自害阻止スキルと自然治癒スキルを与えられた少年は、異世界転生からリタイヤ出来ない!

goro

忠告






カルデラによって、保健室に連れられていったカフォンはその道中で意識を失い、今ベットに横たわっていた。


「っ…ぅ…」
「カフォンさん……」

まるで悪夢を見ているかのようにうなされるカフォン。
そんな彼女をカルデラはただ見守るしか出来ずにいた。








さっきまでの騒動が落ち着き、休憩時間となった今。


人目のない校舎裏で、神宿とアーチェは大賢者ファーストから事の経緯を聞かされている最中だった。

あのギアンという男とカフォンの関わり。
そして、彼女の屋敷にまつわる経緯を…



「…と、いうわけじゃ。まぁ、妹のルティアの方はまだ大人しい方なんじゃが、兄の方はろくでもない奴らしくてな。金や権力で好き勝手に女を弄んでは捨てる、はっきり言えば最低最悪のクソガキなんじゃよ」
「…………」


まるでその現場を見てきたかのように話すファーストはその間、髪色を桜色に変え、宙に浮く魔道書を開きながら話を続けていた。
だが、そこで、パタンと魔道書を閉じ、


「じゃが、更にたちが悪いのは自分に仕えている部下を使って闇討ちをする件についてじゃ」
「闇討ち?」

それは数分前、神宿を暗殺しようしていた魔法使いの事だろう。
さっき流れから見て、あのような行為を行ったのは一度や二度ではないのだろう。


「反対する者が現れれば、その者、もしくは関係のある者たちに被害を与え脅迫する」
「…………」
「そして、この学園においての生徒の力不足もコヤツらが原因だったのじゃ。……アヤツらが、学園の授業方針に対してケチをつけ、また反対する者たちを次から次へと消すよう動きを見せた」


学園長であるガークから聞かされた内容を思い出すファースト。


「…そんな一連の事件が何件も続いたからこそ、生徒たちの身を守るためにガークはアヤツらの条件を了承したんじゃよ」




学園に通う生徒たちのレベル低下。
カフォンとギアンの関わり。

そして、自身の手を汚さず、他人を傷つける悪質な行為。



少ない休憩時間の中、ファーストからそれらを聞かされた神宿は大きく息を吐く。

「アイツがクソ野郎だってことはわかった。……けど」
「わかっておる。後はアヤツらの親の事じゃろ? ……はぁ。まぁ、言ってしまえばアヤツらの父親。サーギルという男は言わば影に隠れた武器商人なんじゃよ」


武器商人。
その言葉にピクリと先に反応したのはアーチェだった。

「師匠」
「まぁ、待て。一から話す。……アヤツにはこれといって魔族や人族たどかの境はなく、誰彼構わず平等に武器を手渡して、中立な立場に居座っておるのじゃが…」
「?」
「この平等の中に、王族貴族も含まれておってな。早々簡単に手出しができんのじゃよ」


王族貴族。
人々が敬意や恐怖を示す言葉だ。


「この世界において、魔族の進行は今も継続して行われている。そんな中で、防壁、または反撃に使われておるのがこの男の武器なんじゃが」
「…ん? って、そんな奴だったら普通先に狙われるじゃ」
「そう。武器の元となるやつを消せば武器の輸入は間違いなく滞り、人間側の攻撃力は確実に減るじゃろ。じゃが、コヤツはそれを見越して魔族側にも武器を提供し始めた。…それで、己の身を守っておるのじゃ」


互いに関係を作ることで、己の身を守る。

その手に武器がある一方で、頭脳に長けた男。
それがサーギルだったのだ。



ーーーーそして、そういった理由があったからこそ、



「…というわけじゃから、闇討ちはするなよ」
「うっ!? ぇ? 何がですかー?」


大賢者ファーストは自身の弟子であるアーチェに忠告をしたかったのだ。

神宿が狙われた、その事実だけで今も密かに殺気を隠し纏う彼女に対して…

「…し、師匠」

神宿のジト目が向けられる中、


「ち、違うからね、トオルくん!? ねぇ!お願いだから、信じてー!?!?」


アーチェは一人、そんな嘆き言葉を叫ぶのであった。





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