カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~
秘密の手紙
その日から私たちは、ひたすら連絡を待ち続けた。もう一度Tellさんのお父さんに会えることを願って……
しかし、私たちが待ち焦がれた連絡は、期待していた内容とは大きく異なるものだった。
「親父が……消えた!?」
セキュリティスタッフの一員が、Xekioの使者として待ち合わせ場所にやって来た。しかしそこにはGENNさんの姿は無く、告げられたのは、「GENNさんが忽然と姿を消してしまったこと」だった。
「恐らく、脱走されたものと思われる。幽閉施設からは2人の人物の脱走を確認した。1人はGENN、もう1人は、JHARIBANだ、」
「……JHARIBANか、」
ここでもまたJHARIBANさんだ、GENNさんを救い出してくれたことはとてもありがたいことだが、GENNさんがまた、私たちを襲ってくるかもしれないと思うと、素直に喜べないところもある。
GENNさんと話をしたかったのは、Tellさんと仲直りして欲しかったからだ。そうすれば反撃の意思が無いことが分かり、安心して助け出せると思った。
「余計なことをしてくれたね……」
しのがそう言った。確かに、JHARIBANさんには、私たちの安全が確保されるまで、もう少し待っていて欲しかったな……
でも、JHARIBANさんは良かれと思ってやってくれたんだし……
「まぁでも、私は喜ぶべきことだと思いますわ、お父さんが開放されたんですもの、見つけ出せれば、会って話して、仲直りも出来ますしね?」
「そうかもね、ポジティブに考えることも出来るかもしれない。」
NARIELさんがそう言ってくれたおかげで、しのもJHARIBANさんを悪く思わないですんだみたいだ。
「それで、俺たちはどうすればいい?」
Xekioの使者は、重く口を開いた。
「残念だが、こうなった以上、そちらの要求を飲むことは出来ない、取引も中止だ。」
交渉決裂ってことか……
「連絡は以上だ、GENNに会いたくば自分で探すことだな」
使者は去っていった……
「これからどうしようか、」
「まずは、まりちゃんに会ってみませんか?」
「まりちゃんに?」
「はい、昨日、まりちゃんに聞いたんです。昔JHARIBANさんに戦闘を教わったことがあるって、」
「そうなんですの?」
私も最初に聞いた時には驚いた。彼女とJHARIBANさんには接点なんてないと思っていたのに、
「お師匠さんが脱走したって分かれば、喜んでくれるかもしれない。行ってみよう、」
「えっ!?  師匠ってセキュリティにつかまっていたんですか!?」
まりちゃんに知らせを伝えると、すごく驚いたような顔をしていた。
「うん、セキュリティというか、セキュリティを操っている影の組織見たいのが居て、そこに捕まってたんだよ、JHARIBANさんが地上に戻った後に、」
「地上の世界で、武器屋をひらいたという話は、きいておりました。でもそこから、つかまったなんて話は1度も……」
まりちゃんはふと、思い出したように数枚の手紙を取り出した。
「師匠とはなればなれになったあとでも、よく師匠から手紙をいただいていたんです。」
「ライムから聞いてんだろ? 俺たちに届いた手紙の話、」
「このこと、ライムやナヴィエには内緒な、」
そういえば、鍛冶屋JHARIBANにいたあの二人も、JHARIBANさんからの手紙を受け取っていたっけ、
「でもほら、この手紙とこの手紙には、JHARIBANさんのいらっしゃる場所が書いてあるじゃないですか?」
確かに、「いまはルテケト湿原にいる、」「エンプラットの町に来ている」など、自分の居場所を伝える文が最初に来ているようだ。
「でも、このあたりから、居場所がどこにもかかれてなくて、へんだなとは、思ってたんですけど……誰かにつかまってたなんて夢にも……」
手紙にはまりちゃんを心配する内容や、自身の近況などが連ねられていたが、敵に捕まっていた時と思われる、「居場所のない手紙」では、近況を伝える内容の文章は少なくなっている。
自分の大変な状況を悟られないためだろうか? それともまりちゃんを退屈させないためだろうか? 
