不遇職テイマーの成り上がり 〜スキル【吸収】でモンスターの能力を手に入れ、最強になる〜

愛犬ロック

第11話 アルケミストは今日も失敗する

    酒場で俺とシャルは夕食を食べていた。
 少し懐が暖かくなったので、パスタを頼んだ。
 銅貨10枚と割と高かったが、収入的には何も問題ないな。
 前と比べれば優雅な暮らしになったもんだ。

 そして、やはり酒場はドワーフが多い。
 冒険者もそれなりにいるが、ドワーフが酒場の大半を占めている。
 皆、ジョッキを片手に持ち、会話に花を咲かせている。

「シャル、しばらくは今日みたいな感じでモンスターを狩ってる予定だけど、問題ない?」


 パスタをくるくるとフォークで巻きながら、シャルに今後の予定について話し合う。


「うん。でも、もうちょっと強くても平気。Dランクぐらいなら余裕」
「確かに……。ステータス的には何も問題ないな。今の俺でもホブゴブリンなら間違いなく倒せるだろうし」
「だから狩場を変えたい」
「レイダラ山?」
「うん」


 レイダラ火山は、フォルトリアの森を抜けた先にある。生息しているモンスターは一番弱くてDランク。
 上がBランク、稀にAランクと中々危険な場所だ。


「うーん、俺はあまり気乗りしないな」


 資料で見たのだが、DランクとCランクには壁がある。大きなステータスの壁が。そのステータスの差はCランクから顕著に出てくる。Bランク、Aランクも出現する可能性がある場所とくれば、最悪命を落とす場合だってあるはずだ。


「じゃあ森でいい」
「……うん、そっちの方が安全かな」
「パスタ美味しい」


 話はそこで終わり、シャルはパスタに夢中になっていた。
 パスタを口に頬張り、幸せそうな顔で食べている。
 こういう姿を見ると、無邪気で可愛らしいなと思ってしまう。
 これが……ギャップ萌えって奴ですか?



 ◇



 フォルトリアの町の北東区。
 ここはこの町で最も鍛冶場が多い地区となっている。
 ここにいる鍛治職人は、フォルトリアの中でも腕利きの鍛治職人しかおらず、製造される武器や防具はどれも一級品。



 ――そんな鍛冶場地区にある一つの工房。
 工房の天井は爆発によって、ポッカリと穴が出来ていた。


「アハハハハー、また失敗しちゃった!しかし、失敗は成功のもとという!私はこのまま失敗し続けるぞ!」


 爆発によって焦げついた金色の長い髪。身長140cmで愛くるしい容姿をしながらニコニコと失敗を笑う人間とドワーフのハーフの女の子。


「コラァ!またオメェ工房を爆発させやがったな!何度目だよ!」


 工房に一人のドワーフがやってきて、彼女を怒鳴りつける。
 それもそのはず、何せ彼女の失敗による被害は決して小さいものではないのだから。


「オッス!ゲブラン!今日もまた失敗しちゃったよ!」
「オッス!……じゃねえ!またお前が失敗したせいでな!ウチの鍛冶場の壁がぶっ壊れちまってんだよ!」
「あらま、それは大変」
「呑気なことが言ってねえで、とっとと直しやがれ!」


 女の子より背の小さいドワーフはジャンプして、ガシッと女の子の首根っこを掴み、引きずる。


「痛いよーゲブランー。直すからーやめてよー!」
「って言ってオメェは1日直さなかったろうが!」
「うぅ……返す言葉が見つからない……」
「ったくよぉ」


 ズルズルと工房の隣にある鍛冶場に引きずられていく。
 鍛冶場の壁は、赤いレンガの屋根によって粉砕されていた。
 瓦礫が周辺に飛び散っており、酷い有様になっている。


「これはヒドイ。一体誰の仕業だ!ゲブラン!」
「だから!オメェだって言ってんだろ!」


 ゴツン。
 ゲブランという名のドワーフは、女の子に拳骨をお見舞いしてやった。
 女の子は涙を浮かべながら、拳骨された場所を手で撫で撫でしている。


「イッタアア!ああああぁぁぁ痛いいいい!!はい、私の灰色の脳細胞が6千500億3万兆個死亡しましたー!」
「メチャクチャすぎるだろ」
「何を言う!バカと天才はイコールで結ばれているのさ!」
「それを言うなら紙一重だろ」


 はぁ、とため息を吐くゲブラン。


「とにかく、とっととこの壁を直してくれ。テ・レ・サ・」



 テレサと呼ばれたハーフドワーフ。
 彼女こそ、この鍛冶場地区が出来た原因となった人物。
 彼女の作る合金は、武器や防具の素材としては最高級の物であった。供給量の多い鉱石を組み合わせて作るため、安価で質が良い。
 だからこそ、この町の腕利きの鍛治職人が揃いも揃って、彼女の工房周辺に集まったのだ。


 ――テレサ=フィーヴァーは、凄腕の錬金術師アルケミストだ。



「分かったよーもう。じゃあ、まずはこのレンガの屋根を軽くしちゃいます!」


 ――《職業スキル》【材質変化】


 レンガの見た目は変わらない。
 しかし、重量が変わっており、非力なテレサでも持ち上げられるようになっている。
 テレサは軽くなったレンガを「どっこいしょ」という掛け声と共に持ち上げる。


「このレンガ、私の工房に持ってっといてー」


 そう言ってテレサは、レンガをゲブランに渡す。


「しゃーねえな。てかこのスキル、いつ見ても意味分からねえ能力してんな」
「むむ!意味は分かるよ!仕方ない、私が1日かけて、どういう原理で!物質がどう働いて!どう変わっているのか!ゲブランに教えてあげよーじゃないかー!」
「遠慮しとくわ」


