魔神と落ちこぼれの魔術師

モモ

序章

密室の中、三つの人影があった。黒髪で紺色の5歳ぐらいの男の子、まばゆい金髪で赤い瞳を持つ5歳ぐらいの少女、そして青い髪で同じ色を持つ15歳ぐらいの少年が。
子供二人が青髪の少年と対峙していた。

「翔君」
金髪の女の子が心配そうな目で前に立つ男の子を向ける。
「大丈夫。」
男の子は女の子にそう言い切った後、青髪の少年を睨み付ける。
「その条件で契約を結べば俺達を助けてくれるんだな。」
青髪の少年は微笑を浮かべる。
「厳密に言えば僕が助けるのは契約を結ぶ君だけなんだけど、結果的にはそこで震えている少女も助かる事にはなるだろうね」

「わかった。」
男の子は顔をしかめながら頷く。
「僕が出す契約条件は前に上げた通りだけど、君は大きな代償を支払わなければならなくなる。」
「代償?」
男の子の問いに青髪の少年は頷く。
「うん、代償。僕の力を得る代わりに君はほとんど魔術を行使出来なくなる。厳密に言えば魔力のコントロールが上手く出来なくなるだけど」
男の子は迷う素振りを見せるが、それも一瞬の事であった。
「わかった。そんな事で俺とーーが助かるなら。」
「翔君、それは」
金髪の女の子が見つめられ、黒髪の男の子は笑みを浮かべながら、金髪の少女の方を見る。
「男は女の子を守らないといけないって冬兄も親父も言っていたからね。」
「わかった。では、契約を結ぶとしようか。」
青髪の少年は笑みを崩さず、一歩ずつ子供二人に近づいていく。
「後、翔護君だったね。君の記憶は消させてもらうよ。そうしないと僕が楽しめないからね」











40年前、世界に異変が襲った。
そのきっかけとなったのは、魔力を持っていない人間が突如魔力を持つと言う突然変異。
体内に精神エネルギーである魔力を有し、脳にある魔細胞により術式を構築する。従来の魔術師より保有する魔力も術式の構築力も圧倒していた。
その新しく発生した人間を従来の人間は魔人と称した。
特異な力を持つ彼等の登場により、世界は歪み始める。

差別、隔離、弾圧、非人道的な実験。

螺旋階段のように繰り返される対立の歴史を経て、比較的魔人が多数発生していた大和と言う島国では魔人による大規模な反乱が発生し、魔人が実権を握る。
そこに大陸諸国に誕生した魔人が亡命し、大和は唯一の魔人国家となり、大和連邦となった。

大和連邦は当初人類諸国に対等な関係を求めたが、ラスィー帝国やオーシア帝国、興亜帝国等が魔人による政権奪取は認めず、旧体制に戻るよう、要求。
ビザンティン帝国の仲介で何度か強硬派の大国を中心とした諸国と会談の場が設けられたが、その度、交渉は決裂。両勢力の緊張は高まり、新大和歴8年、グレゴリオン歴1907年、占森島の悲劇より、本格的武力衝突に発達した。
反魔人国家は世界安全保障条約(サンクトベブルク条約)を締結し、サンクトベブルク条約機構軍(通称連合軍)を結成。
誰も疑わなかった圧倒的物量を誇るサンクトベブルク条約機構軍の勝利。しかし、その予測は大きく裏切られた。
何度かの海戦で大和連邦軍が勝利し、彼らは大陸に大規模に進出。そして戦線を大きく押し上げ、一年もたつと大和連邦軍西部戦線では、興亜帝国帝都落陽近郊まで迫る勢いを見せた物の、大和連邦軍も疲弊し、大和連邦軍の勢いはそこで止まった。
しかし、連合軍も戦力を消耗し大きく疲弊しており、戦線は膠着すると思われたが、興亜帝国軍とラスィ帝国軍はそれぞれの戦線で攻勢に出て、返り討ちに合う。
しかし、大和連邦軍も攻勢に出る事なく、塹壕等を掘り、防備を整えたため、戦線は膠着した。

