不遇職テイマーの成り上がり 〜スキル【吸収】でモンスターの能力を手に入れ、最強になる〜

愛犬ロック

第9話 テイマーはワイルドボアを仲間にする

鍛治職人の町フォルトリアに到着した。
 馬車を降りて、町を見渡す。
 空はすっかり暗くなっている。
 それでもまだ営業している鍛冶屋が多く、どの店の煙突を見ても煙が上がっている。
 町行く人は、小さな人が多い。これは皆ドワーフだろう。大体背丈はゴブリンぐらいだ。
 ドワーフだけでなく、他種族もいっぱいいて、冒険者の姿も多い。


「これが鍛治職人の町フォルトリアかー。シャルは来たことある?」
「ない」
「そっか……とりあえず泊まるとこを見つけないとな。宿屋を探そう」


 町を転々とする冒険者は、職業柄宿屋を利用する事が多くなってくる。
 この町は、冒険者の姿が多く見られるため、宿屋もすぐ見つかるだろう。




 案の定、宿屋はすぐに見つかった。

「二人かい?1部屋なら1泊銅貨20枚だよ」
「じゃあ、1部屋でお願いします」

 銅貨20枚を宿屋の店主に渡す。

「これは部屋の鍵だ。飯は、ここの向かいにある酒場で食べるといい。あそこは安くて美味いからな」
「分かりました。ありがとうございます!」

 店主から鍵をもらい、部屋に向かう。
 部屋にはベッドが1つしかなかった。
 ……そりゃそうか。
 銅貨20枚だとこんなもんだよな。


 ◇


 店主に紹介してもらった酒場で夕食を済ました。
 で、後はもう寝るだけなのだが……。

(ベッド一つだもんなぁ……)

 俺が床で寝て、シャルをベッドで寝かせるか。


「シャル、ベッドで寝ていいよ。俺は床で寝るからさ」
「二人でベッドを使えばいい」
「いや、そういう訳にもいかないだろ……?」


 シャルは恥じらいというものがない。
 それは俺を異性として認識してないからだろう。
 自分で言って少し悲しくなった。


「明日はモンスターを狩る。なら二人共ベッドで寝た方がいい」
「いや、それはそうなんだけどさ……その……シャルは女の子だからさ、一緒に寝るのはまずいかなーって」
「でも私は奴隷」


 そうなんだけども。


「じゃあシャルが床で寝れば?」
「分かった」


 そう言って、シャルは床で横になろうとする。
 いやいや、少しは躊躇しろ!


「あー分かった!分かった!二人でベッドを使おう!だから床で寝ようとするな!」
「うん」


 床に横になろうとするのをやめて、ベッドに横たわるシャル。


「あと、もう一つ言っておきたい事があるんだ」
「なに」


 俺は自分の職業がテイマーだということをシャルに告げておかないといけないと思っていた。
 明日はモンスターを狩ることになり、自分の能力がバレると思ったので、打ち明けることにした。
 正直、嫌われるんじゃないかと不安だ。
 ……その結果、緊張して口の中が乾いている。
 それでも言わないと。


「実は……俺の職業は……テイマーなんだ」
「うん」
「……あれ?反応たったのそれだけ?」


 思っていた反応とは全く違っていた。
 ビックリして、もっとドン引かれるものだと……そう思っていた。


「アレンがどんな職業でどんな人だとしても関係ない。私はアレンを守るだけ」


 いつもと変わらない口振りでシャルは言った。


「……なんで、そんなに俺を守ろうとしてくれるんだ?」
「アレンが初めて私を助けてくれた人、笑顔をくれた人だから。それと私はアレンの奴隷」
「ふーん、そうか」


 俺はシャルに背を向けて、素っ気なくそう言った。
 何故なら今のニヤけているであろう自分の顔を見られたくなかったからだ。
 ……正直、シャルが俺に言ってくれた凄い嬉しかった。
 自分を認めてくれたような気がしたし、シャルを助けてよかったな、って心から思った。
 見返りが欲しくて助けた訳では、決してないのだけれど、シャルが俺にくれた言葉は凄く俺の心に響いた。


「じゃあもう寝よう。明日はモンスター狩って、金稼がないといけないから」
「分かった」


 こうして眠りについたのだが……俺が寝れたのはシャルが寝てから随分と経った後だった。




 ◇



 冒険者ギルドにやってきた。
 ギルドには、周辺に生息する魔物についての資料が置いてあるため、それを利用しようと思ったのだ。
 フォルトリアの町の冒険者ギルドは結構人で賑わっていて活気付いている。
 周辺に生息するモンスターのランクの幅が広く、ここが鍛治職人の町だから、という2つの理由が挙げられるだろう。

 窓口に行き、受付嬢から資料を借りた。
 ドワーフの受付嬢だった為、背が低く子供と話しているような気分になった。

 資料は、モンスター辞典と書いてあって、この辞典にはフォルトリア付近のモンスターのみ掲載されているようだ。
 俺とシャルの分を借りたので、二人でモンスターについて勉強するところだ。
 椅子に座って、資料を眺める。

