とある物書きの辛口批評

蒼風

2.『私の大切な人』著:壱足壱 葉弐 ジャンル:現代ドラマ(No.014)

本作は異世界転生で有りながら、現代ドラマです。矛盾しているように思えるかもしれませんが、間違いではありません。そもそもジャンル分け自体が大概曖昧ですしね。


で、本題。異世界転生、とは書きましたが、作品の概要にもあるように、舞台となっているのは異世界転生した人間が「元居た世界の方」です。それは当然存在しているはずの世界なのですが、どこか「要らないモノ」として扱われてきた、そんな場所。そこにスポットライトを当てたという事が面白いと思います。


異世界転生に限った話ではないのですが、流行りの作品や作風で、どこか棄却された部分に注目したり、同じ作風でもちょっとスタンスを変えるというのは、ウケる作品を書く上でとても重要な事だと思うんです。


それに加えてキャラクターの描写。これが良く出来ている。ファンタジー作品のように、完全に非現実世界を描いている作品だとそんなに気にしなくても良いところなんですが、半現実世界(と自分は勝手に呼んでます)の作品だとこの辺りが結構重要になってくるんですよ。


もしもタイムマシンが出来てしまったらどうなるか、みたいな話も、個人だけではなく、世界で取り合いになる、と言った解釈があれば、ぐっと現実感が増すものです。ネタバレになるので作品名は伏せておきますが。


と、基本的には良い作りをした作品なのですが、気になる点を二つほど。


一つは伏線。と、言っても決して張れていない、回収しきれていないというレベルの話ではありません。


問題になってくるのはその「薄さ」でしょうか。伏線そのものはきちんと張られていますし、回収もしていると思います。ですが、その伏線が少し「薄い」かなぁという感じが個人的にはしました。


勿論、気が付かなくてもいいレベルの仕掛けを作るという事はあると思います。ただ、そのタイプの伏線を使う場合、何度も何度も繰り返し織り込んでいかないと、印象に残らないという可能性があります。本作の伏線に関して言うならば、「残らない」という事はないのですが、少し「残りにくい」ような感じがしました。勿論、やりすぎてしまうと一気につまらなくなるものではあるんですが、特に重要な部分だけはもう少し印象に残る張り方をしたほうが良いのかなぁと。


もう一つは、人間関係の話。本作は「カクヨム甲子園」に参加している作品ですので、その枠を考えると、文字数的にまだ若干の余裕が有ります。


なので、その文字数を使って人間関係に関しての描写をはめ込むと良いのではないかと思うんです。勿論、基本的な部分はオッケーだと思います。なんですけど、特に主人公の最後の選択を考えた時、もう少し彼ら、彼女らの人間模様が見えていると、より納得が行くんじゃないかなぁと思うんです。既にあったら済みません。でも、気になって何度か読み返してるので多分無い……ハズ。


ちょっと本編からは逸れるのですが、キャラクター一人一人について、きちんと語ろうとすると、案外時間がかかります。大体ラノベなんかを見渡してみると分かるとは思うのですが、キャラクター個人についてスポットを当てた話を書くと、概ね一冊、つまり十万文字は消費しているはずです。


何が言いたいのかというと、二万文字で描ける人間模様というのは、実はすごく少ないんだ、という事なんです。その上で感情移入を誘うとなると、恐らく主人公とヒロイン(という事にしておきますが)の二人が限界なんじゃないかなぁというのが個人的な見解です。
勿論、キャラクターを出す事自体は問題ないと思います。でも、その中でスポットを当てられるのはせいぜい二人位なのかなぁと。


だから、主人公、そしてもう一人のヒロイン。その二人にスポットライトを当てるようなイメージで書いたら、よりぐっとくる作品になるんじゃないかなぁと思います。


色々書きはしましたが、最初の世界観。そのチョイスが凄くいいです。ここに行きつけるのとそうでないので、相当差があります。なので、その視野の広さみたいなものを、もっと活かせたらいいんじゃないかなぁと思います。


(作品URL:<a href="https://kakuyomu.jp/works/1177354054882532321">https://kakuyomu.jp/works/1177354054882532321</a>)

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