違法利用との接し方-「漫画村」騒動から得るべき事とは-

蒼風

2.「無料で読む」は本当に「盗人」なのか?

次に行こう。恐らくこの部分が一番「間違った理解」をされているところである。つまり「何故グレーなサイトを利用するのか?」という部分だ。ここに関して、概ねの意見は「その手のサイトを使ってるやつは皆、盗人と同じだ!」という理屈だと思う。断言しよう、この考えがそもそも大きな間違いである。


では、どこが間違いなのか。まずは「グレーなサイトを使っている」という部分である。この「使っている」は一体どこからどこまでを指すのだろうか。ここの線引きが非常にあいまいなのだ。もし「サイトに一度でもアクセスし、そこにあるコミックスや雑誌に、少しでも目を通した人間」だとするならば、自分もさっき利用した事になる。なんなら大多数の漫画家や、これらに対して文句をつける出版社の人間はもっと見ているかもしれない。勿論それは「実態調査」という意味合いで、作品をタダで読んでやろう、という魂胆では決してない。


こういう事を書けば間違いなく「そんな物を利用したと一緒にするな!」と言い出すだろう。


じゃあ問題だ。有る人が漫画を買おうか悩んでいた。しかし、近くには漫画を読んで確かめられる書店がない。運悪くネットで確認する事も出来ない類の作品だ。そうなると彼/彼女は、実際に作品を確かめてから買う事が出来ないことになる。さあ困った。そんなときに無料サイトの存在を知る。これはいい。彼/彼女は飛びついて、「買おうかな」と思っていた漫画の一巻を数作品読み、その内幾つかの作品はネットで大人買いした。数日後漫画は届き、彼/彼女は満足した。そんな事があったとする。


この場合、彼/彼女は漫画を数冊分、ただで読んでいる。そして、その内の幾つかは、作家に金銭的収入が入らなかった。つまり、作品をタダで読んだ事には変わりが無い。これは問題なのだろうか?


さらに突き詰めよう。彼/彼女が漫画を読み漁り、結果として「読んだ一巻以外を購入した」としたらどうだろうか?もっと言えば「読んだ上で、一作品も購入しなかった」らどうだろうか?これを盗人と言うのだろうか?どんどん行こう。もし彼/彼女が適当に漫画を読み漁っていて、その中で特に優れていると思った作品「だけ」、大人買いして、大事に本棚に収納したら、これは盗人だろうか?


ここまで来ると何となくわかるかもしれない。無料サイトを「利用している」人間全てを「盗人」呼ばわりする事は、非常に怪しい理屈なのだ。勿論、中には最初から金など払うつもりではなく「無料で読みまくってやる」と思っている人間も中には居るかもしれない。恐らく、これに関しては「盗人」という扱いを変えないだろう。正直な所、これに対して擁護をするつもりはない。しかし、糾弾をするつもりもさらさらない。彼/彼女らに対しては次の項で触れていきたい。



【ざっくりポイント纏め】
・グレーなサイトを「利用している」の基準が曖昧過ぎる
・「盗人」呼ばわりする基準もかなり曖昧である
・「盗人」と言われるような人間ですら擁護/糾弾する気はない
・この事については次項で解説する

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