君に「おはよう」と言えたら、後悔はない

akaban42

おはよう1

 布団から身を起こすのにも一苦労かかるこの季節。布団の外は肌を刺すような寒さのためだろう。当然、僕は部屋で布団から出れずにいた。
 寒い。
 時刻は七時をさす。
 「……あいつ、起こしてくれればいいものを薄情な奴め。」
 「兄貴が起きないのが悪いんでしょ。
早く急いでよ。兄貴はね……」
聞かれていたのか、部屋の前で腕を組み、心底呆れたような態度をとっていた。
ようなはいらないかもしれない。呆れられている。
 妹には少し大きいんじゃないかと思うような制服に身を包む妹……響華きょうかは僕の領土布団の中をひっぺがしに来る。
 人の嫌がる事をよく把握してるようなこってなんとまぁ誰に似たんだろうか?……
  「やめてくれ……あと五分で起きるから……」
 「あと二十五分しかないんだよ!?
ほら、急ぐ急ぐ!!」
「んぁぁんん!……」
「変な声出すな!気持ち悪い!」
 我が妹ながら、よく出来ているようで、布団をせっせっと片づけ、制服をとって来てくれた。さっき酷いやつみたいに言って悪かったな。
(本当、こいつ誰に似てんだ?)
 「あっ、そこにある靴下も取ってくれ。」
  口には出さないがはっきりと嫌な顔をしてきやがった。
 (妹に頼む事じゃないとは思ってるよ。)
 でも、嫌々ながら靴下取ってくれるこいつは本当によく出来た妹だ。俺に似てないと思う。
階段を降りると、玄関にて靴をコツコツと鳴らしながら時計をチラチラ確認する妹がいた。
 「食べたら、歯磨いてコンタクトつけて行く!いいね!?」
 「あーい」
 「たく……」
お前は俺のお母さんかとツッコミを入れたくなるような物を感じる。だが時々、おっちょこちょいになるのだが。今日はないなと家族だからこそ思える。
 台所にはご飯と味噌汁、魚と胃に優しい料理だなと無駄に考え、何故か、二つ並んだ弁当を一つ持ち、急いで学校に行く準備をした。

 「「間に合ったー!!」」
 ゼェゼェと二人して息を切らしながら、ギリギリで電車に駆け込み乗車する事が出来た。
 こういう抜けてる所は兄妹なんだなって感動した。
「案外、五分でいけるんもんだな。今度から五分前に出るか。」
「バカいうんじゃーないよ兄貴。
こんな毎日はいやに決まってるでしょ。」
さっき走ったばかりで二人して顔を真っ赤にし、それもそうかと僕が言った冗談に二人して苦笑いする。
 「んじゃ、いつも通り暁季あかつきちゃんと行くから、じゃぁね」
 「了解。気をつけろよ。」
電車に間に合い、落ち着いた所で朝の一連の動きの中に違和感を覚えた。いつもと何かが違う。 電車に間に合った達成感で何か忘れているようだ。
(なんだっけ〜。弁当持ってきたし……あっあれだ。)
 「我が妹よ。」
 「ん〜?」
 くるりと曙色の髪を揺らし、兄妹一緒のだるそうな目つきをしながら
 「なんだよ? 「一緒に行こ」とか言うんじゃないなよね?」
 「いや、そんな事じゃない……弁当お前どうした?」
 少しの時間の空白が訪れる周り電車の中という事もあり辺りは静寂に満ちている。だが、時間は薄情なことにカチリと動き出す。
 「あっ……」
 響華の顔がだんだんと青ざめた顔となり、先程までの赤い顔はどこかへ消えていた。知りたくなかった事実だろう。だが、兄貴として言わないといけないだろう。
 「お母さん。確か弁当忘れると怒るよなぁ…」
 響華の絶望した顔……そしてオワッタという諦めた顔は見てるこっちが罪悪感で潰れてしまいそうだった。

 
 

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