君に「おはよう」と言えたら、後悔はない

akaban42

さようなら5

 朝から課題だ課題だと、終わりはなかったように思えたた。だが、無事全ての課題を終わすことができた。
 いや、『無事』とは言い難いかもしれない。
 「……」
 皺をよせて目の焦点は合わず、吐き気がする。つまるとこ死にそうだ。
 朝からあんなものしてれば、当然気分が悪くなる。
 頭は何かを必死に考えようとするが上手く考えが纏まらず、ふわふわ(?)としていた。今なら目の威圧だけで人を震え上がらせることもできるだろう。まぁしないんだけどね。

  「……」
 ガラリと教室と扉を開けるとそこはいつものガヤガヤとした雰囲気の教室ではなかった。どちらかというとざわざわという表現が的確なのだろう。
 チラリと首を動かさず教卓の方を見ると、クラスの男子が私に近づいてきていた。
  「おはようございます。随分と遅い登場の事で。よろしければ俺と付き合w「うるさい、静かにして。」
普段ならこんな程度のこと、愛想笑い程度で無視してたであろう事なのだが、朝から気分が悪いからなのか余計に彼の言葉が頭に悪い意味で響いた。
だからついつい強く当たってしまった。ごめんね。
 席に着くと、今にも机でぐだっと溶けたい気持ちをグッと抑え前だけを見ていた。
 「「……」」
私と彼との間には、会話どころか挨拶すらない。
 側から見たらただの夫婦喧嘩だ。
(うぅ……気分悪い……しかも彼に挨拶しなかった。はぁ……)
そんな空気感は教室中に広まり、担任が教室に入ってくるまでギスギス感が続いたという。

 放課後
 私は教室である一人の女友達と話をしていた。中学からの親友、唯逢ちゃんだ。
 「今日どうしたのひめちゃん?朝から機嫌悪いし、しかも彼に挨拶もしなかったじゃない。」
 そう気分が悪かったのは朝までで昼は普通だったのだが、彼に挨拶できなかった事がこんなにも自分に影響をあたえるとは考えもしなかった。
 「……朝から課題頑張っておわして、それで気分悪くてて……」
  彼女は少し考える素ぶりをしたと思うとジト目でジーと見てくる。
 「はぁ〜。馬鹿かひめちゃん。」
 「ば、馬鹿じゃないし!」
 「熟年夫婦とうとう喧嘩ってクラスの影で言われてるよ?付き合ってもいないのにね。」
 「じゅくねん!?……」
  (そ、そうなんだぁ。側から見たら熟年夫婦に見えるんだ……えへへ)
 顔には出さないようにと必死になっているが、長年の付き合いというものか。そんなもの彼女にはお見通しだ。ただ言わないだけ。
 「別に私の事じゃないから別にどうでもいいんだけどさぁ。」
 「 ひ、ひどい言い草だね。」
 「姫ちゃん。焦った方がいいんじゃない?こんな噂が流れたって事は彼は今他の女子に狙われ放題なんだんよ?彼を狙っている女子なんて多いんだしさ?この機会に奪われちゃうかもよ?」
 彼女の奪われちゃうかもよという言葉は私に重くのしかかり、そしてわたしからの余裕を奪わせた。
 「それだけは……嫌だな……」
 「本当にめんどくさいわね。あんたたち。」
  ボソっとつい本音が漏れた。漏れたというよりかは聞いて欲しかったのだと思う。
だけど、めんどくさいとはなんだ。めんどくさいとは。
 唯逢はただ満足したかのように何回も頷き、
 「それでこそ姫ちゃんだよ。女は強欲で嫉妬深くないといけない!」
 少し落ち着いた私は彼女の言葉に納得したが、少し笑えた。
 

 
 

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