手紙の最後には決まって、なぞなぞのようなものが添えられていた。
「哲学者の『ゴール』ってな~んだ?」
それが分からないから哲学者は頭を悩ませているというのに……
「そうだ! 昨日もとどいていたんです、これが一番あたらしい手紙です。」
一番新しい手紙にもなぞなぞが添えられている。
「『A12 A22 A32 A42』これな~んだ?」
もはや暗号の域である……
「この最後のなぞなぞって?」
「最初は、私を楽しませようとしてくれたものだと思ってました。けれど、敵につかまっていたことを考えると、私に対するなにかの暗号だったのかもしれません。ただ、昨日届いたこの手紙だけは、まだ解けていなくて……」 
確かに、A12A22などのように、アルファベットと数字が並べられていて複雑だし、今までのとはかなり傾向が違っている。
「ほかは解けたのかな?」
「はい、今までのは、読んだ瞬間にはもう分かってたんですけど、」
すごいな、子供は大人と違ってすごく頭が柔らかい、こういうなぞなぞは大人よりも子供の方が早く解けるものである。
「これが、一番古い手紙だよね? 『哲学者の「ゴール」ってな~んだ?』……」
「それは、『キルケゴール』です。デンマークの哲学者にキルケゴールっていう人がいます。」
子供でも大人でも難しいんですけど……
「じゃあこの、『笑わないと呼べない家族』は?」
「母です。『ハハ』って笑わないと呼べません。」
「じゃあ次、『水が集まって出来た「花」』は?」
「桐の花です。『霧』は、空気中の水滴が集まってできているから、」
「じゃあこの、『神様がいればいるほど、本数が多くなるもの』は?」
「柱です。神様は『一柱、二柱』と数えるからです。」
すげえ……本当に一瞬で解いちゃった……
「そして最後……A12~A42だけど………」
法則性は分かる。A1の後に必ず「2」が付いて、Aのすぐとなりの数字が1ずつ増えていく、そして最後は「4」……
「……もしかしたら、これまでのなぞなぞの答えがヒントになっているのかもしれない。」
「どういうことですか?」
「Aのすぐ隣にある数字は4で止まっていて、なぞなぞも4問出されただろ?」
「はい、確かに、」
「恐らくこのAは『アンサー』のAだ、1問目の答えから、4問目の答えまでの『上から2文字』までを繋げて読む、これでなにか文章が完成してたりしないか?」
「なるほど!やってみます!」
これまでのなぞなぞの答え、「キルケゴール」、「母」、「桐の花」、「柱」から、2文字ずつ取り出して並べる……
出来上がった文字列はこうだ。
『きる はは きり はし』
しかし、私たちが待ち焦がれた連絡は、期待していた内容とは大きく異なるものだった。
「親父が……消えた!?」
セキュリティスタッフの一員が、Xekioの使者として待ち合わせ場所にやって来た。しかしそこにはGENNさんの姿は無く、告げられたのは、「GENNさんが忽然と姿を消してしまったこと」だった。
「恐らく、脱走されたものと思われる。幽閉施設からは2人の人物の脱走を確認した。1人はGENN、もう1人は、JHARIBANだ、」
「……JHARIBANか、」
ここでもまたJHARIBANさんだ、GENNさんを救い出してくれたことはとてもありがたいことだが、GENNさんがまた、私たちを襲ってくるかもしれないと思うと、素直に喜べないところもある。
GENNさんと話をしたかったのは、Tellさんと仲直りして欲しかったからだ。そうすれば反撃の意思が無いことが分かり、安心して助け出せると思った。
「余計なことをしてくれたね……」
しのがそう言った。確かに、JHARIBANさんには、私たちの安全が確保されるまで、もう少し待っていて欲しかったな……
でも、JHARIBANさんは良かれと思ってやってくれたんだし……
「まぁでも、私は喜ぶべきことだと思いますわ、お父さんが開放されたんですもの、見つけ出せれば、会って話して、仲直りも出来ますしね?」
「そうかもね、ポジティブに考えることも出来るかもしれない。」
NARIELさんがそう言ってくれたおかげで、しのもJHARIBANさんを悪く思わないですんだみたいだ。
「それで、俺たちはどうすればいい?」
Xekioの使者は、重く口を開いた。
「残念だが、こうなった以上、そちらの要求を飲むことは出来ない、取引も中止だ。」
交渉決裂ってことか……
「連絡は以上だ、GENNに会いたくば自分で探すことだな」
使者は去っていった……
「これからどうしようか、」
「まずは、まりちゃんに会ってみませんか?」
「まりちゃんに?」
