君に「おはよう」と言えたら、後悔はない

akaban42

さようなら6

今私は絶賛弟の前で正座中である。
なんでかって?そんなもん正座させている本人にしか分からないに決まっている。
 「……で?今日何あったの?」
 「……いえ特に何もありませんでしたよ。」
 「「何もありませんでしたよ。」じゃなくてさ……今日絶対なんかあったでしょ?移動教室の時ちらって見たけど死にかけみたいな顔してたでしょ?それに実の弟の事をまるで忘れたかのように一人でノコノコ帰ってきたんだからさ?ねぇ?別に怒ってるわけじゃないんだよ。本当に。心配だから気になったんだよ?」
 怒ってるわけじゃないと言うが、私には分かるよ。とても怒ってらっしゃる。
今にも大人しい活火山が今勢いよく噴火しようとするような顔つきをしている。
 どんな顔だってのー。
 「色々ありまして〜……その何ですかね……図々しのですが明日、私一人だけで学校行くので何卒よろしくお願いします。」
プライドなんか殴り捨ててしまえと綺麗な土下座のたいせいをとる。
 「はぁ……おねぇちゃん、言ってること支離滅裂だよ?答えにも文にもなってないし。これで本当に頭いいんだか。まぁいいんだけどさ?でも、どうにもなんない時ぐらいは相談してね。」
 弟は少し呆れ、やれやれと肩をすくめ、首を振りながら自室へと戻っていった。
 こんな不甲斐ない姉の事を心配してくれるなんて、おねぇちゃん嬉しくて涙が止まんないよ。涙なんて出ないんだけどね。
 今日は久しぶりにゲームしようかな〜。久しぶりにこの将棋のゲームしようかな。面白いんだよな〜。なんていうかリアルで指してるぽくてって、うわ!この人強い!戦績えぐいな勝てるかなぁ……

 だらしなかった寝癖を直し、高校の制服を身にまとい、寝ぼけていた朝っぱらとは違う一見真面目そうに見える女子高校生へと変貌することができた……真面目ですよ?
 「もぉ!髪邪魔!切りたい!」
 実際この腰まで届きそうな髪の毛を切りたいのは本心だ。洗うのとか手入れめんどくさいんだよなぁ。それでも髪の毛を切らないのは、こっそり彼の会話を聞いたのだが、髪の毛は長い方が好きらしい。だから切らないでいた。
 「よし!頑張るか!今日も!」
 パンパンと頬を叩き、いつも通り気合を入れる。
 ただいつもとは違うのは一つ遅い電車へ乗る事だ。なぜかって?そんなん昨日からそんな気分だったからだってだけ。

「♫〜♫♫〜」
場所はうってかわって駅のホーム。5、6分ぐらい余裕をもってホームに到着し、私の大好きな恋愛ソングを聞いていた。
 (はぁ〜。これで寒河江君と一緒に登校できたら毎日充実するんだろうなぁ。)
 考えれば考えるほど、自分の広角が上がるのを止められないでいる。
 「?だれ……」
 先程から後ろから視線を感じ、訝しげに振り返って見ると、そこには見慣れた人が佇んでいた。
 「寒河江(安積さん)君?……」
 そこにはいつもとはまた違った優しそう(そう見える)な寒河江君が私の事を見ていた。
 (えっと……なんでいるの!?!?)


 

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