自害阻止スキルと自然治癒スキルを与えられた少年は、異世界転生からリタイヤ出来ない!
ケジメと言伝
それから数日が過ぎた頃。
ついにーーーーマーチェが帰ってきた。
神宿に対して重大な言伝を抱えつつ。
そしてーーーー重大な頭を抱えつつ。
「「……………」」
神宿の住む学生寮。
そのとある一室には、正座する男、マーチェと他に、そんな彼を心配そうに見つめる神宿とカルデラの姿がある。
そして、少女カルデラはよそよそしくも、そんな彼に声を掛け、
「ま、マーチェ? そ、その…お、お帰りなさい」
「はい、お嬢様。マーチェ、ただいま帰還しました」
「え、ええ。ご、ご苦労様……でなんだけど…ま、マーチェ?」
「はい、何でしょう?」
そして、尋ねた。
「その、頭……ど、どうしたんですか?」
ーーーーそれは、見事なまでの、坊主だった。
キュキュピカーン! と磨けば光るのではないかと思うぐらいのつるっぱげだった。
「いえ、これは私自身の罰へと証なのです」
「あ、証…」
「はい、お嬢様のお父上にも言われました。お前は罰を受けなくてはならない、と。色々処罰を受けましたが、それでも足りないと思った私は」
「か、髪を全部、切っちゃ…たってこと?」
「はい」
そうキリッとした顔で告げるマーチェにカルデラは物凄く可哀想な顔を神宿に向けてくる。
(こっちふるなっ!?)
神宿もまたげんなりした様子だった。
カルデラは顔を振りつつ、気を取り直して会話を続ける。
「ねぇ、マーチェ。それ、お父様にも見せたんですよね?」
「はい」
「そ、その…お父様はどんな感じで」
「そうですね。ゴホンゴホンと何度も咳払いをされ、私とは目を合わせてくれませんでした」
そりゃあそうだろう、と思う神宿。
「そ、それで、お、お母様の方は」
「何度も私を見つめ…あ、そういえばお父上と少し揉めてもいましたね。確か、貴方のせいよ! などと」
「……………」
その言葉で、決まりだった。
何に対してと聞かれれば、それはもちろん事、カルデラの母親が何故あんなものを寄越した、に対してだ。
「…カルデラ」
「…はい」
神宿に促され、短く返事を返す少女。
カルデラは手元にあったカバンからあるものを取り出し、ゆっくりとマーチェの目の前まで近づいた。
ーーーーそして、ソレを乗せた。
そう、それは以前のような、フサフサの頭《カツラ》を真似るようにーーー。
「それで、トオル様」
髪《カツラ》復活を遂げたマーチェは、神宿に向き直りつつ、声を掛けてくる。
現在、この場にはカルデラの姿はなく、
『ごめんなさい、マーチェ!』
と涙を流して席をたってしまったのだが、
「お嬢様のお父上から、ある言伝を抱いておりまして」
「よし、それじゃあ解散しようか」
「聞いてもらわなければ、後々後悔する事になると」
「っ!? ちょっ、怖いこと言うなよ!?」
若干遠回しに脅され、席に戻った神宿は嫌々ながら話を聞くことにした。
確かに目をつけられる理由としては、カルデラを助けた一件も一つとしてあるだろう。
だが、それ以上に何かをやった記憶もなく、またラッキースケベ等といった、ヤラシイ事もしていない。
だから、きっと大丈夫だろうとーーーー
「お嬢様のお父上より、近日中に決闘せよとのお達しが」
「俺、お前ら貴族皆んな嫌いだっ!!」
ーーかくして、神宿は再び貴族の決闘に巻き込まれる運命にあるのであった。
「なぁ! 貴族って皆んなこうなのか!? どれだけ決闘が好きなんだよっ!! そんなに暴れたいなら、どっかの暴れ牛とかでもと戦っとけばいいだろっ!?」
「トオル様、決闘とは本来。人と人とでやるもので」
「真面目にツッコむなっ!!」
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