自害阻止スキルと自然治癒スキルを与えられた少年は、異世界転生からリタイヤ出来ない!
鬱憤ばらし
薄っすらと意識が戻る感覚がある。
続けて周囲からは薬品独特な臭いがする。
「……ん」
微かな声を漏らし、神宿が目を開けるとそこは保健室の一室。
その天井だった。
(なんで、ここに……)
体を起こしながら、そんなことを考えていると、鼻っ柱に小さな痛みを感じた。
顔をしかめ、鼻に手を当てる神宿。
と、ーーーーーーそこで、ふと神宿の記憶が戻ってきた。
(あ、そうだ。確か……師匠に)
ボールによる顔面打撲。
防げたと思った、その不意をついた一撃。
いやいや、流石にあれは避けきれないだろう、と思う神宿だったが、
(ってか……なんで師匠のやつ、あんなに怒ってたんだ?)
そんな、とぼけたような疑問を頭に浮かべ、一人首を傾げるのであった。
そして、その頃。
それは昼が少し過ぎたあたりの時間帯。
誰もいない校舎の屋上にて、
「それじゃあ、今から修行を倍にするのじゃ」
と、宣言する大賢者ファースト。
ーーーーそして、
「「……………」」
その言葉に、意気消沈する二人の少女。
カルデラとカフォンの姿がそこにはあった。
ちなみに大賢者の後ろでは、白い植物で体を雁字搦めにされるアーチェの姿があったが、それには目線を合わせないようにして…
「これから学園は当分の間、昼までの授業となる。…まぁ、皆バテバテじゃったからな。あれ以上積み重ねても仕方がないというのが学園の方針なんじゃが」
その言葉通り、学園の授業は昼までで終了し、生徒たちは皆下校していった。
その大半が、フラフラな状態だったのだが、
「あ、あの〜、そ、それだったら、私たちも…」
「ちなみにワシから言わせればヌルすぎるぐらいなんじゃがな。修行するなら、一晩あっても足りんくらいに、ん? なんじゃ?」
「ぁ……ぃぇ」
カルデラは、もう何も言えなかった。
というか、これ以上何かを言えば、色々ととんでもない目に遭わされそうで怖かった。
「そういうわけで、仕方なくワシの鬱憤晴らせでお主らを鍛えようと思う。じゃから覚悟するのじゃぞ?」
「ちょ!?」
「今、鬱憤って…」
ジリジリと近寄ってくるファーストに怯える二人の少女。
そんな彼女たちを眺めながら、アーチェは一人思うのであった。
ーーーーーーが、頑張って、と。
「いやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?」
ーーーーーーかくして、大賢者直伝地獄の訓練メニューを受けさせられるはめになったカルデラとカフォンは……その数時間後。
「………」
「………」
まさに、陸に上げたれた魚のように、ピクピクと痙攣した状態で、倒れ落ちるのであった。
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