違法利用との接し方-「漫画村」騒動から得るべき事とは-

蒼風

3.「場」の考え方-皆高いと思ってる-

さて、前項から話を引き継ぐ前に、ひとつ、漫画から離れた話をしたい。最終的にはきちんと関係のある話だから安心してほしい。


自分も各用語の名称はやや怪しいのだが、以前に「場」の考え方、という物を教わったことが有る。正式な用語や、細かな事が気になる人は各自で調べてもらいたい。自分はそこについては語らない。


重要なのはその中身である。説明していこう。
まず、中学校や高校の授業を思い出してほしい。科目は何でも……あ、体育は駄目だ。座学に限定させていただきたい。


その教室に何人の生徒がいるかは分からないが、仮に40人いたとしよう。その全員が背筋を伸ばし、授業に集中しているだろうか。恐らくだが、そんな事はまずないだろう。ちゃんと集中している人間も居れば、注意力散漫だけど、一応授業に参加している人間も居るだろう。その一方で、授業を聞く気が無く、漫画を読んだりゲームをしたりしている人間も居るだろうし、寝てる人間だって居るだろう。その様相は様々だ。


で、その光景。恐らく「思い浮かべる授業」によって違うのではないだろうか。大体一年に一つは有る物だろう。40人中半分近くが睡魔との戦いに敗北して、撃沈しているという光景の授業が。これは一体どういう事なのか。考えるまでもない。「眠くなる授業だった」のだ。それはもしかしたら「つまらない」かもしれないし、何なら教師の声が何となく「眠気を誘う」かもしれない。色んな可能性が考えられる。


そして、その「寝ている生徒」は「教室に居る全員の無意識が現れたものだ」。そう考えるのが「場」の考え方なのだ。つまり「何人も生徒が寝ている授業」というのは、実は寝ていない他の生徒も、多かれ少なかれ「眠気」を感じているだろう、という考え方なのだ。


ちなみに、寝ている生徒が多い時にはどうするのか、というと、その「眠い」という感情を皆で共有するのだそうだ。つまり教師自ら「何か眠くない?」と、その「場」に「眠気を感じている」という事を共有するのだという。その後実際にちょっとストレッチなども行うと言っていた気がするが、録音したものでは無いので分からない。


かなり横道にそれたが、話を漫画の事に戻そう。つまり「漫画を読む人たち」という「場」を想定した場合、「無料サイトで読む」という行為の隆盛は、「もっと安く漫画を読みたい」だとか「もっと手軽に漫画を読みたい」という潜在意識の表れなのではないだろうか。そうういう事を言いたいのである。


ここで、漸く前項の話を引っ張ってこよう。前項では「端から漫画を無料で読んでやろう」としている、盗人思考」の人間を糾弾するつもりはないと言った。その理由がここにある。


つまり「彼ら/彼女ら」は「漫画読者」という大きな場の潜在意識の表れなのではないか。そんな気がしてならないのだ。何だか突拍子もない話だと思ったかもしれない。無理もない。だって証拠など何もないのだから。しかし、断言しよう。この理屈で行った方がよっぽど楽なはずだ。


これについても余り書くつもりは無いのだが、グレーなサイトで読んでいる人間を撲滅し、正規で買ってもらう。そんなものは夢物語なのだ。勿論、そこに近づけていくことは出来るだろう。しかし、余りにも不毛だし、労力に見合っていない。そう言わざるを得ないのだ。そんな消耗をするくらいなら、違う形を模索するべきだし、その選択肢として「場」の捉え方は一つの道なのではないかと思う。



【ざっくりポイント纏め】
・「場の考え方」という物がある
・「授業中に寝ている人間が多い授業」は「寝ていない人間」も皆「眠い」と思ってる
・それを「場」に共有するのが解決の糸口
・「無料で漫画を読む人間」は「漫画読者」の潜在意識が現れた物ではないか
・決して終わらない戦いを挑むよりは、こちらの方がよっぽど建設的である

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