魔神と落ちこぼれの魔術師

モモ

幕間3

時刻は18時過ぎ。補習から解放された俺は、多くの人が行き交う商店街の中を歩いていた。

ちらりと手提げ鞄に目をやりながら、思う。
始めての補習の感想。
それは、意外といけるかも……
補習で訳がわからんと言う状態を懸念していた俺なのだが、意外とすらすらと頭に入ってきた。
教えるのが上手いな、あの人。たまに話が脱線したりはするけど。

問題なのは、この鞄の中で今も眠り続けているプリント達の存在。
そして
「あー。あれは九条達だよな」
視界の先。
それぞれ赤と金と黒の髪をもつ桜魔の制服を着た女子三人組が歩いている。
見間違う訳なんてない、彼女達は学園の制服を着ているのだから。

取り敢えずどうしよう?
陽平なら迷わず突撃してそうだが、俺はそんなことをする勇気は無い。
だって……女子が三人だぞ?
気まずいにもほどがあるでしょ。
悩んでいると、
「あ。翔君だ。お~い!」
不覚にもエミリアが振り向き、そしてピンポイントで目が合ってしまった。
うわぁ……何て眩しい笑顔……って違う、他の二人がエミリアの声に反応して振り向いた。
そして九条は何だお前か、と言いたげな表情で俺を睨んでいるのですが……
何か、もう逃げれない。
取り敢えず挨拶ぐらいでもしようか。

「補習終わったんだ? どうだった?」
三人の所に着いた時、エミリアが尋ねてきた。

「んと、意外と大丈夫そうかもな。まだ一日目だから何とも言えないんだけどさ」
はは、と愛想笑いで返す。すると
「最初は簡単なの決まってるでしょ。そんなので調子に乗ってたら受からないわよ? あ。言っておくけど、頼まれても教ないからね」
少し機嫌が悪そうに委員長が正論を突き付けてきた。
いくら、正論でも言い方ってもんがあるでしょうに。

ん?
……というか、最後に君は何て言った?
頼まれても教えない、って言ったよね?

つまり、九条と勉強会……
考えただけで
「冗談じゃない……って何ですかその右手の炎は!?」

「魔術よ。ついでに補足するならあなたを灰にするための。骨も残さないから」

「ぼっ、暴力反対!」

「暴力じゃないわ……粛清よ」
委員長様、あなたはどこの国の暴君でしょうか?

「怖っ! っておい!」
咄嗟に叫び、九条から放たれた炎の宿る右拳を避ける。ボワッと熱風が左頬を叩いた。

「法律と校則がある意味を分かっていらっしゃいますか委員長様!? ルール違反ですよ、ルール違反!」

「ルールは破るためにあるわ」
な、何て理不尽な委員長様!
と言うか、君本当は真面目じゃないだろう!そうなんだろう!?

「香恋ちゃん、おっ、落ち着いて……」

「……そうね。何か馬鹿らしいわ。ありがとね、舞」

橘との素晴らしき友情でようやく我に帰る委員長様。右手の炎も霧が晴れるように消え去った。

助かりました、橘さん。命の恩人ですよ、まじで



「で、たまたま補習の終わった坂本君が私達を発見したということね」
四人で商店街を歩きながら、九条は続ける。
「ん、少し違うわね。シュターデさんが先に発見したのかしら」

「そういう訳でございます委員長様」
実は俺が先に見付けたけど無視するかどうか悩んでました、何て言えないから適当に話を合わせる。
「相変わらず私だけにはふざけた口調なのね。どんなキャラしてんのよあなた」

「それはどういう意味で?」
まさか身も蓋も無い事を口走るつもりじゃないですよね

「特に意味は無いわ。えっと……」

ビクビクしていると、急に九条は黙り始めた。九条だけではない。横で会話していたエミリアと橘の二人も黙り出す。


まさに沈黙。
これは一体?