 テレサを華麗にスルーしてレンガを工房の方に運んでいくゲブラン。


「もぉ〜ノリが悪いなー……はぁ、私もこの壁をとっとと直しておこうか」


 壊された壁に近付き、テレサは飛び散っている瓦礫に手を乗せた。


 ――《錬金術》【修復】


 テレサの手を乗せた瓦礫は、独りでに壁の方にゆっくりと飛んでいき、見る見るうちに壁が形成されていく。


「クックック、この程度の破損など私の前には無いに等しいのだ!」


 ドヤ顔で元通りになった壁を見るテレサ。
 そこにレンガを工房に置きに行ったゲブランが戻ってきた。


「よし、元通りになったな。テレサ、もう一つ悪いんだけどよ、ダマスカス鋼の在庫が無くなっちまいそうだから作っといてくれ」


 ダマスカス鋼とは、鉄の合金であり、鉄より硬く、ミスリルより劣る程度の硬さである。
 しかし、テレサの作るダマスカス鋼の硬さはミスリルと殆ど変わらないのだ。
 フォルトリアで鉄より少し高いぐらいという値段でこれだけの素材を手に入れれるのは、テレサと仲の良い者だけだった。


「えー今日はもう営業終了だよ。私のノルマは1日1爆発だからさ。だからもう終わり!終了!」
「何だよそのふざけたノルマは……まっ、分かったよ。じゃあ明日頼むわ」
「かしこまりッ!」



 ◇



「おーい、シャルー。どいてくれー」


 昨晩は前と同じようにシャルと一緒に寝ることになってしまった。
 別にシャルと一緒に寝たく無い訳じゃないけど、無駄に緊張してよく眠れないんだ。

 そして翌朝。
 目が覚めるとシャルが俺の腕を枕にしてスヤスヤと眠っていた。


(何が起こっているんだ……)


 枕がないし、ベッドは狭いから寝づらいというのは分かる……何で俺の腕を枕にしているんだ、君は。
 ぐっすりと眠っているところ悪いが、起きてどいてもらおう。

「シャルさーん、起きてくださーい」


 そう声を掛けながら、肩を揺らすと、パチっと目を開けた。

「……起きた」
「よし、じゃあまずは俺の腕から頭をどけてくれ」
「……おやすみ」
「待て待て!寝るなー!起きなさーーい!」










 その後、俺の説得(?)の甲斐あってか、シャルは起きた。
 で、今は宿屋から出てフォルトリアの町の中を歩いている。
 朝から町にはキンキンと金属を叩く音が鳴り響いている。


「どこいくの?」
「今日はモンスターを狩りに行く前に鍛冶屋を見てみようかな」
「でもお金ないよ」
「将来的に金は貯まっていくだろうし、先に見てみるのもいいかと思ってさ」


 やって来たのはフォルトリアの町の北東区。
 ここはフォルトリアでも腕利きの鍛治職人が多いと言われている場所だ。
 ここもまた冒険者の数が多く、賑やかな場所だ。
 適当な鍛冶屋に入ってみる。
 中には武器が飾ってあった。
 値段を見てみると……。


(たっっっか!!)


 飾ってあるミスリルの剣の値段は、何と金貨10枚。
 銀貨100枚で金貨1枚だから、銀貨1000枚もするということになる。

 その他の武器も同じぐらいの値段だった。
 報酬金が銀貨約4枚だったから1ヶ月ほどあの調子で頑張れば、金貨10枚ぐらいだったら買えるかも。

 一通り店内を見て回ってから店を出た。


「シャル、どうだった?」
「どれも良い物だった」
「まあ、そうだよな。一級品って言えば一級品だし」
「でも買いたいとまではならなかった」
「そうなの?」
「うん」
「なんで?」
「なんとなく」


 出た。なんとなく。
 そのフィーリング能力は一体何なんですか?
 出鱈目言ってるだけなんじゃないかという気がしてきた。


 歩いていると、屋根が損壊している工房を発見した。
 これって、もしかして昨日の爆発音がした場所なのか?

 そう思いながら工房を見ていたら、工房から誰か出てきた。
 ドワーフだ。
 ドワーフは、何かの鉱石が山積みに乗せられた手押し車を押している。
 坑夫として働いてたとき、俺もああやって運んでたな。
 ……てか、結構積んでるな。あれだと鉱石がちょっと落ちちゃうんじゃないか?


 ポロッ。


 案の定、鉱石が地面に落ちた。
 ドワーフはそれを見るも一度運び終えてたから拾おうと考えているのか、そのまま進んでいく。

(せっかくだし、拾ってあげるか)

 落ちた鉱石を拾い、ドワーフに届ける。


「この鉱石落ちてましたよ」


 と、鉱石を渡すとドワーフは笑顔でお礼を述べてくれた。


「おっ、若い冒険者さんありがとな」
「いえいえ、それよりこれって何の鉱石何ですか?」
「気になるのかい?」
「そうですね。知識は多いに越したことないですからね」
「ほぉ、利巧な冒険者もいるもんだな。これはダマスカス鋼と言ってな。鉄の合金だ。鉄より硬くてミスリルよりは劣るって鉱石なんだがな。コイツは訳が違う」


 俺から受け取ったダマスカス鋼を見せながら、ドワーフは言った。
 ……もしかしたら、昨日2人のドワーフが言っていた錬金術師の事かもしれない。

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