異世界探険史記
第1章 〜始まりの刻〜
ーここどこだ?
ついさっきまで見えていた車、立ち読みしてた漫画、聞こえていた人々の悲鳴・・・
そんなものは全て無くなっていて、辺りは一面暗い。でもただ暗いという訳ではなく、深く重く優しい闇に包まれてぷかぷか浮いているような感覚だ。
***************
遡ること体感で約10分前。
高校生中退ヒキニートという立派な肩書を持った俺は、コンビニで立ち読みしていた。もちろん、同じ学校の連中に会わないように夜中の3時ごろだ。まぁ正直、会ってもほとんど学校行ってないから気づかれないが。
毎週発刊されるコミックスを読みあさっていた時に事件は起こった。
ひとつの作品を読み終わり、ふと顔を上げると、トラックの運転手がうつらうつらしながら運転していた。
ーおいおい、ぶつかるぞ・・・
俺の予想通り、しばらくするとそいつはガードレールにぶつかった。幸い中の人は直ぐに救出された。が、フロントガラスは大破してるしガードレールはねじ曲がってるしでかなりの大惨事だった。
俺の問題はここからだ。
「あ〜あ〜・・・」
と1人でつぶやいた俺の元に凄まじいスピードで何かが飛んできた。
一瞬しか見えなかったが、あれは間違いなくいかがわしいものが書いてある雑誌系のやつだ。
***************
そしたら、ここにいた。状況から見て俺は死んだんだろう。
ーいや別に、もう死ぬのは気にしてないんだよ。それより死に方だよ死に方!あんなもんの下敷きになって死んでたら、俺の名誉もへったくれもあったもんじゃねーぜ・・・
そもそも名誉があるかさえ疑わしい。そんな感じで人生を振り返ってると、暗闇に一筋の光が差した。浮いてる時の進み方がわからないのでぽけーっとしてると、光の方から近づいてきた。
薄い青の電子画面みたいなのが出てくると、若い女の人のような音声が聞こえた。
『これから転生への手続きを行います。転生時の容姿をご指定ください。』
ー・・・・・・・・・唐突の中二病的展開だな。
普通ならとまどうだろうところでも混乱しないのは、ラノベを読みあさってた賜物だと思う。泣ける。
『ご指定ください。』
圧も強いな。えーどーしよ。ま、これでいいか。
ーSA○のキリ○似でおねがいしまーす。
好きなアニメのキャラだからであって、決してモテたいとかではない。決して。
『それでは転生時の武器をご指定ください。』
ー弓矢で。
こっちは迷わない。実は、俺は小学生から弓道を嗜んでいた。高校でも、2年生でニートになる前は弓道部の部長候補にまで上がっていた。まぁ不登校になったのも、そいつらにいじめられて腹が立ったからなのだが。
『かしこまりました。転生する世界と、転生時の〈ホビット〉、〈アビリティ〉はこちら側で決めさせていただきます。』
こちら側がどちら側なのか知りたい。いや、そもそも〈ホビット〉と〈アビリティ〉が何なのかが知りたい。
ーちょっとまってなにそr・・・
『それでは転生を開始致します。』
聞かれたくないと思ったのか、急に早口になったと思うと、画面とともに音声も消えた。
いつの間にか、一筋の光はどんどん俺を飲み込んでいた。視界が真っ白になり、俺は思わず目を閉じた。
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コメント
凛として葱
えぇ感じジャマイカ