とある物書きの辛口批評

蒼風

2.『レベル1ヘタレ冒険者とレベル999呪いの黒ウサ人形  解除になる鍵は何処かにいるはず僕の運命のお嫁様ーー!!(いねぇよ!)』著:オズ ジャンル:異世界ファンタジー(No.003)

自分がこの企画をやる際に気を付けている事が幾つかあります。その一つが「非商業である事を意識する」という事です。分かりやすく言えば「商業じゃないんだからその分多めに見ることがあってもいいんじゃない?」っていう発想です。だから、若干迷った時には大体良い方を選んでいます。それでも切り分けるべき所はきちんと切り分けていますが。

お茶を濁しても仕方が無いので本題に入りましょう。本作は「商業と同じ基準」を用いた場合Cより下に分類される可能性がある話です。ただ、決して悲観するような事では無くて、実の所「最終的な到達可能点」という事で見ると、Cというランクは寧ろ、Bランクより上になる物も多いという事をここに述べておきます。Bでも「形綺麗だけどそれだけ」という作品は幾らでもありますので、その辺りは念頭に置いてもらえたらなぁと思います。

さて、作品の話。まずは良いところから行きましょうか。この作品は異世界ファンタジー、その中でもコメディ寄り(シリアス、コメディの二極を置いて考えています)の作品です。
自分は余り異世界ファンタジーを読まない(アニメでも見ない)ので、あまり偉そうな事は言えないのですが、色んな作品を読んで、参考にしているんだろうなぁというのが良く伝わってきます。この企画で読んだ作品では今の所、一番「ライトノベル」や「Web小説」っぽい作品になっていると思います。やっぱりweb小説やライトノベルの読者というのは得てして「それっぽい」作品を求めていることが多いので、そういう層にジャストフィットする、という点では良いのではないかなぁと思います。

また、内容面。自分は「ギャグというのはある程度合う合わないがある物」という持論を持っています。それなのであまりギャグが良い悪いを論ずることはしない様にしているのですが、少なくとも「何一つ笑えない」という物は駄目じゃないかなぁという気がするんですよね。

その点この作品は良かった。琴線に触れる物も触れない物もある、という感じでした。正直有名なギャグ漫画『ギャグマンガ日和』でも「そうでもないなぁ」という回は存在します。それくらい感性によるところが多いギャグで、琴線に触れるものがそこそこの頻度で有った、という事は良いんじゃないかと思います。

後、これは悪いところにも繋がってくる話ではありますが、「いいな」というキャラクターが居た。これはいいと思うんです。キャラクターに関しては「よくできてるけど全然いいと思えないキャラばかり」という作品も中には有ります。その辺りは結構センスが大きく関わってくるような気がするので、「いいな」と思えるキャラクターが居るというのは明確なプラスポイントかなぁと思います。

さて、ここからが「改善すべきだな」と思った点です。でも、ネタバレ出来ないので余り細かくは言えません。きっと読んだ人や作者さんには分かると思うんだけど。

まず一つ目……と、言うよりはほぼここが全てな気もするのですが、ストーリー構築です。

全体としての所謂起承転結。これは出来ています。最終的に何もかも丸投げ、という終わり方にはなっていません。たかが起承転結ですが、世の中にはこれをおろそかにした作品が非常に多いので。

さて、それなら何が問題なのかと言えば、「結」の着地点、でしょうか。もっと言えばその前からの作り方、という方が分かりやすいかもしれません。

この手の話が持つ性質上、基本「一番大きな問題」に関しては最後の最後まで解決しません。そして、個々の話で起きたイベントに関しても、大団円という解決はまずありえません。知名度の高い作品で例えるならば「こち亀」の両さんが最後には絶対失敗するのと同じ原理です。基本的にこの手の作品における主人公は「3歩進んで2歩下がる」的な形で話が進んでいくんです。

本作はそこから考えると「3歩進んで2歩下がって、更に穴に落ちる」という感じの話になっていて、そこが個人的に凄く気になりました。ちょっと前に最終話が完全にバッドエンドだった『くまみこ』というアニメが有りましたが、あれと同じ方向性にベクトルが向いているようなそんな気がするんです。要は「もうちょっと主人公報われたほうが良くない?」っていう話。現実そんなに簡単じゃないといえばそれまでなんですが、やっぱり創作なんですからちょっとでも前には進んでてほしい訳なんです。読み手としては。

もうひとつは世界観。と言っても世界観そのものが問題という訳ではありません、こっちに関しては寧ろ良く出来ているなぁという感心が先行します。ではどこに問題点があるのかといえば、その広げ方。

本作は現段階で完結済みとなっています。だから、ここから話を展開しない、という前提条件で行きますと、正直開示しなくていい情報が結構あるなぁという感じ。

勿論、この続きの話が広がっていけばそこについては語られるでしょうし、そういう前提で作っているんだと思います。

ただ、そうだとしてもやっぱり「これは後に出したほうがいいんじゃない?」という情報が有ったように思います。この一篇でやるべき事はシンプルに書くと「主人公が呪いに関して何らかのトラブルに遭い、最終的に解決する(ただし全体としては余り前進してない)」という事です。だから、そこに絞って情報を出していくという事も必要なのかなぁと。やっぱり読み手というのは「作品の情報は何らかの形で使われるだろう」と思いますし。

とは言え、必要不可欠分以外をそぎ落としたらそれはそれで面白くないので、この辺りはバランス感覚なのかなぁとも思います。メインの筋と、そうでないサブの筋をきっちりと分けて書く、という意識でしょうか。

と、そんな訳で良い点と悪い点、でした。正直悪いところは紙一重という部分も多くて、抽象的な意識の問題として指摘するよりも、具体的な内容について指摘したほうが分かりやすいような気もします。この辺りは公に出す批評としての限界点かなぁ…。

色々書きましたが、世界観を初めとして、良い部分も多いです。余り触れる事はありませんでしたが、黒ウサの設定もいいと思います。

後はその異世界コメディ的な話をよりブラッシュアップして言って貰えればいいのかなぁと思います。

最後になりますが、自分が知る限りだとこの手の作品で一番完成度が高いのは『この素晴らしい世界に祝福を!』だと思いますので、まだ読んでいない様であれば読んでみる事をお勧めしておきます。ただ、正直、これの完成度がかなり高いので、あまり「寄せよう」とは思わない方がいいかもしれません。あくまで「異世界ギャグ」の参考として、という事で。


(作品URL:<a href="https://kakuyomu.jp/works/1177354054881346934">https://kakuyomu.jp/works/1177354054881346934</a>)

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