不遇職テイマーの成り上がり 〜スキル【吸収】でモンスターの能力を手に入れ、最強になる〜

愛犬ロック

第29話 テイマーは王都ヴァスノスに到着する

 剣を鞘にしまい、唖然としている冒険者に会釈をした。その後、負傷した冒険者のもとでウィンドウルフと戦っていた冒険者パーティに挨拶をした。

「君が噂のテイマーだったのか」
「テイマーだってのに俺たちより全然強くてビックリしたぜ」

 冒険者ギルドでの出来事で俺は少し有名になってしまったのかもしれない。

 そこへ、商人がやってきた。

「いやぁ〜、助かりました。ありがとうございます」
「いえいえ、そんな感謝されることでは……」

 俺がそう言うと、一緒に戦った冒険者パーティのリーダーが口を開いた。

「それは違うな。君のおかげでこのキャラバンは救われたんだから感謝されて当然さ」
「そうですとも。戦わない冒険者もいるのにあなた方は、恐れずにあのモンスターと戦ってくれた。我々商人には出来ないことです」
「じゃあ……どういたしまして……でいいのかな?」
「はい」

 と、ニッコリと笑う商人。

 それから俺達が乗る馬車は変わり、先頭
から二番目の馬車になった。
 乗り心地が上がり、前の馬車よりは快適だ。

「これってアレンとシャルの強さが認められたって事かな」

 少しふかふかな座席に座ったレナがそう言った。

「そうかもな。だけど、俺たちの強さが認められたからじゃない。俺たちパーティの強さが認められたんだよ」
「うん。レナも頑張った」
「うーーーー! 二人共ありがとうーーー!」

 俺とシャルに抱きついてきたレナ。
 シャルとレナの顔が目と鼻の先にある。

「おい、俺は男なんだからちょっとは遠慮しろ」
「えーそんな事気にしているの?」
「気にするだろ……」
「じゃあアレンは、今この瞬間、私達を女性として意識してドキドキしてるって事だね」
「あのなぁ……」

 そりゃドキドキするだろ。
 こんな近くて抱きつかれてたら。
 それに何かレナの柔らかいものが若干当たってるし。

「まあアレンは大丈夫」
「うん。アレンは私達を襲う勇気は無い」

 どうやら俺は男として舐められてるのかもしれない。
 それなら少し仕返ししてやろう。

「そうか、ならこれでもくらえ!」

 右手と左手で二人に、こちょこちょを仕掛けた。

「ちょっ! 待って! くすぐったい! アハハハハハ!」
「……フフッ……」

 爆笑しているレナに対して、シャルは耐えているようだ。
 レナがうるさいので、仕返しはこれぐらいにしておこう。

「はぁ……そんなことしないでよ」

 俺とシャルから離れ、自分の席に戻ったレナ。

「じゃあお前も抱きついてくるなよ」
「えー、スキンシップだよ。それにアレンからしたらご褒美じゃない?」

 ……確かに。

「あらあら、満更でもなさそうな顔をしていますねぇ〜」
「してねーよ」
「してる」
「ハハ、だよねー」

 数の暴力で押し切られてしまった。
 まぁ……満更でもなさそうな顔をしていたんだろうけど。



 ◇



 ウィングウルフ以来、モンスターには遭遇したものの強敵はいなかった。
 少し退屈な時間を過ごし、6日後キャラバンは王都ヴァスノスに到着した。
 城壁の外では農業が盛んに行われていて、いくつもの麦畑が並んでいる。
 キャラバンは城門を通り、街中をゆっくりと走る。
 ヴァスノスは凄く大きな街のようで、人の数もかなり多い。
 そして街の中央には大きな城が見える。

「おおー……凄いな……」

 スケールの大きさに俺は思わず感嘆の声を漏らしてしまった。

 しばらく街中をゆっくりと移動し、厩舎の前でキャラバンは止まった。
 キャラバンに乗っていた冒険者達や商人と挨拶を終え、そこで解散となった。

「あー、疲れたー」

 吊り上げられるように体を伸ばした。

「初めての長旅は疲れるね」
「うん」

 俺達3人の中でシャルだけ平気そうな顔をしていた。
 というより、いつもと変わらない無表情。

「あーお腹すいたー。もう夕暮れだし、早く宿屋探そうよ」
「ここら辺を歩いていれば、すぐ見つかるよ」

 城壁に囲まれた王都ヴァスノス内には、商業区、居住区、貴族区の3つの区が存在する。
 ここの厩舎に来るまでで、多くの店が並んでいた事と商人達がここの厩舎を利用している事を考えると、ここは商業区だろう。
 なので、商業区内を適当に歩いていれば、そのうち宿屋は見つかるというわけだ。

「ふーん、じゃあ早く宿屋を見つけよう」
「そんなに腹減ってんのか……」
「そりゃそうだよ! だって、この6日間朝食と夕食しか食べてないじゃん!」
「十分だろ」
「うるさい! とにかく私はお腹が空いたの!」

 空腹のときの方が元気な気がするのは僕だけでしょうか。

「アレン、私もお腹すいた」

 俺の服の袖を引っ張り、シャルも腹が減ったと訴えてきた。

「分かったよ。じゃあ早く宿屋を見つけよう」

 歩いていると、宿屋はすぐに見つかった。
 3部屋の料金を払おうとすると、シャルから無言の圧力を感じた。
 鋭い視線、そして無表情な顔が、

「何で私と相部屋じゃないの」

 と言っている様な気がした。
 実際言われてないので、難なく3部屋確保する事が出来た。

 俺達は自室に荷物を置き、宿屋の食堂に向かった。
 食事をしながら、今後の予定について話し合う事となった。

「武術祭まで残り二ヶ月もない訳だが、どうする?」
「どうするって、アレンとシャルが頑張って強くなればいいんじゃない?」
「そう、それで何を頑張るのかって事を話し合おう」
「何を頑張るか、ねぇ〜。普通にモンスターを倒してるってのは?」
「それも勿論一つの案だな。シャルは何かある?」
「……んっ、強いモンスターを倒せばいい」

 もぐもぐと食べているパスタを飲み込んで、シャルは答えた。

「強いモンスターか。俺たちの適正となるモンスターのランクはCだろう。Bは少し危険だな。Bランク以上のモンスターを狙うという事なら、それは却下だ」
「分かった」

 そう言ってシャルは、またもぐもぐとパスタを頬張る。
 自由だなぁ……。

「うーん、じゃあ結局今まで通り普通にモンスターを倒すって事になるのかな?」
「そうだな。でもモンスターを今までより効率良く倒せる場所がヴァスノスには存在するだろう?」
「ああ、ダンジョンね。忘れてたよ」

 ダンジョンは自然とモンスターが沸いてくる不思議な洞穴だ。
 何階層もあり、最下層にはお宝が眠っていると言われていて、層が下に行けば行くほど出現するモンスターが強くなっていく。
 そして嬉しい事にモンスターが地上に出てこないようするため、1体あたりの単価は低いが、ダンジョン内のモンスターを倒してもギルドから報酬金が貰える。
 だが、その分モンスターの数が多いので俺達にとっては好都合だ。

コメント

  • あい

    戦闘から→先頭からじゃないですかね。とても面白いです、これからも更新よろしくです(〃・д・) -д-))ペコリン

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