少しの間、そのまま硬直していると九条が言いにくそうな表情で口を開いた。

「女子三人と男一人、ね。周りから見るとどんな風に映るのかしら」


意識していなかった訳ではない。俺も、うわー女子三人とか気まずー、と少しは思っていた所だ。

これはあくまで俺視点。では第三者の目で見ると俺はどんな風に映るのだろうか?

容姿がハイレベルな女子三人と仲良く雑談しながら歩く馬鹿一名。

渇ききった日々を過ごしている男達からすれば、爆発しちまえの一言に尽きるだろう。
俺も同じ立場なら、リア充、爆発しろとしか思わない。


……


「うわっ! うわうわうわ! 唐突に恥ずかしくなってきたんですけど!」

頭を掻きむしりながら絶叫する俺。
だが待つんだ、俺。このままいけばエミリアと帰ることすらアレに直結するぞ?

「ぐああああぁぁ!! 駄目だ! あくまで俺は友達として彼女を! ん、これで既に墓穴を掘っているではないか!?」

「な、何でいきなり発狂!? っていうか彼女って誰よ!?」

一歩どころではなく四・五歩ぐらい引いてます、という感じに顔を引きつらせた九条が俺に突っ込む。

「翔君には色んな事情があるんだよ。いまいちキャラが確定していないし、時には崩壊する時もあるしね」

「あの……それはどういう意味でございましょうか、エミリアさん?」

フォローになっているようでなっていない。橘さんも何か言ってください、このままだと俺は陽平より酷い扱いを……

そんな切実な思いが通じたのか、橘が小さな口を動かす。

「あ、あの……坂本君って意外と軽い人なんですか?」

……
「エミリアさん。俺は泣きそうです」

「だ、大丈夫。翔君は硬派だよ。多分」

「ううっ、エミリアさん……」

『多分』は聞かなかったことにしておくよ。そして、やっぱり俺の味方は君しかいない……



「さ、こんな茶番は終わりするとして。後はもう帰るだけなんでしょ、坂本君。私達はこれから遊びに行くのよね」

暗にアンタは邪魔だから早く帰んなさい、と九条は言っているのだろう。何だか仲間外れに遭った気分だ。
まあ、女子三人と仲良く遊ぶ勇気と度胸なんて俺には無いんだけどね。

「ん、じゃあ俺は帰らせてもらうか」

「そうね。そうしなさい」

「あれ? 俺、ひょっとして今ゴミみたいな扱いされてる?」

「気のせいよ。気のせい。だから是非とも早く帰ることを強くお勧めするわ」

「やっぱり扱いが酷くなってる! どうしようエミリア、九条が異様に冷たい!」
と、エミリアに泣きついたが、彼女は「ははは……ファイト」と苦笑を浮かべるだけ。

「はぁ。じゃ、俺はホントに帰ります。またなエミリアと橘」

世間の風当たりの厳しさを痛感した所で、俺は心優しいお二方に告げ、場を後にする。

「私は無視? ちょっと! 坂本君!?」

何やら九条・香恋とか言う赤髪の女の子が後ろから叫んでいるが気にしません。
さあ、さっさと家に帰ろう



非常に疲れた。
帰宅し、足早に制服から部屋着に着替え、ベッドへダイブ。
ばこっととか言う固い効果音と痛みが俺を襲った。
ベッドよ、君すら俺を裏切ると言うのか。

痛みに悶えること数分。このまま寝てしまおうか、とウトウトしてきた所で着信音が鳴り響いた。
音源は俺の携帯。一体、誰からだろう? 取り敢えず携帯をみる。

そして画面には
『雪菜』

……
あ、あいつ
何だって俺に魔話をしてきたんだ?
はっ、もしかしてお兄さんをからかうためか。
切ろう。
鳴り続ける着信音を無視し、通話拒否を押す。しかしその一秒後、再び携帯は音を奏で始めた。
仕方があるまい。
電話に出るしか道は無いだろう。もしかしたら緊急かも知れないし。

