自害阻止スキルと自然治癒スキルを与えられた少年は、異世界転生からリタイヤ出来ない!

goro

ヒント




その後からはーーーそれはもう地獄だった。

驚異的なスピードで迫ってくる魔力弾(魔力を纏ったボール)何とか避ける神宿。
そして、その被害に合う内野含めて外野にいた生徒たち。



まさかに、死屍累々といった光景が目の前に広がっていたのだから…。




「あ、アイツ…凄いよな…」

離れた場所で試合を観戦していた生徒の誰かが、そう言葉を呟いた。
というのも、最初の頰に掠った一撃以降、神宿は全てのボールを全部擦れ擦れで回避していっているのだから。
ーーーーだが、しかし、


「いやいや、そんな事より…あの女子だよ…怖えーよ…」


その言葉通り、生徒たちに恐怖を植え付けたのは、無茶苦茶な威力でボールを投げまくることアーチェだった。

まるでボーリングのピンのごとく吹き飛ばされ、涙満開で山積みとなる生徒が後を絶たない。
しかも、さらに凄いのは当てたボールが、そのあまりの威力によって跳ね返り、彼女の手元へと戻っていく始末なのだから…。


ーーーーまさに、手がつけられない。
はっきり言って彼女オンリーで試合が継続しきっていたのだった。





「はぁ、はぁ、はぁ」

それから数分後。
しばしの沈黙が落ちる中、全身びっしょりと汗を流しながら荒い息を吐く神宿。
対するアーチェは未だ息一つ乱していない様子だ。

ーーーとはいえ、


「な、なぁ? そ、そろそろ…や、やめに、しないか?」
「んー? どうしてかなー?」
「いや、だって…お、お前ん所の外野、ほぼ全員ノックアウトしてるし」


その言葉通り。
神宿が避けた結果、次々と内野含めた外野の数も減っていったのである。

おもに、吹き飛ばされて…だが…。
後、数人逃げたのも含めて……。


そして、その結果。
もう神宿とアーチェの二人しか、その場に残っていなかったのだ。


ーーーだから神宿は、


「それに、外野まで飛んでいったボールとか拾うのも…大変だろ? だから」


ここで終わりにしよう。
ーーーーそう、神宿は言おうとした。





だが、その時だった。

ーーーパチン! というアーチェが指を鳴らした音と共に、ビュン!! と、内野全体を覆い包む透明な結界が張られ……



「………え?」
「うん、これで飛んでいく心配はなくなったよー? それじゃあ、始めようー? トーオールーくーん?」



そうニッコリ笑うアーチェ。
……ああ、これ…完璧に逃げ場を無くされた。

……もう死ぬんじゃね? と神宿はそう心の中で悟った。




ーーーそんな時だった。




『聞こえるかー? 小僧ー?』




その直後。
神宿の頭の中に、突然と大賢者ファーストの声が聞こえてきたのである。

「なっ」
『馬鹿たれ、口に出さず心の中で喋るのじゃ』
『っ!?』

直ぐ様、口を紡ぐ神宿。
そんな彼の反応を待たずにして、ファーストは言葉を続けていく。


『流石に見ておられんと思ってな、ワシ自らが少し助言をしてやろうと思ったのじゃ』
『(っ、何が助言だよ、そもそも)』
『なんじゃ? いらんのか?』
『っ!? いる!いる!!』

慌てて心の声で叫ぶ神宿に、ファーストは小さく笑い、更に話を続けていく。


『それじゃあ、一つ助言を授けてやるから、よく聞くのじゃぞ?』
『お、おう』


そして、アーチェに気取られないよう視線を前に向けながら話を聞く神宿。
そんな彼に対し、ファーストは言った。





『お主から見て、アーチェの体にどうなっておる?』





………ん? と眉間をしかめる神宿。


『は?』
『いや、だからどうなっておるのかと、聞いておるのじゃ』
『…え、いや………どうなって、って…ち、小さく』
『そうじゃない。ワシが聞いているのは、アヤツが体に纏っておる魔力が何色に見えるのかと聞いておるのじゃ!』



体に纏う魔力という部分は分かる。
だが、魔力の色? という部分が分からない。

今まで言われたことのない質問に対し、余計なワケがわからなくなる神宿。
しかし、大賢者ファーストは、




『目を凝らして集中して見るのじゃ。そうすれば、次第に見えてくる』




そう言って、なおも同じ言葉を送ってくる。


神宿は半信半疑な気持ちのまま、目を凝らしながらアーチェの全身に視線を集中させた。
ーーー後、何故か顔を赤らめながら体を縮こまらせるアーチェの姿もあったが、現状それどころではない神宿は気にすることなく意識を集中させた。



そうして、その数秒ほど見つめた時。


ーーそれはまるでボヤが掛かったオーラのようなものが見え始めた。
そして、その色も……


『あ、赤……かな?』


そう、神宿が見つめた先にあったもの。
それは、体全体には半透明な赤いオーラを纏わせるアーチェの姿だったのだ。



そして、そんな神宿の言葉に対し、大賢者ファーストは口元を緩ませながら、


『見えたなら上出来じゃ。…後はお主で考えろ』
『なっ!?』
『後、アヤツが得意なのは炎の魔法じゃ。ーーーそれがワシがお主の送る最大のヒントじゃ』


そう言い残し、彼女は言葉を切るのであった。


コメント

  • goro

    AZAMIさん、コメントありがとうございます!!
    こちらこそ、よろしくお願いします!!

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