君に「おはよう」と言えたら、後悔はない

akaban42

さようなら4

 「じゃぁまた明日、安積さん。」
 「え、えぇ……じゃぁ。」
 時刻は午後3時半。
特にやることもなく、ただただぼーっと限りある時間を惰性にしていた。
 (帰ろうかなぁ……)
 よっこいしょっと重たい腰をあげ、重い荷物を持ち上げ、悲しいことに友達とも帰る予定が無いので一人玄関へ歩く。
(今日も挨拶できたなぁ……明日はさよならって帰る時言えたならいいなー……)
友達と帰らないことは別段気にしておらず。どちらかというと、今日の成果が大きいことに頬をゆるゆるに緩みまくらせながら今日あった出来事を振り返る。

 玄関へとつき、今日の晩御飯は何かな、魚がいいなと今日の夕食について考えていると、外には見覚えのある人物二人が仲睦まじそう(?)に話していた。
「寒河江君と山崎君だ。何話してるんだろ……」
と言うものの挨拶ぐらいしか彼らと話した事がない。気にはなるが当然、運動部女子のように気安く「何してるの?」と調子よく聴きに行けるわけもない。影でこそこそ見ている姿は最悪、ストーカだと思われて即逮捕だ。
 「あいつ来んの……待ってんだよ。どうにか……ほしい」
 どうやら話の内容から察するに寒河江君は誰かを待っているようだ。
 一体寒河江君の言ってるあいつって誰だろう……もしかして、彼女さんとか?いやいや、でも流石にそんなわけないじゃないか?まさかまさか……
寒河江君に彼女さんがいたら……どうすればいいんだろ……
うぅ……小さく唸り声をあげ、頭を悩ましていると、ゆっくりと彼に近づく可愛い女子がいることに気づいた。
 (もしかして、あの人が寒河江君が待っている人?……)
 どうゆう関係なんだと目をギラギラに光らせる。
 彼は彼女の様子を見ると、どこまでも冷めた目をした後に無視して帰ろうとするじゃないか。だが、そんな事は許さないと女子生徒は彼の腰あたりに捕まり離れようとしない様子で、彼も飽き飽きしたようだった。私の目から見たらとても仲がいいように見えた。
「え?え?本当にどうゆう関係性!?」
 困惑するだろうよ普通。だけど
 (多分、私だったらあんな目してくれないよね……いいなぁ)
 勘違いしないでもらいたい。私は別にそっちに興味や関心があるわけではないのだ。なんでも出来る仲というのは羨ましいなというだけで決して誤解しないでほしい。
二人が中よさそうに帰っていく姿は私から見たら好きな彼を奪われたように見え、私の胸をきつくきつく締め付けた。

私は一人悲しく帰り道をとぼとぼ歩いていた。俯いてた私を気にしてなのか、オレンジが目に入り、ふと顔を上げると綺麗な夕焼けが広がっていた。足を止め考えることをやめ、今目の前にある幻想に酔う事だけで明日も頑張れる。そんな気がした。
 (たまには考えることをやめて惚けるのもいいな。)
 「彼と見れたならいいなぁ〜なんて。どうせ、こっちの方面じゃないよね寒河江君は。」
はぁ……と残念がるが、そこに憂鬱な気分は残ってない。明日こそは!とまだまだ先があるのだからこんなところで止まってはいられないから。

 早朝。いつもの電車なら三十分ほど余裕もってつくのだが、そんな事は許されない。
 「ねぇちゃん……」
 「はい……」
 「どうするよ?これ?」
 早速立ち止まってしまった。
 弟の目の前に置かれているものは一週間ぐらいからだろうか全く手をつけてない課題達だった。
 「「……」」
 弟は私の事に関すると途端に厳しくなる。
それは、もう怖くて怖くて息も詰まりそうだ。
 どうしてバレたんだろ。
 昨日、部屋入ってきてたな〜。
 「先行くからさ……一つ後ので来たら?俺用事あるからさぁ。分かった。」
 「うい……」
 「はいでしょが。全く……行ってきます。」
 「いってらっしゃいー」
  笑顔で手を振って送るが、振り向いたかと思えば、険しい表情をしながらハンドサインで
 『はやく課題をやれ!』
 「はいはい。」
バタンと扉をしめ、よしっと気合いを強敵と向き合う。次の電車が来る前に終われたらいいな。
 
 
 

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