「こちら坂本・翔護です。はい用件をどうぞ!」

半ばヤケクソ気味で俺は魔話に応じる。

『あ、翔兄ぃ? 突然だけど学園生活の感想をインタビュー……っと、聞くまでもないか』

電話越しに聞こえるハキハキとした声。その主は言うまでもなく俺の妹、坂本・雪菜だ。

「用件はそれだけ? まさか暇だから魔話しましたー、って言うんじゃないだろうな」

『何よ。微妙に心配だから電話掛けてあげたのに!』

「早速お母さんスキル発動ですか雪菜さん。あと微妙には要らん」

『むっ、やっぱり翔兄ぃはダメだね。冬兄ぃはいる?』

「ブラコンめ」

『翔兄ぃも一応兄なんだけど。というか、ブラコンってどういうこと!?』

こんな感じで5分ぐらい受話器に向かってギャーギャー言っていると、音も無く俺の部屋のドアが開かれ
「うるさい。廊下まで聞こえたぞ」
スーツ姿の兄貴が登場。
いつの間に帰ってきたんだ?

「あー、兄貴ならいるぞ。何なら代わろうか? てか兄貴に用があるのなら直接兄貴に電話したらよかったのに」

電話の向こうの雪菜に言いつつ、完全な無表情の兄貴にチラリと目を動かす。何か用事があるのかな。

『んー、でもいいや。今回は翔兄ぃの近況が気になっただけだからね』

そして『じゃあたまには母さんにも電話するんだよ』と保護者のように言い残し、雪菜は電話を切った。プー、プー、という虚しい効果音が耳に入る。

通話が終わったのを見計らってか、兄貴が小さく口を開いた。

「雪菜か」

「まあそんな所。心配だから電話を掛けてきたみたいだな。微妙に、だけど」

「?」

紫色の瞳を細め、首を傾げる兄貴。無表情だからその仕草はちょっと怖い。

まあ、電話の件に関してはどうでもいいことだと解釈したのだろう。再び口を動かす。

「話は変わるが、後で居間まで来い。お前に話と渡す物がある」

「渡す物?」

何を……というか何で? 全く予想がつかないや。

うんうん、と勝手に心の中で頷いていると兄貴は「詳しくは居間で話す」と言い残し、部屋を出て行った。

何と言うか無駄の無い人間だね、兄貴って。確か茜さんは言ってたな、冬哉は昔から何も変わってない的なことを。

あ。そうそう、兄貴に魔具の件について話しておかないと。兄貴なら何とかしてくれるに違いない。

取り敢えず今は兄貴に言われた通り、居間に行くとしよう。話はそこからだ。


居間には話の通り、兄貴が椅子に腰を掛けて俺を待ってくれていた。

 食事の時に食器や様々な料理が並べられるテーブルには、高級感と重々しい雰囲気を纏う、大きくなければ小さくもない木箱が一つ。
早速だが言わせてもらおう。
「何それ?」
俺の言葉に兄貴は「座れ」とだけ返す。
そして促されるまま、俺はテーブルを挟んで兄貴と向かい合うように座った。

 それを見計らってか、兄貴が開口する。

 「これは魔具だ。少し気が早いかもしれないが、持っていて損は無いだろう」

……

「はい?」
 思わず聞き返してしまう。
ち、ちょっと待って。魔具? 兄貴、さっき魔具って言ったよね?

「魔具だ。正確には、この箱の中身だがな」
 律儀に兄貴は応じてくれる。
 だけどそれってつまり
……

「おぉ、さすが兄貴。読心術まで会得しているというのか……」
頭の整理が追い付かなくて、変な言葉が口から漏れた。
は? と意味が分からなさそうに兄貴は首を傾げるが、どうでもいい事と判断したのだろう。
話すのを再開する。
「ひとまず開けてみろ。知り合いに譲ってもらった物だから、少し型は古いが橘製の第三世代だ。」
顔が綻ぶを止められない俺は、兄貴に言葉を返し、テーブルの上の箱に手を伸ばす。
そしてそれを近くに引き寄せ、意外に軽い蓋を外す。
すると目に入ったのは、居間の電灯に反射して怪しく黒光りする、一対の篭手だった。

