カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

普通のゲームを夢見て

次の日の朝、2人の殺し屋に見送られ、出発した私たちは、木の葉が青々と輝く森の中を歩いていた。

最初にエンプラットに向かった時は、ルテケト湿原という湿地帯を越えたが、湿地帯がエンプラットから見て南の方向にあるのに対し、この「クーゴの森」は北の方向にあるのだ。

このまま南下して、エンプラットを目指す。前回とは正反対のルートである。

「遠回りにはなるけど、まりちゃんにとってはこっちの方がいいでしょ?」

Tellさんがそう言って、上を見上げると、まりちゃんは背の高い木々の枝を軽々と飛び移って見せた、

「はい、こんな大自然の中で思いっきり動き回れるなんて、夢みたいです!」

「遊びすぎて落ちるなよ?」

「大丈夫ですって!」

「ビュンッ!!……ビュンッ!!……」

どんどん上に昇っていく……これ落ちたら死ぬ高さだよ……?

「すごい身体能力ですわね、」

「きっと元々の素早さのステータスが高い状態でスポーンしたんだよ、スポーン場所が悪かったから今まで発揮出来なかっただけで、」

出てこれて良かったな、まりちゃん、

「ビュンッ!! シュタッ!!」

まりちゃんはゆっくりと着地した。木々の枝を階段のように飛び移りながら降りてきたらしい。

「もうアスレチックはおしまい?」

「ちょっと、腕が疲れちゃったので……」

戦う前から疲れてどうする……

「よくあんな高いところまで登れましたわね、わたくしはポンちゃんがいないと前が見えなくて、木の枝なんて飛び移れないですわ 」

ちなみにそのポンちゃんは高所恐怖症である。

「こここ……怖くなかったですか……?」

ポンちゃんの震えながらの質問、

「怖くなかったですよ、落ちそうになった時は、しのさんが助けに入ってくれていたので、」

いたんだ、あの木々のどっかに、しのが、

「それにしても随分木が多いですね、なぜこの森をルートに?」

「マップを見てると、この近くにダンジョンがあるみたいだったからさ、行きたがってたろ?」

「はい、行ってみたいです!」

「この先にあると思うんだけど……なっ!?」

森の中を突き進み、開けた場所に出た私たちは、ほかの小さな木々を押しのけるように生える、巨木を目にした。

「こんなところにあったのか、知恵の大樹ちえのたいじゅ

「知恵の大樹……? どんなものなんですか?」

「知恵の大樹は、エリアのあちこちに設けられているエリアだ。必ずどこかのダンジョンへと繋がっていて、ボスを倒すと、ゲームクリアへのヒントが得られる。確か、そんなものだったよな?」

Tellさんの言葉を受けて、ナヴィエが続ける、

「ええ、このゲームのマップは広大です。プレイヤーの方々が、ゲームクリアへの道が分からなくなって、迷ってしまわないように、幾つかこのポイントを設けてあります。」

「ではこれが……そのひとつなのですわね……」

「ダンジョンの反応があったから来てみたが、まさか知恵の大樹だったとは……」

「この大きな木が、ダンジョンなんですね、どうやったら入れるんですか?」

まりちゃんは乗り気だ、不思議な形のダンジョンに物怖じしていない様子である。

「そのまま手を触れれば入ることが出来ます。」

「分かった、行ってみようか、」

木の近くまで来ると、目の前にウィンドウが表示された

『ダンジョンへと入りますか?』
『ダンジョン名 : 知恵の大樹』
『消費スタミナ : 20』

「ゴゴゴゴゴ……ドゴォッ!!!!」

地響きがして、大樹は地面の土の塊ごと、空中へと浮かんだ。

地面にはぽっかりと穴が開き、穴の奥から白い光が漏れている。

私たちはその穴の中へと飛び込み、やがて大樹が地面に戻ったのか、入口は閉ざされてしまった。




しばらく長く暗い道を歩いていると、広い部屋に出た。

「ビガッ!!!」

「わぁっ!!?」

部屋は急に明るくなり、部屋の全貌が見えた。

真四角の立方体型の部屋、地面には不思議な紋章が描かれている。

「知恵の大樹は、3つの巨大な部屋によって構成されています。それぞれの部屋にいるモンスターを全滅させることが出来れば、次の部屋への扉が出現します。」

かなりシンプルな構造だな、

「ケケケケ……!!」

モンスターたちの笑い声が聞こえたかと思うと、目の前の空間にぽっかりと穴が空いたようにポータルが現れ、中からモンスターの群れが現れた。

「ゴブリン系統のモンスターか、種類も数も多いな……」

中には斧や剣、銃などを扱う者もいた

「ここは、わたしに任せてくれませんか?」

まりちゃんが前に出る、

「わたし、ずっとモンスターと戦いたかったです。しかも、こんなに沢山のモンスターと同時に戦えるなんて、夢みたいです。」

「1人で大丈夫ですの……?」

「はい、独り占めしたいので、皆さんの手出しは無用です。」

「モンスターはポータルの奥に隠れている者も含めて100匹居ます。全員倒せば次の部屋に進めます。」

ずっと夢だったモンスターとの、100人組み手が、スタートした……

「ウシャァァッ!!」

「はぁっ!!」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品