自害阻止スキルと自然治癒スキルを与えられた少年は、異世界転生からリタイヤ出来ない!

goro

自害阻止スキルの特性



自害阻止スキル。
命の危機において、オートで発動するスキル。
だが、その効力はといえば物凄く扱いづらいものだった。

というのも、あれから三日が経つ中で神宿はその力の詳細を深く知ることができたからだ。



…まぁ、連日運悪くもモンスターと出くわし、二、三回と死にかけた経験のおかげでもあるのだが……。






異世界にやってきて二日目が経った。

そして、昨日に続いてこの日。
神宿自身、運がないのか再びモンスターと遭遇してしまった。
しかも、今度のは狼のような姿をしたモンスターときた。

「にげ、られないよな…」

足の速さで勝てないのは、見るからにわかっていた。
神宿は唾を飲み込みながら、逃げることをやめ、戦うことを選んだ。

幸いにして初日にモンスターと対峙していた経験のおかげもあって心も落ち着いている。
剣や盾もある、装備は十分だ。
ファンタジー的に戦ってやる、と神宿は意気込んだ上で戦いに挑んだ。

だが、


「ぐわっ!?」

そう、現実は甘くはなかった。
狼のモンスターにスピードで負け、押し倒され、腕やら足など至る所を噛まれる。
そして、今度こそ死んだ、と神宿がそう思った直後、

『キャン!?』

再び自害阻止スキルが発動し、モンスターが後方へと吹き飛ばされた。

その光景を見た神宿はその時、自身のスキルでもある自害阻止スキルの特性に小さな疑問を抱く。

(もしかして、俺が『死ぬ』って思ったから発動したのか?)

これまで自分の死を悟った時に、スキルが発動されている。
もし、仮にその考えが正しいだとすれば。

「………」

試す価値は大いにある。

擦り傷を負いつつも体を起き上がらせるモンスターを神宿は見つめながら、意を決して前に向かって走り出す。

(普通に考えれば、わざわざ殺されにいくような行動だよなっ!)

そして、神宿がそう内心で思った直後。

「!?」

読み通り、神宿の眼前に再び魔法陣が現れ、それはまるで盾のように役割を果たしている。


「ッ、やあーッ!!」


盾がある分、気持ちにゆとりを得た神宿は掛け声と共にモンスターに剣を振り下ろす。
しかし、素人の剣筋は空を切るようにモンスターに難なく攻撃を避け、無防備となった少年よ横腹めがけ大口を開け突進してきた。

だが、その直後。

『ガゥ!?』

神宿の正面に展開されていた魔法陣が突然と宙を移動し、モンスターの攻撃を防いだのだ。
これには神宿も驚きを隠せなかった。

だが、その防いだ後のモンスターの反応はというと、何故か物凄く軽かった。
ついさっきまでの跳ね返しが嘘だったかのように、モンスターが再び体制を整えれ立ち上がろうとしている。

「何でーー」

神宿が、そう疑問を声に出した。
しかし、その時だった。



「っあッ!?」



それは丸腰に等しいほどの油断だった。

神宿は、背後から忍び寄ってきたもう一体のモンスターに気づけず、仲間であろう狼のモンスターは牙を剥き出しにさせ、神宿の足に噛み付いたのだ。


「ぐぅあああああああああーっ!!!」


神宿の悲鳴が轟く。
それは、激痛によって押し出された少年の叫び。
だが、こんな村や町もない森林の中では誰の助けもこない。


そう、ただ待っているのは集まってきたモンスター二体による獲物の捕食のみ。


「っがーーっ!?」

仲間が集まり、二体のモンスターは神宿を捕食しようとする。

痛みによって溢れ出る涙と嗚咽。
そして、神宿の意識がブレた、と同時に肉体が悟った。


ーーーーー自身の死を。





その、直後だった。



バンッ!!!! という強大な音と共に、神宿に襲いかかっていたモンスターたちが同時に左右後方に吹き飛ばされ、近場にあった岩や木に衝突する。
まるで今までの痛みをそのまま跳ね返したように、モンスターたちの意識は一瞬にして飛んでしまった。



荒い息を吐く神宿は痛む体がもう一つのスキルで回復されていく中、再度目の前に展開された魔法陣を見上げる。

最初に発動された魔法陣比べ、今発動されているそれはより強い光を発している。

思いの強さ。
それをそのまま表現しているようであり、


(ああ…これって)


神宿は痛む体を起こしながら、ようやく自身のスキル、その特性を理解することができた。




女神が与えた自害阻止スキルは言わば、感情で発動するオート型のスキルだった。

しかも、その感情が強ければ強いほど、より強力な魔法が発動する、それが自害阻止スキルの特性だったのだ。
さらにタチの悪いことにこのスキルは、人間の深層心理に強く結び付けられているわけであり、

(俺が死のうと思っても、体が死にたくないって叫べば発動する、ってわけか…)


狼のモンスターに襲われ、死にそうになった瞬間、神宿が内心で思うよりも早く体が死を強く拒絶した。
そして、それに反応してモンスターを瞬殺してしまう魔法陣が展開されてしまったのだ。


その名の通り、自害阻止スキルというわけなのだが、


「………」


人間を深くしてっている神だからこそ、与えられるチートスキル。




神に踊らされてる、という言葉があるが、まさにその通りだなと思う神宿なのだった。



「自害阻止スキルと自然治癒スキルを与えられた少年は、異世界転生からリタイヤ出来ない!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • ノベルバユーザー601496

    他の作品では見たことのないスキルに目が点になりました。
    気になったので時間が出来たら面白いのでまた続きを読みたいです。

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