特に目立った装飾も何も無い、ひたすら漆黒のガントレット。

指先から前腕部まで覆えるであろうそれは、大陸西側の騎士が着けていそうな印象を与える。

だが、よく見ると所々に魔法陣が彫られているのが確認出来た。
何か格好良い。


「……どうだ? 最近は腕輪や首輪といったアクセサリーに近い物が主流なのだが」

「いや有り難いよ、兄貴。丁度言わなくちゃいけないなって思っていた所なんだ」
兄貴に言葉を返しつつ、俺は箱の中に丁寧に納められた篭手を取り出す。てか、指輪みたいに納められてんのな、これ。

「お……意外に軽い?」
早速試しに右手に着けての感想はこれだった。鉄の塊のような印象があったのだが、思ったより軽い。
しばらく、ぼけーっと眺めていると、兄貴が口を開いた。
「魔具を使用した場合での術式の組み方だが……説明は不要か?」

「術式の組み方?」

「……ああ、組み方と言うより理論と言った方が近いのかもしれんが」
理論かぁ~
何か難しそうだけど、聞いていて損は無いよな。どうせ補習にもそのうち出るんだし。
取り敢えず聞いてみることにした。こういうのは兄貴に教わるのが一番だしね。

「……例えば魔力弾を生成し、真っ直ぐに飛ばすとする。この場合、お前は如何にして魔術を行使する?」

「え? えっと……」
まずは魔力を練るよな? んで、魔力弾の情報や軌道を術式に組み込んで……
後は顕現。
手とかから術式が組み込まれた魔力体を放出……だっけか?

ん。待てよ?
だとすれば、魔具のサポートを受けて魔術を顕現する時って具体的にどうしたら良いの?

う~ん、と頭を捻ること数分。
「あ」
不意に頭に浮かんだ。
早速、その仮説が正しいのか兄貴に確かめてみる。

「魔具を介して術式を構築する……とか?」

極端な話、髪の毛一本からでも魔力弾は撃てる。要は術式の組む箇所なのだ。

「正解だ。まあ、第2世代魔具以降の物は術式を入力しておけば、それを起動するだけで魔術は発動するがな。簡単な問題だと思っていたが、案外時間がかかるものなんだな」
兄貴は無表情な顔で無感情な声で言う。

うん、それは俺がバカなだけです。

「実際にやってみれば分かるだろう。とは言え、まだお前は使えないがな」

そうだよな。兄貴から魔具も貰ったんだし、絶対受からないと。
うわぁ、何かプレッシャーを感じる。

「……あ、これ学園に持って行っても大丈夫? 茜さ……じゃないや、担任の先生が実物があったら分かりやすいとか言ってたんだ」

「構わないが」
俺の口から飛び出そうになった『茜さん』という言葉に、眉を潜める兄貴。
確か知り合いなんだっけ。聞いてみるのは……無理か。
兄貴が口を割りそうにない。

「……そういえば今日から補習が始まったのだったな」
ここで一区切りし、何故か無言で俺を見詰める兄貴。
無機質な紫色の瞳が怖い。

「えっと、兄貴?」
よ、読めない。
兄貴の感情が全く読めなさ過ぎる

しばらくして、兄貴は口を開いた。
何だかちょっと呆れたような表情だ。

「宿題があるんじゃないのか?」

 あ。












「余りに問題が多くて泣きそう」

自室でプリント軍団と戯れる俺。内容は比較的分かるのだが、量が絶望的だ。
「というか、兄貴が帰ってくるの早かったなぁ。いつもは夜に帰ってくるのに」
漆黒の篭手が納められた木箱を眺めつつ、独り言。

いけない。集中が途切れ途切れになってきてる。ファイトだ俺。

 だが。

 「……」

思いに反し、ピタリと止まるシャーペン。
自然と右手はシャープペンから離れ、机の隅に置かれたラジオへ。
やはり、休憩は必要だね。
見苦しい言い訳を心の中で呟きながら、ラジオの電源を入れる。
そして、耳を疑った。
「え?」
聞こえて来たのは地元のニュース番組だった。