 Eランクのモンスターから順に掲載されているようだな。

 Eランクのモンスターは……。
 ワイルドボア、ウルフ、大ネズミ、と魔獣系のモンスターが多い。フォルトリアの森というここから少し離れた森に生息していて、その近くには火山があり、ドワーフ達が鍛治に使用する鉱石は、そこから調達しているようだ。

 今日はEランクのモンスターを狩る予定だが、念のためDランク、Cランクのモンスターも予習しておいた。
 ある程度、知識はつけたので後は実践のみだ。


 ◇


 資料を返し、町を出てしばらく歩いたところにあるフォルトリアの森にやってきた。
 生えている木は、大木ばかりで草木が生い茂っている。
 ゴブリンの森に比べると、少し薄暗くて、大きな森だなという印象を受ける。


 森に足を踏み入れると、すぐにワイルドボアが走ってきた。
 ワイルドボアは、視界に俺たちを捉えると急に進路を変えて突進してきた。

 鑑定を使い、ステータスを見る。

 種族:ボア族
 名前:ワイルドボア
 レベル:20
 HP:450
 MP:30
 攻撃:500
 防御:400
 魔力:70
 敏捷:400

 《攻撃スキル》
【突進:レベル2】

 《通常スキル》
【疾走:レベル2】



 ゴブリンより強く、ホブゴブリンよりは断然弱いな。
 これぐらいなら何とかなりそうだ。
 シャルのステータスは、防御面がかなり低いからなるべく俺が前線を勤めて、シャルに隙をついて攻撃してもらおう。



「俺があの突進を止めるから、その隙にシャルがワイルドボアを仕留めてくれ」
「分かった」


 ――《強化スキル》【身体強化】


 ステータスを強化し、突進してくるワイルドボアを剣で受け止める。
 突進を受け止め、ワイルドボアの動きが止まった。


「ぐっ、結構重いな。――シャル!今だ!」


「分かった」



 ――《職業スキル》【魔剣作成】



 シャルの手に持つ剣が魔剣に変わると、ワイルドボアに斬撃を叩き込む。
 柔らかいものを斬るかのようにシャルの魔剣はワイルドボアを一撃で斬り裂いた。


 《ワイルドボアが仲間になりたいようです。仲間にしますか?》


 脳内にいつのの声が鳴り響いた。
 しかし、ワイルドボアを倒したのはシャルだ。
 だが、仲間になるようなら仲間にしておこう。


 《ワイルドボアが仲間になりました》


 粒子となって消えたワイルドボアが再び現れると、シャルは珍しくビックリした声をあげた。

「わっ」


 その少し間抜けな表情が面白くて俺は「アハハ」と笑っていた。


「これがテイマーのスキル、テイムだよ」
「……凄い」
「俺が倒さないと仲間にならないと思ってたけど、シャルが倒しても仲間になるみたいだな」


『ご主人様、よろしくお願いします』


 仲間にしたワイルドボアが話しかけてきた。


『よろしくな、早速で悪いんだが、吸収してもいいいか?』
『もちろんです。どうぞ』


 意識共有は俺とワイルドボアの間でしか行われないようで、シャルは何をしているんだろうと首を傾げている。


「ああ、俺はテイムしたモンスターと会話する事が出来るんだ。もう一つ俺のスキルに吸収ってのがあって、それでコイツのステータスを俺のものにプラス出来る」
「……よく分からないけど、凄い」
「ハハハ、見れば分かるよ」


 吸収を使い、目の前のワイルドボアを取り込む。


「消えた」
「うん、こんな感じで吸収出来る。そして俺のステータスはワイルドボアのステータス分上昇する」


 種族:人間
 名前:アレン=ラングフォード
 性別:男
 年齢:16歳
 職業:テイマー
 レベル:16
 HP:1688
 MP:522
 攻撃:1521
 防御:1292
 魔力:557
 敏捷:1215

 《恩恵》
【獲得経験値上昇(小)】

 《耐性》
【痛覚耐性(小)】
【物理攻撃軽減】
【魔法攻撃軽減】
【状態異常軽減】

 《職業スキル》
【テイム:レベル2】
【鑑定(ステータス限定):レベル1】

 《攻撃スキル》
【ショルダータックル:レベル2】
【突進:レベル2】

 《強化スキル》
【身体強化:レベル1】

 《通常スキル》
【棒術:レベル1】
【剣術:レベル1】
【斧術:レベル1】
【槍術:レベル1】
【疾走:レベル2】

 《ユニークスキル》
【吸収:レベル1(MAX)】
【自己再生:レベル1(MAX)】
【意識共有:レベル1(MAX)】


 ――さぁ、どんどんモンスターを狩っていこう。

「不遇職テイマーの成り上がり 〜スキル【吸収】でモンスターの能力を手に入れ、最強になる〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く