元賢者の最強剣士 〜二度目の人生は自由に冒険者ライフを送る〜

愛犬ロック

第12話 ギルド長からのお呼び出し

「今日は休もう」


 翌日、俺はアルレにそう言うと、昨日の疲れもあるしそうしようか、と素直に了承してくれた。
 今日の早朝にいつものように自己鍛錬に励んでいたら、懐が温まったのを思い出した。
 現在、約50万ペル所持している。
 それを少しパーッと使いたいのだ。
 俺は今日1日絶対に働かないと、このとき心に決めた。






 そういうわけで、俺は冒険者ギルドに来ていた。
 何故、冒険者ギルドに来ているかって?
 もちろん働くためではない。
 ギルドには働く以外で来る理由があるだろ?


 そう、酒だ。


 カウンターで酒を買い、適当な椅子に座る。
 木のジョッキを豪快に傾け、一気に飲み干す。


「ぷはー!」


 何となく、このぷはー!ってやるのが好きなのだ。
 この喉越しがたまらんよな。


「なあなあ、あんた昨日200体もコボルト倒したのか?」


 席に座っていると、同じ歳ぐらいの新人冒険者風な奴が話しかけてきた。
 受付嬢がデカイ声で騒いだせいか、結構噂になってるのかもしれんな。


「俺の格好を見れば一目瞭然だろ?歴戦の冒険者感が滲み出ているはずだ」


「いや、どう見てもただの新人冒険者だが」


「じゃあ、つまりそう言う事だ。新人冒険者がコボルト200体倒せると思うか?」


「うーん、確かに。じゃあ、あの噂はデマだったのか……」


「ああ、そうだ。あの受付嬢が大袈裟に騒ぎすぎただけだ」


「……ん?」


 あっ、これ失言だわ。


「じゃあ、やっぱり本当なんだ!」


「あー、まぁ、そうかもしれんし、そうじゃないかもしれないし」


「そんなに謙遜すんなよ!凄いぜアンタ。将来、有名な冒険者になるかもな」


 別に有名にならなくてもいいんだよなぁ。
 冒険者が有名になればどうなるかは知らんが、300年前は有名になればなるほど、国に利用された。
 国だけでなく民にも。
 全く、人をなんだと思っているんだって話だ。
 だから今世は何者にも縛られず、自由な冒険者ライフを送るのだ。


「そうか、一応ありがとうと言っておこう」


「……なんかお前変わってるな」


「知ってるか?男は少しミステリアスなぐらいがモテるんだぜ」


「なに!?それは本当か?よっしゃあ!良いこと聞いたぜ。俺もお前を見習って少しミステリアスな感じ出してみるわ!じゃあなー!」


 ……なんて単純な奴なんだ。
 そんなにがっついてたらモテるもんもモテないと思うぞ。
 名前も知らない新人冒険者よ。




 その後、俺はたこ焼きをつまみに酒を飲んでいた。
 3杯目に差し掛かる時に受付嬢がこちらにやって来た。


「ノアさん、ギルドにいらしたんですね。ギルド長が呼んでいますので、ギルド長室に向かってください」


「あーはいはい。分かった。ところでギルド長室ってどこだ?」


「あちらに見える部屋がギルド長室です」


 受付嬢は、手で方向を示して教えてくれた。
 窓口の横にあるようで、結構目立つ場所だった。


「サンキュー」


 そう言って、俺は席を立ち上がった。
 ギルド長からのお呼び出しか……。
 十中八九、昨日の事だろうな。
 何聞かれる事やら。






 ギルド長室のドアを開け、部屋に入る。
 中には、三人の人間がいた。
 筋肉質の中年の男。
 真っ白な肌に綺麗な金色の長い髪をした女。
 そして、リリア。
 なぜお前がここにいる。


「呼ばれたらしいんで来たが、なんだこの集まりは」


「ふむ、君がノア君か。昨日の報告は聞かせてもらったよ。大活躍だったそうじゃないか。私は、この街のギルド長を務めているグラファルトだ。よろしく頼む」


 中年の男は、いかにも偉そうな落ち着いた声で話す。
 やはり、と言うべきかコイツがギルド長なようだ。




「へぇー。で、そっちの金髪のお嬢さんは?」


「ノア君、初対面の方に失礼とは思わないのか?こちらの方はな……」


「グラファルト殿、良い。私から自己紹介をする」


 金髪の女は、華奢な腕をギルド長の前に出し、話すの辞めさせた。
 ……へぇ。
 どうやら、この女がこの部屋で一番の大物のようだな。


「私は、シンディ=ハーツ。ハーツ商会の商会長をしているわ。今日、私がこの場に同席しているのはあなたとリリアに依頼を頼みたいからよ」


 ハーツ商会……ねぇ。
 商会の名前なんて知らないし、規模がどれくらいの商会か全く分からん。
 それに依頼を頼みたいだと?
 しかもリリアと一緒に。
 何でだ?




「依頼?話が読めんな。今日、俺が呼ばれた理由は何なんだ?」


「それは私が説明しよう」


 今度はギルド長が口を開いた。
 そういえば、リリアは何も喋ってないな。
 チラッとリリアの方を見てみると、俯いて下を向いている。
 表情は髪で隠れていて見ることが出来なかった。


「昨日の事を王都にある冒険者ギルド本部に伝えたところ詳しい事情が聞きたいらしい。そこでノア君には王都に向かってもらいたいのだ。そこでシンディ殿も王都に向かう予定があり、せっかくだからノア君とリリア殿を護衛に雇おうという訳だ」


「いや、そこで何で俺とリリアが出てくるんだよ」


「あれ?ノア君は知らなかったのかい?パーティメンバーだから知っていると思ったんだけどなぁ……。まぁいいや。リリアは私の妹なのよ」


 ほう、シンディの妹がリリアなのか。
 確かにいわれてみれば、顔付きは似ている気がする。
 てか、あんたさっきの口調と全然違うぞ。


「で、妹をどうして護衛に雇おうってんだよ」


「そうだねえー。リリアは冒険者になるって家を出て行ったから寂しくてね。まあ簡単に言うとリリアが可愛いから雇ってるのよ」


 なるほど、妹が好きすぎるわけだ。
 いや、納得したわけではないが、これ以上話を聞くのもめんどくさそうだ。


「それは分かったが、俺を雇おうとする理由は何だ?俺はFランクの新人冒険者だぞ?」


「君がFランクの新人冒険者だから、かな。私、人を見る目はあるのよ。これから名を挙げるであろう人に先に交流関係を築こうとするのは商人として基本よ」


 シンディの目は、自分の目に狂いはないとでも言っているように自信で満ち溢れている。
 何を言っても無駄そうだな。




「俺は功績を挙げて有名になろうとするつもりは微塵もないが、それでもいいなら引き受けてやるよ」


「あら、それは有難いわ。よろしくね」


 凄いあっさりと決まってしまった。
 どの道、誰に頼まれなくても王都には結局行くことになるのだろうから、依頼を受けること自体は特に嫌ではない。
 だが、ギルド本部に顔を出さなきゃならんってのがめんどさそうだ。





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