善施分物語

Tagayax99812

脱出

鷹白鳳は既に戻っていた。
「・・・・・・やったな。」
全ては作戦だった。
狩の終わりに二の宮の鷹をどこかに飛ばして後を五の宮に追わせ、迷子にさせるという。全てがうまくいった。

「・・・森の方へ行っちゃったけど大丈夫かな?」
「平気だよ。あの森意外と狭いんだ。一度迷ったことがあるから分かる。」


「・・・・・・これでオレたちの未来も安泰かぁ?」





五の宮は途方に暮れていた。
辺りは既に真っ暗。
奥がかすかに明るいだけだ。・・・?
手持ちのものは何もなく、
ただあるのは馬だけだった。

「どうしよう・・・・」

いくら天才と呼ばれた彼でも、遭難の対処法なんか知らない。今までに勉強して来た事柄は何も役に立たない。
こんなことは初めてだった。

何年か前に大兄一の宮が同じく鷹を追いかけて、森で遭難したことがある。
その時は丸1日かけて森の中を隈なく捜索し、発見することができた。

丸1日、か・・・・・・

考えてみれば、自分の布団以外で夜を過ごすのは初めてだ。

頼れる兄ちゃんも女房達も母上もいない。
こんなに不安な時は生まれて初めてだ。

お腹が空いた。
今日は朝から鷹狩りで大騒ぎしたものだから、尚更だ。

まさかこの馬を食べるわけにはいくまい。 
第一どのように食べるかもわからない。

そういえば大兄一の宮が迷い込んだ時、
森の中に洞穴があり、その中で一日中過ごしたって言っていた。発見された時もそこだったな。

でも、その洞穴ってどこなんだろう・・・・。
大兄は昼間に入っちゃったはずだからすぐに見つけられたんだろうけど・・・。
1寸先約3㎝はなんとか見られる程度、ほぼ手探りの今の状況で、そんな洞穴なんか見つかるだろうか・・・・・・。
・・・・・・?

その時五の宮は、自分の身の丈より若干高い所に、何か光る矢印があるのを見つけた。
近づいて見ると、それは木に掘られ、何か光るものを入れた矢印だった。
確かにどこかを指している。

五の宮は大変怪しく思った。
ひょっとしたら森の魔物がつけた罠かもしれない。

だが、ここで待っていても、凍えてしまうかもしれないが、魔物なら、ひょっとしたら助けてもらえるかもしれない。

そう思って、五の宮は、馬を引いて、その矢印の方向へ言って見ることにした。

不思議なことに、その矢印はいくつもあり、
確かに何かを指していた。

恐る恐る、「お坊さんお寺の先生」に教えてもらった魔除けの呪文お経を唱えながら、進んで行った。

ふと広い場所に出た。
「ここは・・・・・・?」

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