自害阻止スキルと自然治癒スキルを与えられた少年は、異世界転生からリタイヤ出来ない!

goro

伝言



夜が明けた、その次の朝。
カフォンは熱を出した。

アーチェからは精神的な不安から来たものだろうと告げられ、神宿とカルデラはこの日、二人だけで学園へと向かう事となった。









クラスが違うこともあり、カルデラと別れた神宿が自分の教室へと向かうべく廊下を歩いてしていた。
だが、そんな時だった。




「おい、トオルってやつはお前か?」




そんなぶっきら棒な発言と共に、目の前の道を壁で塞ぐかのごとく、数人の群れを作った男子生徒たちが神宿の前にやってきた。
そして、その場にいた生徒たちの視線から神宿たちに集まる中、リーダーらしき男が口を開き、



「…………」
「面、かせよ」



ーーーーこうして神宿は彼らに言われるまま、共にその場を後にするのだった。






そして、連れてこられた場所は、人通りの少ない死角の多い学園の校舎裏だった。


「…それで? 要件っていうのは何なんだよ」


校舎裏にやってきた神宿は今、数人の男たちに囲まれている。
しかし、そんな危機的状況の中でも神宿は臆することはなく、群のリーダーらしき男に対し、そう言葉を向ける。

「何、俺たちの雇い主様が随分とお前の事が気に入らないらしくてな。だから潰して来いって言われたんだよ」

男が発した言葉から察するに、おそらくその雇い主というのはギアンの事だろう。
目を細める神宿はその雇い主に関する情報を聞き出すべく、口を開こうとした。

だが、






「後、カフォンとかいう女も、俺たちで遊んでいいって言われてるんだよ」







その瞬間。
神宿の思考がピタリと止まった。



「俺のオモチャだから勝手に使え、って雇い主様がそう言ってくれたんでなぁ、ここにいる奴らもうずうずしてんだよ。早くお前みたいな弱ちぃ奴を片付けて、遊びたいってよぉ」


男がベラベラと会話を続けていく中、周りにいた男たちも同様に笑みを浮かべていた。

「なんたって廃貴族なんだろ、その女? だったら、もう何の権力もないただの壊れたオモチャじゃねえか」


貴族としての権力もない、だから壊れたオモチャと男は言う。

そして、そんな会話を続ける中、未だ一言も喋らない神宿に顔を近づけ、

「なぁ、どうする? お前も良かったら一緒にその女で遊ぶか?」
「…………」
「生きてる価値のない、ガラクタなオモチャと遊ぶ感覚で」



そう言葉を続けた。
ーーーーその次の瞬間だった。


「!?!?!」


その時、その場に鈍い音が鳴り響いた。
それは、神宿が振り下ろした拳が男の顔面に直撃した際に鳴った音だった。


「ぐあッ!?!?」


悲鳴と共に鼻から血を出し倒れる男。
周りにいた仲間たちがその光景に驚き、そして、神宿に対して怒り見せる。

だが、


「……ああ。そうだな。だったらそのオモチャで遊んでやるよ」


神宿の体に突如として緑のオーラ。いや、風の魔法が纏われる。
そして、更にその両手に水の魔法が形成される中で神宿は、




「まぁ、遊ぶのは、お前らみたいなクソ野郎のガラクタに対してだけどな」




怒りの形相を露わにさせながら、そう言葉を言い放つのであった。














そして、一限目の授業が始まった頃。
廊下で起きた一件を聞きつけたカルデラは急ぎ授業すら無視して走っていた。

走る最中で、数少ない情報の中、神宿たちが校舎裏へと向かって行ったという話も耳にした。


カルデラは荒い息を吐きながら走り続け、


「トオル!!」


やっと思いで、神宿が連れて行かれたであろう校舎裏に辿り着いた。

「!?」

ーーーーーだが、そこには、




「いって……!」
「ぁ、ぅ……っ」
「っ…………」




周囲に巻き散るようして、倒れる男たちの姿があった。
その起点となった場所には二つの爆発が起きたような痕が地面にくっきりと残されていた。

だが、そんな状況中で今まさに危機的状況に陥っている者がいた。

それは群のリーダーだった男だ。


服のあちこちに擦り傷がある中、男は校舎の壁へと追い詰められ、


「や、やめて、くれ……た、頼む」


そう怯えた声を滲み出している。
だが、その男に向けれた武器は終われようとはしなかった。

何故なら、その手に風の弓と水の矢を構え、今まさに弓矢を放とうとする男。
怒りの込めた瞳で男を睨みつける神宿の姿があったからだ。


「…ま、って」
「………」
「トオル!!」

いつもの彼女か知る彼とは明らかに雰囲気が違う。
カルデラが止めるように叫んだ。
しかし、その瞬間。


「!!」


神宿の手から水の矢が放たれ、それは男の顔面。

「うぅわわわわわわっ!?!?!?」

その頰すれすれを通り過ぎ、後ろの壁に水の矢は突き刺さった。




「っ、はぁ、はぁはぁ、はぁ、っ!」



あまりの恐怖にその場に座り込んでしまう男。だが、そんな男に対し神宿は早歩きで近づき、その胸ぐらを掴み上げる。

「ひぃ」

そして、

「…お前の雇い主ってやつに、伝えろ」

神宿はその男に向けて、伝言を言い放った。





「やるんだったらお前が出てこい、ってな」




その言葉はこの場にいない彼らを差し向けた雇い主。
ギアンに向けた言葉だった。



伝言を伝え終えた神宿は無造作に男を突き放し、そして目の前にいるカルデラの横を通り過ぎながら去っていく。

一瞬茫然とした様子のカルデラだったが、

「っ、あ、ちょっと!?」

遅れて気を戻し、神宿の後を追いかけて行った。







だが、その心の内で、カルデラは一つの事柄に対して驚きを隠せずにいた。

それはいつも見ていたものがまやかしだったのでは思いかけたほどに、

(……トオル)

神宿の表情は、怒りに満ちていた…。



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