或る観測者の手記

ogura

邂逅

ヴェネツィアの朝は早い。
海に浮かぶ監獄を有したこの島は、刑務所として機能する一方で、南方や異国との闇取引の場として深夜早朝は栄えていた。
純粋な産業だけでは人々は暮していけず、場を提供し黙認する事で彼らの暮らしは守られていたのだ。

ベアトリーチェは揺られる船の上で霧に包まれた牢獄の島をその翆の瞳で見つめていた。
霧が濃く絶好の条件だ。



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品