Lost Film

いのまん。

Film№4 置き手紙とエルダー・サンタ



彼の姉の名は日瑠星ひるせ 美來みくる
県外の名門進学校に通う高校3年生。
弟の言うには彼女は成績優秀、運動神経抜群で絶世の美女らしい。
まさに「立てば芍薬しゃくやく、座れば牡丹ぼたん、歩く姿は百合の花」なのだそうだ。
(いや、すぐるよ、お前はシスコンでもあったのか…)
高校に入ってからは毎日、福祉委員の仕事で地元の高齢者施設に通っていた。
普段から家では、おじさま方のために折り紙や手毬てまりなどを作って配っていたらしい。




そんな彼女が五日前、ある手紙を残して姿を消した。
その手紙には、

すぐる、私は今から少し野暮用に行ってきます。これは私が決めたことです。5日経っても戻ってこなかったらその時は、ここの住所に向かいなさい。少し変な相談・・・・も聞いてくれるから、きっとあなたに力を貸してくれるわ。美來みくるより。」

と、手紙の裏にはここ(刻ノ神クロノスタ探偵事務所)の住所が記載されていた。
(変な相談って…こいつ、ここに来たことがあるのか?)

「あの、ここにはこう書いてあるんですけど、僕の姉にはお会いしたことがあるのですか?」

と、すぐるは俺に話をもちかける。
俺も気になっていたところだし、適当に答えて、へスティアさんへパスを回す。

「いや、少なくとも俺はないが。へスティアさんは?」

「んー。私は依頼人の名前なんていちいち覚えないからなぁ。顔を見ればわかると思うけど…」

「うちはねぇ…」

と、部屋から戻ってきたフォルティーナが反応しかけたところですぐるは話を切る。

「あ、いえ!あなたたちには無いみたいなので大丈夫です。」

「えー!なんでよ〜、私の話も聞い…ぶふぉっ!」

これからやかましくなると思い、フォルティーナの口を瞬時に手で塞いだ俺は話を続ける。

「あぁそうか、君には分かるのか。便利な能力だな。」

「はい!でも、一年以上先はぼやけてよく見えないんですけど…ね。」

「いや、十分だろ。」

と、話している間、俺はフォルティーナの口を強く塞いでいることを思い出してぱっと手を離す。

「ぶぱぁっ!ちょっと何すんのよ、いきなりー。あー、死ぬかと思った〜。」

「すまん、すまん。忘れてた。」

「うそだ〜。」

そんなこんなで事情は全部聞き終えたので、俺は壁にかけてあったコートをひらりと担ぎ、こう言った。

「まぁ、情報はこのくらいで十分だろう。百聞は一見にしかず。実際に会う方が手っ取り早いだろ。」

「えっ。姉に会うんですか?」

「そうだ。6日前の朝で良いだろう?その時彼女はどこにいたか覚えているか?」

「え、えーと…朝は学校に出る前だから家にいたと思います。」

「そっか。じゃあ、行ってくる。」

と、俺はフォルティーナを呼んで外へ出て行った。
それをへスティアさんは笑顔で送り、すぐるはずっと首をかしげていた。

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