これが我が一族の能力【鎌倉時代編】

葉月櫂斗

プロローグ-5

「楽しかった」



あのあと。
キミと平泉の町を散策してまわった。



あの頃のあの時の話をせずに。


楽しかったとはしゃぐ明里は年相応だと思う。



いや。
年相応より少し?
いや、かなり?幼く見える。



その姿がとても愛しくて仕方ない。



「明里。お風呂入る前に夜景見に行きませんか?」
「夜景?うん!行く」




しばらくして。
夕飯の時間らしく部屋に運ばれてきた。




「魚、すっごく美味しそう」
「明里に喜んでもらえて嬉しいです」



キミは食べる時は美味しそうに食べる。
見てるこっちが嬉しくなるように。



そういえば愁一郎さんも言っていましたね。
キミは美味しそうに食べると。
作ってくれた人に感謝するかのように。





************



「明里、そろそろ行きましょうか?」
「うん!」
「……またそんな薄着で」
「えー寒くないよ!」




キミは寒いのに何故か着込むというのをしない。



「せめて、これ着て」



セーターぐらいは着て。
キミが風邪ひいちゃうから。


旅館から歩いて15分。


目的地に着いた。




「うわぁー慶士、みて。すっごいきれい」


そこはまちを見渡せるぐらいにきれいだった。
今の時期は夜景がきれいにみえる。
前にいた学校の修学旅行の時に偶然見つけた。



「喜んでもらえて何よりです」
「明里。大切な話があります」
「何?」
「明里これを受け取ってくれませんか?」



俺は婚約指輪を渡す。



「これって」
「そうです。明里、あの時はできなかったけど……」
「俺と結婚してほしい」
「……いいの?私、慶士のお嫁さんになって」
「あの時は頼朝殿がいたから言えませんでした。あの時も本当はキミを俺のお嫁さんにしたかったんです。明里、俺の家族になってくれませんか?」




明里は俺に抱きついて。





「返事は決まってるよ!私、慶士の家族になる!」




元気いっぱいに返事してくれた。
キミはこれからも俺が守りますから。



「でも指輪つけてたらみんなに言われちゃうね」
「俺はつけておきますよ。明里は学校にいる時は外していて構いません」



キミと婚約したなんてバレたら担任から外されちゃいますから。

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