2割ほどはたまに結界まで到達してしまうのだが、結界に触れれば自動迎撃システムが作動するため、魔力をバカみたいに食われる代わりに、日本に対する異世界からの侵略は全て俺に阻止されてしまっている。

何故地球へ異世界の奴らが魔物を送り込むのか不思議に思い、俺と同じ勇者に連絡を取ったことがある。すると異世界の情報が地球に漏れることを恐れ、異世界から安全に攻撃を仕掛けてきているらしい、との連絡を受けた。異世界に再呼び出しして始末することは俺らが暴れることが目に見えているため出来ない、なので異世界からこちらへと攻撃をしているのだ。


「なんでそういうこと言うの?私は悠馬くんと一緒に授業受けたいだけなんだよ?」
「俺に構わないで欲しい、ただサボってるわけじゃないしな」
「うーん...どうしたら一緒に授業受けてくれる?」
「この学校が大学院レベルの授業を提供できるならば受けるのもやぶさかではない」


この白井さん、本当はかなり腹黒いやつである。今もクラスの悪い奴らとつるんで俺に優しく接し、いつ俺が勘違いして告白するのか、という実験をしている。そもそも俺には心を読む力があるし、乱用はしていないが、白井さんに一回使ったらそんなことを考えていた。まぁ、見た目だけならばかなり良いほうだし、実際にモデルにも何回かスカウトされているほどの美貌の持ち主ではある。だが、性格が簡単にわかる力を持っている上に、元々異世界に心に決めた相手が居る俺にとっては大した問題ではないのだ。

......キーンコーンカーンコーン...

と、ここで授業が終わる鐘がなる。


「ん、授業が終わったな。今日はこれで6時間目で...学校は終わりだな...帰るか」
「あ...うん、またね」


良かった。こいつ帰路までついてくることがある。本当に本気すぎると思う。


「またな」


そう言って俺は屋上から校内のトイレへと向かった。



そして俺は誰も居ない男子トイレの個室の中で



「転移魔法・自宅」



魔法を使った。

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