元賢者の最強剣士 〜二度目の人生は自由に冒険者ライフを送る〜

愛犬ロック

第13話 さよならは言わない

「ノア君、報告には人間の言葉を話す変異種がいたと聞いたが」


 俺がシンディの護衛依頼を引き受けた後、ギルド長は俺に問いかけた。


「結構喋る奴だったな。言葉を教えた奴がいるのかと聞いたらコロセって言ってきたし」


「ふむ。では、今回の騒動は何らかの関与があった可能性があるかのしれんな」


 俺も同じことを思っていた。
 コボルトの変異種が率いているとしても200体のコボルトの軍勢が出来るだろうか。
 何か裏があるのではないかと、そう思ってしまう出来事だった。


 俺がギルドの本部に呼ばれたのもそれ原因だろう。
 少しでも情報が欲しいんだろうさ。


「それにしてもリリアは随分と大人しいな。お前は護衛依頼を引き受けたのか?」


 そう言うと、リリアは顔をあげて


「今、私に話を振ってくるな」


 と小声で言ってきた。




「ハハハ、リリアは私のことが苦手だからねえ。私はこんなにもリリアを好いているというのに」




 シンディはニヤニヤと笑いながらリリアを心境を見抜いているかのように話す。




「ふーん、まぁリリアは友達いないぼっちだもんな」


「誰がぼっちよ!……あっ」


 席を立ち上がり、条件反射のように俺に対して怒りを露わにするリリア。
 しかし、そのすぐあとに「やってしまった」というような顔をして席に座る。


 バカだろお前。












 その後、ギルド長から注意を受けたリリアを俺は内心笑いながら、適当な会話をして終了した。
 街を出るのは明日ということになり、アルレ達にパーティを抜けることを告げなければいけない。
 1日だけ、しかもまともな依頼をこなせないまま離脱ということになる。
 俺だけでなくリリアもか。
 そう思うと、何だか悪い気がしてくる。




 その日の夕食、俺たちは昨日のように食堂で集まった。


「昨日の件で王都にあるギルド本部に呼ばれたからパーティ抜けるわ」


 本題を後回しにするのは性に合わないので、俺はすぐに打ち明けた。


「え、まじ?」


 レンは、驚いた顔をして少し裏声混じりで言った。


「ああ、パーティに入ったばっかで悪いけどな。それとそこで黙ってるリリアも俺と王都に行く用事が出来たから抜けるっぽいぞ」


「ちょ、あんたね、人がいつ言おうか悩んでる事をいきなり言うんじゃない!」


「えー、リリアちゃんもパーティに抜けちゃうのー?寂しいなぁ」


「……まぁ、そうなんだよね。私ももっとこのパーティにいたかったわ」


「これで戦力大幅ダウンだなー。って言っても最初に戻っただけだけど」


 ハハハと笑うレン。


「仕方ないさ。二人にも事情があるんだ。それで二人は、いつ王都に向かうんだ?」


「明日の朝だな」


「そうか。じゃあ、今日で二人とはお別れか……。よし、じゃあ今日はパーっとやろうぜ!」


 一瞬悲しそうな表情を見せたアルレだったが、次の瞬間には明るい表情で場を盛り上げてようとしていた。


 そして、楽しい宴が始まった。
 俺とレンとアルレの男性陣は酒を飲み、誰が一番強いから競っていた。
 レンは初めて飲んだらしく、1杯でダウン。
 アルレは割と強そうだったが、5杯でダウン。
 俺は前世と同じように酒に強く全然酔わないため、酔うことはなかった。


 女性陣は、スズナがちょっと酒を飲むとリリアとイチャイチャし出していた。
 リリアは酒が飲めないらしく、スズナが一方的にセクハラしていた。
 それはもう、キャッキャウフフ空間が出来上がっており、これ以上ヒートアップするとマズイだろうなというところでスズナは寝た。
 スズナの酒癖悪いし、酒に弱すぎる。








 そして夜が明けた。
 早朝にもう王都に向けて出発する。
 この街エールケから王都まで行くには馬車で1日かかる。
 夜までにつくには早朝に出発しなければいけないようだ。
 昨日はみんな楽しんでいただろうから寝ているかもな。


「リリアはもう起きてたか」


 一階に降りると、リリアはもう既に準備を終えていた。


「ええ、姉さん待たせると怖いから」


「へぇー。お前ってほんとシンディが苦手なんだな」


「……姉さんは私に過保護すぎるのよ」


「よく分からんが大変そうだな」


 本当に苦手の理由がよく分からなかったが、相槌を打っておいた。
 きっと自立したい年頃なのだろう。


「じゃあ行くか」


「ええ」


 そう言って宿屋を出て行こうとしたとき、


「二人とも待ってくれ」


 後ろからアルレがやってきた。


「どうした。アルレ」


「俺たち、次会うときまでにはもっと強くなっているからさ。ノアやリリアに追いつけるように頑張るから、またパーティ組んでくれるか?」


 ……全く。
 俺が出会う奴は良い奴ばかりだな。


「ああ、勿論だ」


「そうね。またパーティ組みたいわね」


「ハハハ、まだ会って間もないのにこんなに別れが寂しいとは思わなかった。……じゃあな」


 アルレの目からは小粒の涙が流れていた。
 横を見ると、リリアも貰い泣きしているようだった。


「おう。またな」


 アルレ達とは、また出会う機会があるだろう。
 だから俺は、「またな」と言って宿屋を出て行った。



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