魔術戦力で劣る人類はグノーシス紛争で実用化されていた新魔術の強化に務め、かつての強力であるが効率の悪かった旧魔術の駆除を進めつつ、塹壕を突破するため、戦車を投入するが、若干大和連邦の戦線が後退したぐらいで、大勢に影響はなかった。また大和連邦も新魔術に遅れながらも適応し、人類と魔人は3年戦争(大和独立戦争)停戦、講和条約後は冷戦を迎えた。しかし、冷戦が10年も続くと人類の国家同士の対立が表面化し、さらに大和で鉱山資源ばかりでなく、魔石と言う希少資源が大和連邦領の蝦夷島や樺太島でも発見された事により交易しようとする国家も出てくる。
その結果、大和は完全に孤立する事は避けられ、大和は興亜帝国と共和主義革命が起き、帝政が崩壊したラスィー共和国が一度小競り合いを起こした程度で後は平和を享受していた。


そんな中『尾崎の悲劇』と称される、大和連邦を構成する大和本島にある尾崎市で原因不明の魔力暴発事故が発生する。
町中に拡がった異質な魔力は交通機能に大打撃を与え、魔人は次々と魔力暴走を引き起こす。

大和本島西部の主要都市であった尾崎市を壊滅状態にまで陥れたその事件は、人々に新魔術への不信感を抱かせた。


この緊急の事態に、大和連邦政府は復興と調査のため『学術推進都市』を尾崎市に指定。


10年の歳月を経て、大都市へ復活を遂げたこの街を舞台に物語は始まる。









至って平凡と言うのが周りの評価だろう。

どちらかと言えば、得意なことより苦手なことが多い。魔術は……まぁ、補助魔術ぐらいしかまともに使えないんだけど。
ともかく、それが俺……坂本・翔護なのだ。

両親と兄と妹と俺5人家族で極普通に育ち、気付けばもう中学3年生。

親父が魔人である俺は混血の魔人である


先程述べた通り、俺は中学3年生だ。中学3年生、受験戦争に否応なしに参加参加しなければならない年代だ。

当然、当たり前のように俺は高校へ進学する予定。進学先はもちろん地元の魔術科高校。

偏差値は良くもなく悪くもない地元の魔術学校だ。

担任にもお前も受かると言われていた。だが、その結果はまさかの不合格。


時が止まったような感覚がした。同時に何かが崩れるような音が聞こえてきたね。一緒に見に行った友人らも同情されたが、それが本当つらかった。


最早泣く気力さえ沸かない俺は家に帰るとポストに封筒が入っていた。
封筒の裏には俺の名前と住所。そしてワープロで打たれた『桜魔魔術学園』。

恐る恐る封を切った俺は中身を取り出し、驚愕した。

白い紙に列ぶ文字群。それは俺に推薦入学を促す物だったのだから。

両親は歓喜し、俺を祝いに祝った。

当然、俺達は秒単位で書類にサイン。

両親は喜んでいたが、実の所、俺はあまり嬉しく無かった。

桜魔魔術学園があるのは、かの有名な学術推進都市・尾崎市。それも有り得ないぐらいに遠い。俺が住んでいる所から鉄道でも半日以上かかる。

何でそんな遠い所から届いたのは謎だが、俺は引越しをすることになった。いや、せざるを得なかった。


引越し先は一人暮らしを営んでいる兄貴の家。偶然にも兄貴の家は学園から近いらしく、部屋も余っているとのこと。


まあ、この春休みはドタバタしていた。そして奇跡が起こりまくった。

そのせいか、俺はあることを忘れていた……
俺が通うことになった桜魔魔術学園はかなり有名な名門校で、偏差値が凄いことになっている学校なんて。
そして、疑問に思うべきだった。地元の魔術学校に落ちた俺が何故そんな名門校から推薦の話が出てきたのかと……

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