魔神と落ちこぼれの魔術師

モモ

幕間2

「こんばんは、翔護君」
突然、聞き覚えのある声が俺の耳に入った。

「今日は君に伝えるべきことがあるんだ。起きれるかい?」
声の主に促されるまま、俺は瞼を開き、重たい体を起こす。

あれ?
変だ。何で俺は寝てたんだ?
それに体が怠い。何故?
と言うか、ここは俺の部屋じゃないか。
いつの間に帰ったんだろう?

頭を捻って記憶を絞りだしてみようと試みたけど、俺の記憶は丁度学園の職員室を出た所で途切れている。
軽い記憶喪失?
ふと脳裏にそんな言葉が過ぎった直後
「アルマロス?」
俺は、ミステリアスな雰囲気を放つ青髪の少年が直ぐ傍にいることに気が付いた。
「うん。思ったより元気そうで何よりだ。今回はお疲れ様」
「?」
何やら満足げに頷くアルマロス。
相変わらず、彼の言葉は何か意味深だ。

「でもまさか外部から記憶に干渉されるだなんて、ちょっと予想外だったかな」
ちょっと待て。
何かさらっとと大変なこと言わなかったか?
思わず固まる俺を見て察したらしく、アルマロスは単刀直入に言った。


「結論から言おうかな。君は今日の昼過ぎ、桜魔学園校庭で魔獣、いや魔獣兵器の襲撃を受けた」
 襲撃?
そもそも、魔獣兵器って何?
それに今日魔獣に襲撃された覚えが全くないんだけど。

「……えっとアルマロス。俺、そんなこと全然覚えてないんだけど」
「それは当たり前さ。外部から人為的に事件に関する記憶を消されたからね」
「え、誰が? 何で?」
話の内容が有り得なさ過ぎて理解が追い付かない。

「学園側の意図さ。大和屈指の名門校の名に傷が付くのを恐れたとの事だけど、これは絶対裏があるね。」
裏って……
陽平と同じ事言ってるよ……
まあ、陽平と違って妙に説得力があるけど

「暗い話はここまで。とにかく君が無事で良かったよ。力を貸した甲斐があったもんだ」
「力?」
「契約を守っただけさ。気にしないでくれればありがたいな」
そんなことを言ったアルマロスは、何かをごまかすように微笑む。
何か怪しい……
まさか俺達を助けてくれたとか?
ん、俺達?

「そうだ皆は!?」
「ああ、彼等も無事だよ。しっかりと事件の記憶は消去されてるだろうけどね」
「そ、そうか……」
良かった、取り敢えず一安心。でも、そういうことはエミリア達も巻き込まれたってことだよな……
凄く微妙な気分。

「あ」
不意に俺は重要なことを思い出した。
「アルマロス。前々から聞きたかったことがあるんだけど」
そう。それは俺の傍に立っている青髪の少年、アルマロスの正体についてだ。

「何だい?」
アルマロスはにっこりと微笑みながら応じてくれる。
早速質問をぶつけてみようと思った瞬間
「ごめん。どうやらもう時間が来たみたいだ。また君と話せるのは暫く先になるのかもしれない。でも大丈夫、僕は君を見ているから」
フッと、まるで彼だけを空間から切り取ったようにアルマロスは突然消えた。
前回同様、意味深な言葉を残して。

 聞きそびれ、ますますアルマロスの正体が謎めいてきた。
でもまぁ良いか。
今度こそ会ったら聞くことにしよう。

それにしても僕は君を見ている、か。
美少女に言われたら思わずドキッとしてしまいそうな台詞だけど、男に言われてもね……

まあ、気を取り直して、今は何時だろう?
 窓から夕日の日差しが差し込んできている辺り、夕方だと思うんだけど。
枕元に置かれていた携帯を開いて時間を確認。丁度、17時40分に針が動いた所だった。

まず、軽く頭の中を整理してみよう。

俺とエミリアや九条を含む六人は事件に巻き込まれたらしい
アルマロスは襲撃と言ってた気がするが、ここはオブラートに包んで事件と呼ぼう。
そしてそれが収束した所で学園から事件の記憶を抹消された。

「はぁ~。もう止めよ。考えても頭が痛くなるだけだ」
そう呟いて自分に言い聞かせ、俺は携帯を適当な所に置き、ベッドから降りる。
陽平達に事件のことを聞くのは止めといた方が良いかもしれない。
寧ろ俺が忘れよう。
襲撃を受けて記憶を消された、だなんて信じてもらえる話ではないしね。










同刻

目を覚ましたエミリア・ シュターデの元に黒い鴉が訪れていた。
「で、決心はついたのか?」
エミリアは一言も発さないが、鴉は意に介さず続ける。
「何、何もあの集団を裏切れと言っている訳ではない。ただ、向こうの情報を流して欲しいと言っているだけだ。我々も現在彼らと争う気はないし、メリットもない。」
「主亡き組織が完全にないと言えるの?」
エミリアの反論に鴉から聞こえる声の主は苦笑する。
「痛い所をつくな。我らは確かに主を失って40年近くがたつ。それゆえ一枚岩と呼べる組織ではいが、主の復活を望んでいると言う所では一致している。」
「復活?一度死んだ人間を蘇生させると?」
「その通り。そのための準備はすでに完了している。後は魂を得るだけだ。」

「そんな事できる訳……」
エミリアはそこまで言いかけて気づいた。
この組織の主は何を目的としていたのかを。
そして、それがかつて成功する直前まで進んでいた事を。

「思い出したようだな。そう、あの方の要望により、我々その系統の研究をメインで行っていたのだよ。」
エミリアは口を閉す。
本当か嘘かは解らない。しかし、彼らが大組織である事には変わりない。
それに目的の達成を考えれば現在組んでいる組織と彼らと両方、後は政府とも組んだ方が利がある。

エミリアがそう判断するのを待っていたかのように一時沈黙していた鴉は言葉を再び発する。
「それにあのカルトまがいと我々両方と手を組んだ方が君にとってもメリットがあるだろう?我々とも組んでくれればオルトロスとあの魔神契約者の少年との戦闘データも無償で渡すし必要とあれば支援は惜しまない。まあ、返事は後日聞くとしよう。ゆっくり考える事だ」
鴉が去ろうとした時
「待って。」
エミリアは顔を俯かせながら尋ねる。
「あの魔獣、いえ魔獣兵器はあなた達が……」
「確かに我々はかつてグノーシスから技術提供があり、我々も作れあれを作る以上疑う気持ちは解るが、恐らく我々ではない。最低でも、今日桜魔学園に魔獣兵器を投入するとは私は聞いていない。これを信じるか、信じないかは君の自由であるがね」
そう言い残して、鴉は今度こそ窓から去る。
それをエミリアは睨み付けて見送った。

「あの程度の魔獣兵器に勝てないようじゃ魔神に勝てる訳がないか……」
幸いと言って良いか解らないが、エミリアが所属している魔術結社が回してくれた魔具のおかげで記憶の消去はまぬがれていた。
もっとも途中気絶していたため、翔君とオルトロスの戦闘は見れていない。
「手遅れになる前に必ずあれを倒さないと……そのためには手段を選んでいられない」


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