不遇職テイマーの成り上がり 〜スキル【吸収】でモンスターの能力を手に入れ、最強になる〜

愛犬ロック

第23話 テレサの訪問

 シャルの温もりをしばらく堪能した後、宿屋を出てギルドに向かった。


 朝の刻にレナとギルドで待ち合わせをし、これからの方針について話し合う予定だったのだが、お天道様は既に高いところまで昇っており、これを朝と言い張る事は出来ないだろう。
 俺たちは想定以上にのんびりとしていたようだ。
 ギルドで待っているレナはどんな顔をしているのだろうか……。
 いや、前向きになれ。
 きっと謝れば許してくれるさ。


 いつもより重いドアを開けて、ギルドに入ると、不機嫌な顔で机に肘をついているレナの姿が目に入った。

「遅かったね、君達」

 レナも俺たちを視界に捉え、一言述べた。

「まぁ、色々と事情がありまして……」

 後ろめたい気持ちに口角を引きつられた。
 手のひらで頭を撫でながら、苦笑いで答える。

「別にいいけどね。私は一人寂しくここで待っていただけだから」

 プイっと顔を背けて、そう言うレナ。
 俺は察した。これは全然良くないやつだ、と。
 しかし、機嫌を良くしようと、余計な事を言ってしまえば状況はより悪化する。
 であるならば、この状況下で最善と言える行動は――そう、謝罪だ。


「……すまん」
「……レナ、ごめん」


 俺が頭を下げて謝ると、シャルも続けて頭を下げて謝った。

「いいって。あんまり気にしてないし。これからは、なるべく遅れて来ないでね」

 あんまり気にしてない、って嘘なんだろうなぁ。
 だって、顔にそう書いてあるもん。

「はい、分かりました」

 俺はレナの機嫌を逆撫でしないように丁寧な喋り方で対応した。

「よろしい。じゃあこれからどうする?」

 不機嫌な顔を辞めたレナは、雰囲気を変えて明るい口調で集まった本題に移る。
 どうやら救われたようだ。

「これからの予定の話し合いをしようと思いまして」

 しかし、丁寧な口調は崩さない。
 これも全て平和のためだ。

「アレン、その喋り方バカにしてるの? いつもみたいに喋ってよ」

 逆効果だったようだ。
 女心というのは難しい。

「――分かった」
「うん、その喋る方がしっくりくるよ。えーっと、それで、これからの予定だっけ? モンスターを狩りに行けばいいんじゃない?」
「フォルトリアの森のモンスターだともう相手にならない。ここで狩りを続けるより場所を変えてDランク、Cランクのモンスターを対象に狩りをした方がいいと思うんだ」

 先日、トレントを吸収して俺のステータスはかなり高くなった。トレントのステータスを見た限り、Cランクのモンスターなら難なく倒せるのではないかと踏んでいる。

「Dランク、Cランクのモンスターかー。それならどこがいいかな」
「火山は?」

 シャルが狩場の候補としてフォルトリアの森を抜けた先にある火山を挙げた。
 確かに、モンスター辞典を読んだ情報だと火山は主にDランク以上のモンスターが生息しているようだ。火山にある鉱石を採掘して、フォルトリアの町で売りに出せば今より金も稼ぐことが出来る。
 だが、俺は他の場所を候補に挙げる。

「それよりも良い場所がある。王都ヴァスノスだ」

 ペルケウェル国の王都ヴァスノス。
 王都はフォルトリアから馬車で6〜7日ほどかけた場所にあり、フォルトリアの鍛治職人達が手掛けた武具が頻繁に輸送されているらしい。周辺に住むモンスターはDランク以上ばかりだ。低ランクから高ランクの冒険者が集まり、冒険者の主な活動拠点となる地が王都ヴァスノスである。

 俺がヴァスノスの名前を挙げると、レナはポンと手を叩いた。

「あー、もしかして武術祭に参加しようとしてるのかい?」
「流石だな。その通りだ」

 王都ヴァスノスでは2ヶ月後に武術祭が開催される。酒場で食事をしているときによく耳にしたワードだった。3年に1回行われる昔から続く伝統ある祭のようだ。仮に武術祭で良い成績を残せば、城の騎士団への加入招待が送られたり、冒険者のランクが上がったり、色々と特典があるようだ。
 武術祭には誰でも参加できて、一次選考、二次選考、そして残った参加者達による決勝トーナメントが行われる。
 武術祭の内容は全て公開されるため、誰でも無料で観覧することが出来るため、王都で人気のイベントなようだ。

「でも武術祭で結果を出すんだったら、最低でも決勝トーナメントには進出しなきゃね」
「それもそうだが、対人経験の無い俺とシャルにそれは難しいかもしれないな。経験を積むことが一番の目的で最善を尽くす事が出来ればそれでいいさ」
「ふーん、よく考えてんだね」

 感心しているレナに俺は少し自慢気に、

「まあな」

 と、返事をした。


 そんな俺たちに不穏な影が忍び寄っていた。
 その影は、俺たちに素顔を見せて、勢い良く喋り出した。

「甘い! 甘いぞおおぉぉぉぉ! そんな心意気でどうする!」

 熱血。
 そんな言葉が似合うセリフを鬼気迫る表情で喋る女の子。
 小さい身長にで長い金髪。そして、角のない少し丸い顔。
 飛び出てきた女の子は、俺が知っている人物であった。

「テレサ!? 何でこんなところにいるんだ?」

 そう、この町一番の錬金術師であるテレサが俺たちの会話に混ざりこんで来た。

「やあ、アレン。実はね、私は君に用があって来たんだ」

 コホン、と畏まって身なりを整えて話すテレサ。
 俺に用とは一体何事だろうか。

「用ってなんだ?」
「それは私の工房で話そう。一緒に来てくれるかい?」
「……何か怪しいな」
「なっ!何を言うかね!私は偉大な錬金術師だぞー!怪しい要素とかゼロなんじゃないかな!?」
「そこは自信持てよ……」
「まあ兎に角、私の工房に来てよー。お願い聞いてくれたら、君達の武器をゲブランに作ってくれるように頼むからさー」

 いや、それはゲブランが可哀想な気がするんだが。そう思ったが、口には出さなかった。上手いこといって、ゲブランが武器を作ってくれたら、俺たちはかなり得をすることになるからだ。

「……はいはい、分かったよ。今から行くよ」
「それで良いのだ! では行かん!我が工房へ」

 先陣切って、俺たちの前をテレサは腕を大きく振りながら歩き出した。
 本当にテンション高いな、この人。

 トントン、とレナは俺の肩を叩いてきた。

「……ねぇ、この子って結構凄い人なんじゃないの? 知り合い?」
「まぁ……そんなところだな。一回しか喋った事ないけど」
「そうなんだ、その割には仲よさそうだったね」
「たぶん、ああいう奴なんだ。少し頭がおかしい」
「……なるほど」

 そう言うレナは、凄く納得した様子だった。


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