とある物書きの辛口批評

蒼風

5.『脳電子《ブレインウェイク》虹彩は最後まで輝く。』 著:いーすと ジャンル:SF(No.016)

SFです。その中でも、近未来世界を描くタイプの作品です。


余り良い前置きが思いつかないので、本題に入りましょう。まずは良いところがふたつ。


ひとつめは、その世界観。より正確に言い表すのであれば「作中に出てくるオリジナルの用語」でしょうか。冒頭から色んな用語が出てきますが、それらはよく考えられていると思います。


勿論、作品そのものが長くない事も有って、その全貌を見ることは出来ません。ただ、本作は短編という事もあり、多くの用語を開示するわけにはいかないという部分もありますし、その辺りは問題ないと思います。


ふたつめは、ストーリーが綺麗に纏まっているという部分。本作は、上にあげた通り、きっちりとした世界観が組まれたSF作品です。ですが、短編とするにあたって、それらの用語や、細かな秘密を全て書くことは出来ません。


それらを良く理解した上で、「シナリオの長さに沿った情報開示」が良く出来ているな、というのが個人的な感想です。短い中で、世界観について必要な部分をきちっと伝えて、それ以外の存在もちらつかせ、その上で、起承転結も「小さな起承転結」に纏めている。これは単純なようで結構難しい事なので、それが出来るっていうのは良い事なのかなと思います。


で、それらを踏まえた上で改善点がふたつ。


ひとつめは「世界観と尺の相性が悪い」という所でしょうか。


本作は世界観まで細かく設定が考えられた作品です。しかし、それらは全て「現代社会」には無い物です。なので、それらがどういう機能を持っているのか、主人公達の思考はどうなっているのか。そういった事を理解するのには時間がかかります。


何が言いたいのかと言いますと、これだけの世界観を理解してもらうのに、短編という尺は不向きなのではないか、という事です。


作品そのものの構造としては間違っていません。複雑な世界観も、決して全部を開示することなく、必要な部分のみを見せて、ストーリーを展開させていきます。その部分は上手いと思います。


でも、やっぱりこれだけの設定と世界観なので、読み手はそれを「咀嚼」する時間が必要になります。例えば、同じ用語が何度も登場しているうちに、「あ、そうかこれはこんな感じの意味を持っているんだな」という事がしっくりくるようになっていくんです。本作は、それが吸収しきれない内に話が展開している。そんな印象を受けました。ネタバレが出来ないのでぼかしますが、「ヒロインの特殊性」に関しても、世界観に関する認識がもうちょっと浸透していれば、より驚くことが出来ると思うんです。


とは言え、ストーリーその物は問題ありません。読了感も悪くないと思います。それなので、話の基本線はそのままにして、世界観がより浸透する様に、もう少し長い話にすると、より伝わりが良くなるのではないかと思います。


ふたつめは「世界観とシナリオの関係性」です。よりざっくり言ってしまうと、「この世界観である必要性が無い」という事でしょうか。具体的な内容は書けませんが、この作品の起承転結。それと世界観が上手くくっついていないような、そんな印象を受けました。
勿論、どんなファンタジーだろうと、枝葉の部分を取り除いて行けば現実世界の作品と変わらない、という事はあります。ただ、本作はそれ以上に「世界観」と「シナリオ」が馴染んでいないような感じがあるんです。多分、ひとつめにあげた尺の問題とも関係してるとは思うのですが。


色々書いた上に、何だか漠然としていますが、世界観は凄く良く出来ていると思います。シナリオその物もきちんとできています。なので、その二つをがっちりと噛み合わせる事、要は「感情移入」させる事が大切になって来るのではないかなぁと思います。


(作品URL:<a href="https://kakuyomu.jp/works/1177354054883950746">https://kakuyomu.jp/works/1177354054883950746</a>)

          

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