『尾崎市で学生……それも桜魔魔術学園の生徒ばかりを狙った事件ですか。この一週間で被害に遭った生徒が四人になるとか』
『えぇ。今の所、同一犯である可能性は高いと思われます。やはりこれは……』
聞いているだけで物々しい雰囲気を感じる。聞いていると専門家らしき男性一人と、ニュースキャスターと思われる男女二人が真剣な声で討論をしていた。

「嘘だろう?」
ラジオに向かって問い掛けるが、当然答える人などいる訳がなかった。












午後9時45分。

尾崎市の郊外にある廃工場に、何台ものパトカーが停められていた。それも駐車場のように行儀よく並べられたものじゃない。まるで駆け付けたように、複数のパトカー停められている。

 「これで五人目、いや、六人目だね、冬哉君」

 スーツを身に纏う茶髪の女性島田・涼子は彼女の隣に立っている部下に言った。

 「……そうですね」

 同じくスーツを身につけた男、坂本・冬哉は答える。普段は何も感情を感じさせない紫色の瞳だが、今は違った。

 「弟君、桜魔の生徒だっけ?」

 「はい」

 「不安……じゃないの?」

 「不安ではない、と言えば嘘になります」

 冬哉の頭には先程、救急車で搬送された少女と少年の姿が頭から離れなかった。

 少女はもう酷いとしか表現できないぐらいボロボロな状態。

 話によると、少年はたまたま事件に遭遇し、犯人の標的にされた少女を助けようとして負傷。なんとか撃退したそうなのだが……。

(……嫌になるな)

 内心、冬哉は溜息をつく。
 最近こんな事件ばかりだ。同じような事件はこれで五回目。それも名門・桜魔魔術学園ばかりを狙った犯行。
被害者がいつ自分の弟になるか、そんなことを考えただけで強い怒りを覚える。

「?」
 ふと、冬哉の目が一点を見詰めたまま、止まる。その先には桜花の制服を着た、長い赤髪の少女がいまにも崩れ落ちそうに淋しく佇んでいた。

「あ。彼女ね、被害に遭った女の子の友達だそうなの。何でも寮で隣の部屋同士らしくて、今日は都心部の方まで一緒に遊びに行ったそうなんだけど、途中で別れたらしいね」
島田は続ける。
「で、晩ご飯も一緒に食べる約束をしていたのに中々来ないから気になって電話したら、苦しそうな声で『助けて』って……ね」

 それはあんまりな話だ、と冬哉は思う。
 程なくして赤髪の少女はの女性警察官に連れられ、パトカーの元へ歩いていく。危ないから寮まで送る、という話らしい。








―――――――――――――――――――――――――
九条視点





悪い予感はしていた。

入学式のあの日、まさか桜魔の敷地内であいつに遭遇するなんて。
でもおかしい。昔のあいつは桜魔に入れるような奴じゃなかった筈。
や。もしかすると転校してからの一年間であいつは魔術の腕を磨き上げたのかもしれない。
それも、私に復讐するため。

最近ちょくちょく目にするニュースがある。その被害者は全員、事件の被害にあう昨日まで私が仲良く話していた友達だった。
そして今日、遂に事件は親友に牙を剥いた。牙を剥いてしまった。
心当たりなんて有りすぎた。
 全ては一年前のあの日、イジメを受けていた、一人の気弱な少女を助けた時から始まっていたのだ。
自分は何も悪いことはしていない。
寧ろ蔑まれた彼女を助けた救世主のような気分だった。
だけど、一年経ってそれは裏を返した。しかも私に直接的にではなく、友達ばかりを狙うように間接的に。

決心するのに時間はそうかからなかった。一刻も早くあいつを壊してやりたい。でなきゃ、私がこらえられない。
でもそれには明確な情報が必要だ。証拠を見付け次第、この『化け物』と呼ばれた力で全てを片付ける。これ以上、私の問題でみんなに迷惑をかけられない。


「魔神と落ちこぼれの魔術師」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く