元賢者の最強剣士 〜二度目の人生は自由に冒険者ライフを送る〜

愛犬ロック

第23話 ガチのお姫様だった件について

 影魔法は禁術認定されるほどの魔法だと俺は思っていない。
 拘束したり、相手の精神に攻撃を与えることが出来る魔法だが、それは格下相手にしか使えない。
 影魔法の魔術回路は、あまりに雑で欠陥が多い。魔法に安定性が欠如しており、拘束された場合は正しく魔力を流せば魔力回路を壊す事が出来る。




 足に魔力を集中させ、足下にある影に魔力を流す。
 すると……。




「あ、動けるようになりました!」
「なに!?」




 動き出した姫を見て、驚きの声をあげるお相手さん。




 さて、そろそろ終幕といこうか。




 ――結界魔法




 姫の周りに結界を発生させる。




「わっ!?何ですか、これ」
「結界魔法を使って、結界を作った。そこなら安全だから安心しろ」
「……結界魔法って、高名な魔法使いしか使えない魔法では?」
「最近は誰でも使えるようになったみたいだぜ(嘘)」
「そうなんですか。なるほど」




 あっさりと俺の嘘に信じてくれたようだ。


「――じゃあここらで終わらせるとするか」


 相手に向き直って、剣を敵に向ける。


「舐めるなよ、雑魚が」


 奴の周りに魔力のオーブが1つ……2つ……3つと漂っていく。
 5つになった魔力のオーブ。
 魔力を変形させた事によって作られたそのオーブは、中々のエネルギーを持つ。
 しかもそれを実行するには、かなりの技術がいる。
 本当にコイツ何者だ?


「ま、俺には及ばんがな」
「いつまでそう言ってられるかな?」


 5つの魔力のオーブが飛んでくる。
 それらを交わす……と、追尾してまた俺を狙ってくる。




「ハハハ、避けても無駄だよ。そいつらはお前が死ぬまでずっと追いかける」
「そうか。なら――」




 ――結界魔法




 自分の周囲に結界を張る。
 そして、結界にぶつかってきたオーブは、結界を破れずに消滅した。


「死ぬまで誰を追いかけるって?」
「――ッチ」




 舌打ちをして奴は、逃げていった。
 すぐに夜の闇の中に消えていき、一瞬のうちに姿が見えなくなった。
 追う事も可能だが、今は姫を家に帰らせる方が先決だろう。もう危険は無いだろうから結界を解く。




「ふぅ、終わったぜお姫様」
「……ノアさんって凄く強いんですね」
「そんな事ない。ただのBランク冒険者だ」
「Bランクって結構凄いですよね。見た感じノアさんって若いですよね?それでBランクってかなり凄い事じゃないんですか?」
「まぁ15歳だな」




 前世の年齢をプラスしなければ、だが。




「あ、私と一緒ですね」
「そうか」
「興味なさそうですね」
「そうだな」




 そんぐらいだろうとは思ってたしな。




「姫様ー!」


 そんな声が聞こえてきた。
 何だ、他にも俺みたいに姫と騎士ごっこをしているので奴がいるのか?


「あ、姫様!」


 鎧を身に纏った、本物のような騎士がこちらに近づいてくる。
 本格派だな。


「貴様、姫様に何をしている!」


 俺に向かって、槍を構える本格派の人。
 おいおい、人様に迷惑をかけるのは、ごっこの域を超えてるぞ。


「――キザン。その者は今日1日私を守ってくれた恩人です」
「はっ、これは失礼致しました!」


 そう言って、構えていた槍を下ろすキザンという名の人物。
 ……もしかすると、これって――。


「なぁ、姫。一つ聞いていいか?」
「いいですよ。ノアさん」
「お前って、本物のお姫様?」
「あ、バレちゃいました?」




 テヘッとベロを出す姫。




「いや、バレちゃいました?じゃねえから」
「おい貴様、姫に向かって何という口の聞き方だ」
「キザン良いのです」
「しかし……」




 何というか、退散した方がいい感じの雰囲気になってきたな。
 そろそろシンディの屋敷にも戻らないといけないし。




「で、姫ってことはそろそろ城に戻らないといけないんじゃないのか」
「そうですね」
「ええ、私が姫様を探しに来るくらいですからね。さぁ、帰りましょう」
「という訳です。最後にノアさんに私の名前を教えておきますね」
「秘密にしたかったんじゃなかったのか?」
「それは私の身分がバレないようにするためです。しかし、ノアさんにはバレてしまいましたから隠す必要もないのですよ」
「そうか、なら教えてくれよ」




 彼女は、ワンピースの裾を手で持ち上げ、優雅にお辞儀をした。




「ユーフェミア=フォルトテクナです。以後お見知り置きを」

コメント

  • 星夜神奈

    面白かったです続き楽しみに待ってます。(ありきたりなコメントですみません)

    0
  • ノベルバユーザー45107

    ユーモアがあり
    ミステリアスな
    主人公がとっても
    おもしろいです!

    こんなつまらないコメントで
    申し訳ないですが
    続きを期待しています!!

    1
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