カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

訓練の日

「そうだ! KUMIさんが、腕を骨折して……」

そうだった、Xekioとの戦闘で私は左腕を骨折してしまった。

「その左腕か?」

「ええ、一応応急処置は、ネームレスにしてもらったんですけど、」

「あんまり酷い怪我だったら、Phoviaの手術とか受けた方がいいぞ?」

「えっ!?」

や……やめてよ、あの人って麻酔を打たないで手術するんでしょう……? 

「診察しましょうか?」

「げっ!! 出たァ!!?」

「おやおや……お化けみたいなリアクションをされてしまいました。」

Phoviaさんは私の目の前にしゃがみこみ、有無を言わさず腕の診察を行った。

「いやいやいや……診察は結構ですので……どうか手術だけは……」

「うむ、再生が始まっているようですね、再生のポーションをお飲みになられた?」

「はい、そうですけど……」

「上手く再生してくれれば、問題ないんですけどね、骨折の状態から察するに、なにか巨大な手のようなものに握りつぶされる形で骨折したと思われます。」

やっぱり分かるんだ……医者だから……

「恐らく粉砕骨折ですね……よし、手術をしましょう、」

ああ、無情……

「先生……一応聞きますけど、麻酔は……」

「う~んと、あったかな……あ!ごめんなさいちょうど麻酔薬を切らしていて」

「ええっ!!?」

「申し訳ありませんが麻酔無しで」

「無理無理無理!! 絶対嫌だ!! だって再生のポーションも飲んだんだよ!? 手術なんてしなくても治るって!!」

「しかし、患部の再生に巻き込まれて骨片が筋肉組織に食い込んだら、それこそ手術しなきゃ治らない損傷に繋がりますよ? 」

「で、でも、麻酔は……」

「キュキュピッ!!」

「ピュッ!!」

ぼたんは種を吐き出し、なにか不思議な大きな葉っぱを持つ植物を生やした、

「ほう、ボタニカルラットとは、また面白い生き物を使役なさっていますな、」

「ペットの、ぼたんちゃんです。こうやってポーションの材料を作ってくれたり、色んな植物を生やして戦闘を助けてくれたりしています。」

「なるほど、この葉っぱはサンダーギンピーですね、 刺されると稲妻が走ったように痺れると言われる毒草ですが、毒を薄めれば、麻酔の原料にもなります。」

「えっ、じゃあ麻酔は……?」

「はい、これで、全身麻酔が出来るくらいの麻酔薬が作れます。」

「ぼたんマジでありがとう!!」

本当に危ないところだった……

「では、手術室へ案内しましょう、」

まぁ、麻酔ありでも手術は怖いんだけどね……麻酔なしよりは断然ましだ……




「手術は成功です。思ったよりも再生が早く、難しい手術でしたが、何とか手遅れになる前に骨片を摘出することが出来ました。」

「これでもう、治ったんですか?」

「はい、本来ならば、腕にプレートを入れて骨を繋ぎ合わせ、完治した段階でもう一度プレートを引き抜かなくてはならなかったのですが、再生のポーションの効果が強かったのか、この2時間ですぐに骨が完治し、そのままプレートの引き抜きまで行ってしまいました。」

「ではもう、私の骨は……」

「完璧に元通りです。」

ああ、良かった、何とか痛い思いせずに治ったみたいだ。

「治していただいてありがとうございました。」

「いえいえ、恐らく、もう元通りに治っているはずですが、万が一のことがあるので安静になさってください。」

「はい、ありがとうございます。」

「キュピッ!!」

手術を終えた私は、手術室を後にした。

「KUMIさん、大丈夫だった?」

「ええ、おかげさまで、何とかなったみたいです。」

腕を軽く振って見たが、特に痛みや違和感を感じることは無かった。再生のポーションが凄かったのか……それともPhoviaさんの手術が凄かったのか……

「さて、これからどうしようか、」

「地下の施設に、Tellさんのお父さんが移送されるみたいですから、それまで待っていればいいんじゃないですか?」

「それもそうなんだけど、なんか、ただ待ってるのも癪じゃない?」

大人しく待ってた方がいいと私は思うけど……まぁ暇なのは確かだ、どうにかこの時間を有効に使いたいところである。

「なぁ、Xekioの戦い方、不思議だと思わないか? 攻撃をわざと全部受けて、血だらけになりながら向かってくるあの戦闘スタイル、」

「確かに……正気の沙汰じゃないと思います。」

Xekioに限ったことじゃないけど、

「今度あいつとまた戦わなくちゃならないって時のためにさ、格闘家と戦う訓練をしておくべきだと思うんだ。」

「な、なるほど……」

「今日の夜にさ……まりちゃんに会いに行かない?」




本日2度目のカジノ内探索となる。今日の昼間、私たちが起こしたセキュリティ違反のせいか、周りの警備員たちはどこかピリピリしている。

私たちともよく目が合う。

「またあんなことを起こされやしないか、気が気じゃないだろうね、」

Tellさんがまるで他人事のように言った。

私たちはカジノの奥の方に進み、かつてまりちゃんに案内されたルートを思い出しながらKILLHAの事務所に向かった。

「えっと、ここの扉からバックヤードに入って……あった、あの扉だ、あれ? KILLHA?」

KILLHAさんは、どこかへ出掛けるところだったのか、扉を開けて外に出てきていた。

「なぁ、KILLHA、どっかに行くつもりだったのか?」

「おう、Tellか、ちょっと野暮用があって外に行くところだったんだ、お前たち、俺に何か用だったのか?」

「ちょっと、頼みがあってさ、」

「どうした? 取り引きのことなら、俺からも断っておいたが?」

「いや、その事じゃなくて、まりちゃんに話したいことがあって、合わせてくれないかな。」

「ああ、そういう事なら上がってくれ、まりもお前に会いたがってたんだよ、」

まりちゃんも会いたがってた?




「それで、私に用とは?」

「格闘家との戦い方ついて教えて欲しい、同じ格闘家なら弱点が分かるかと思って、」

「そうですか、では、わたしの知りうる限りで、教えて差し上げますので、こちらの方に、」

「んじゃ、俺は出かけてくる。まり、あとは頼んだ。」

「おまかせくださいませ。」

KILLHAはそのまま部屋を後にした。

「では、こちらの方に、」

まりちゃんに連れられて最初にKILLHAに会った時に連れて来られた部屋とは反対側の部屋に案内された、

「ここは?」

「私の練習場です。」

まりちゃんはゆっくりと扉を開けた。

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