不遇職テイマーの成り上がり 〜スキル【吸収】でモンスターの能力を手に入れ、最強になる〜

愛犬ロック

第27話 テイマーは別れを告げる

 あれから三日経ち、俺達はゲブランの鍛冶場にやってきた。レナは隣のテレサの工房に行っており、ここにはいない。

「おう、来たか。二人の武器は、ちゃんと完成してるぜ」

 俺達に気付いたゲブランは、金属を叩くことを中断して、机の上に置いてある2本の剣を手に取った。
 2本の剣の剣身は黒色で独特な雰囲気を発している。

「カッコいいな。それによく斬れそうだ」
「そりゃそうだ。ウチの鍛冶屋で取り扱っている中でも最高級の鉱石、アダマンタイトを使ってんだからな」
「アダマンタイト!?」

 本で読んだ程度の知識でしかないが、アダマンタイトの武器を買おうと思ったら白金貨が必要になってくるぞ!?

「ガッハッハッハ、その反応が見たくてアダマンタイトを使ってやったのさ。アレンの反応も中々のもんだったが、シャルも珍しく驚いた顔をしたのは傑作だったな」

 楽しそうに笑うゲブラン。
 隣にいるシャルの表情を覗き込むと、驚いた顔はしておらず、少し恥ずかしそうにしていた。

「そんな理由かよ!? えっと……いいのか? 俺達あんまり金持ってないぞ」
「気にすんなよ。金じゃねえさ、こういうのは。それに……お前はテレサの夢を叶えてたやっただろう?」
「でも、俺はゲブランに何にもしてないから、何か申し訳なくってさ」
「だからそれは前に言っただろう? 将来大物になったときに恩返しでもしてくれや」

 笑顔でそう言うゲブランは、凄く男らしかった。
 そして、こんな事が出来るゲブランを俺は尊敬した。

「ありがとうゲブラン。本当にありがとう」
「ありがとう」

 俺とシャルは二人でお礼を言った。

「へへ、だから気にすんなって。そういえば、お前らは今日でこの町を出て行くんだっけか?」
「ああ、次は王都に向かおうと思ってる」
「ヴァスノスか。あそこは良い町だな。大きいし、色んな種族もいて、人も多い」

 思い出すかのように、語るゲブラン。

「ゲブランは一度行ったことがあるのか?」
「ヴァスノスの鍛冶屋で修行してたときがあったな」
「へぇー、じゃあゲブランはずっとこの町にいた訳じゃないだね」
「そうだな。テレサとヴァスノスで出会ってから、この町にやって来たって感じだ」

 王都ヴァスノスに居た時にゲブランはテレサと出会ったのか。付き合いは結構長いのかもしれない。
 よし、このタイミングで気になってた事を聞いてみるか。

「……なぁ、テレサとゲブランって付き合ってるのか?」
「ん? ハッハッハ、それはありえねぇな。テレサとは、ただの腐れ縁だよ」
「なんだ、随分と仲が良いから付き合ってるのかと思ってたよ」
「そういうお前こそ、シャルとはどういう関係なんだ?」

 どういう関係って……うーん、主従関係とでも言えばいいのだろうか。でも、そういう事言いたくないしなぁ。
 と、悩んでいるとシャルが口を開いた。

「私はアレンの奴隷」
「ほぉ〜。シャルは奴隷だったのか。それにしちゃぁ随分と扱いが良いな」
「奴隷にせざるを得ない状況だったからな。俺としては対等な関係でいたいと思ってるんだ」
「たぶん、その考え方は珍しいだろうな。多くの奴隷は、金銭に余裕のある奴のところで道具として扱われる事が多い」
「うん、だから私はアレンの奴隷になれて幸せ」
「ハハハ、相思相愛で結構な事だな」

 からかうように笑うゲブラン。

「相思相愛って、あのなぁ……まぁいっか。じゃあそろそろ行くよ」
「元気でな。次、この街に来たときはちゃんとここに顔を出せよ」
「もちろんだ。絶対会いにくるよ」
「おう。テレサにもちゃんと挨拶していけよ」
「分かってるって。それじゃあ、またな」
「ゲブラン、バイバイ」

 俺とシャルは、手を振って別れを告げた。

「またな。次会うときは立派な姿になってる事を期待してるぜ」

 俺もそのつもりだ。
 次会うときは、ゲブランに恩返し出来るほど強くなってやるさ。
 ゲブランから貰った剣を腰に携えて、ゲブランの鍛冶場から出た。

 今からテレサの工房に向かおうと思っていたが、なんと外にはレナとテレサが待ち構えていた。

「キャラバンの出発時刻はもうすぐみたいだから、外で待っていてあげたのさ!」

 胸を張り、自慢気にテレサは話した。

 キャラバンは、複数の商人が商品を安全に運ぶために集団で移動する手段だ。商品の輸送中に盗賊やモンスターから守るために俺達冒険者が同乗する。
 移動費は商人が負担してくれる代わりに冒険者はしっかりと護衛の役目を果たさなければいけない。

 フォルトリアからヴァスノスまでは距離があるため、キャラバンが出される。
 どちらも人気の町で頻繁に商人と冒険者が行き来するため、キャラバンも頻繁に出ている。

「そうか、ありがとうな」
「ふははは! もっと褒めるがいいさ!」
「もう、調子に乗ってると話が長くなって、外で待ってた意味なくなるでしょ」
「分かったよー。ケチー」

 レナに注意されると、テレサは大人しくなった。
 凄えな、レナ。

「テレサにも色々世話になったな。ありがとう」
「私はスライム貰えたから、アレンと出会えて良かったよ!」
「それは何よりだ」
「じゃあ、そろそろ行こっか」
「そうだな。テレサ元気でな」

 俺がそう言うと、テレサは手を差し出してきた。

「アレン、最後に握手をしようではないか」
「分かったよ。また――痛ってぇ!」

 テレサの手を握ると、ビリビリっとした痛みが俺の手を襲った。

「ふははははは! それが私の発明品をガラクタって言った罰だよ! 私の発明品ビリビリハンドの餌食となるが良い!」

 最後の最後までテレサはテレサだった。
 そして、やっぱりテレサの発明品はくだらない物ばかりだなと思った。

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