「はい、昨日、まりちゃんに聞いたんです。昔JHARIBANさんに戦闘を教わったことがあるって、」
「そうなんですの?」
私も最初に聞いた時には驚いた。彼女とJHARIBANさんには接点なんてないと思っていたのに、
「お師匠さんが脱走したって分かれば、喜んでくれるかもしれない。行ってみよう、」
「えっ!?  師匠ってセキュリティにつかまっていたんですか!?」
まりちゃんに知らせを伝えると、すごく驚いたような顔をしていた。
「うん、セキュリティというか、セキュリティを操っている影の組織見たいのが居て、そこに捕まってたんだよ、JHARIBANさんが地上に戻った後に、」
「地上の世界で、武器屋をひらいたという話は、きいておりました。でもそこから、つかまったなんて話は1度も……」
まりちゃんはふと、思い出したように数枚の手紙を取り出した。
「師匠とはなればなれになったあとでも、よく師匠から手紙をいただいていたんです。」
「ライムから聞いてんだろ? 俺たちに届いた手紙の話、」
「このこと、ライムやナヴィエには内緒な、」
そういえば、鍛冶屋JHARIBANにいたあの二人も、JHARIBANさんからの手紙を受け取っていたっけ、
「でもほら、この手紙とこの手紙には、JHARIBANさんのいらっしゃる場所が書いてあるじゃないですか?」
確かに、「いまはルテケト湿原にいる、」「エンプラットの町に来ている」など、自分の居場所を伝える文が最初に来ているようだ。
「でも、このあたりから、居場所がどこにもかかれてなくて、へんだなとは、思ってたんですけど……誰かにつかまってたなんて夢にも……」
手紙にはまりちゃんを心配する内容や、自身の近況などが連ねられていたが、敵に捕まっていた時と思われる、「居場所のない手紙」では、近況を伝える内容の文章は少なくなっている。
自分の大変な状況を悟られないためだろうか? それともまりちゃんを退屈させないためだろうか? 
手紙の最後には決まって、なぞなぞのようなものが添えられていた。
「哲学者の『ゴール』ってな~んだ?」
それが分からないから哲学者は頭を悩ませているというのに……
「そうだ! 昨日もとどいていたんです、これが一番あたらしい手紙です。」
一番新しい手紙にもなぞなぞが添えられている。
「『A12 A22 A32 A42』これな~んだ?」
もはや暗号の域である……
「この最後のなぞなぞって?」
「最初は、私を楽しませようとしてくれたものだと思ってました。けれど、敵につかまっていたことを考えると、私に対するなにかの暗号だったのかもしれません。ただ、昨日届いたこの手紙だけは、まだ解けていなくて……」 
確かに、A12A22などのように、アルファベットと数字が並べられていて複雑だし、今までのとはかなり傾向が違っている。
「ほかは解けたのかな?」
「はい、今までのは、読んだ瞬間にはもう分かってたんですけど、」
すごいな、子供は大人と違ってすごく頭が柔らかい、こういうなぞなぞは大人よりも子供の方が早く解けるものである。
「これが、一番古い手紙だよね? 『哲学者の「ゴール」ってな~んだ?』……」
「それは、『キルケゴール』です。デンマークの哲学者にキルケゴールっていう人がいます。」
子供でも大人でも難しいんですけど……
「じゃあこの、『笑わないと呼べない家族』は?」
「母です。『ハハ』って笑わないと呼べません。」
「じゃあ次、『水が集まって出来た「花」』は?」
「桐の花です。『霧』は、空気中の水滴が集まってできているから、」
「じゃあこの、『神様がいればいるほど、本数が多くなるもの』は?」
「柱です。神様は『一柱、二柱』と数えるからです。」
すげえ……本当に一瞬で解いちゃった……
「そして最後……A12~A42だけど………」
法則性は分かる。A1の後に必ず「2」が付いて、Aのすぐとなりの数字が1ずつ増えていく、そして最後は「4」……
「……もしかしたら、これまでのなぞなぞの答えがヒントになっているのかもしれない。」
「どういうことですか?」
「Aのすぐ隣にある数字は4で止まっていて、なぞなぞも4問出されただろ?」
「はい、確かに、」
「恐らくこのAは『アンサー』のAだ、1問目の答えから、4問目の答えまでの『上から2文字』までを繋げて読む、これでなにか文章が完成してたりしないか?」
「なるほど!やってみます!」
これまでのなぞなぞの答え、「キルケゴール」、「母」、「桐の花」、「柱」から、2文字ずつ取り出して並べる……
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