カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

社会の中で

Phoviaは続けた、

「親子の問題に首を突っ込むのは野暮と存じますが、お父様といささかすれ違いすぎではございませんか? まずはお父様と話してみなければ、何も変わりません。コミュニケーションですよ、何事も」

「コミュニケーション……?」

「何があったかはあえて聞きませんが、親子で意見が食い違うというのは良くあること、いくら血が繋がっていようと違う人間ですので、考えが違う方が当たり前なんです。問題は、意見の違いに対して、『どう振る舞うか』、」

「なんで親子で意見が食い違ったことまで分かるんだろう……」

「医者として、長年の経験があるもので」

医者としての経験とか、関係無さそうだけどな……

「お互いに違う意見を、衝突させては、親子の溝は深まるばかり、自分の意見を通すにしろ、相手の意見を飲むにしろ、ただお互いに意見をぶつけ合うのではなく、優しく投げかける必要があります。そうしてお互いに納得した上で進めなければ、どちらかはモヤモヤした感情を抱えたまま進まなければならないんです。」

「そんなこと……わかってるよ……」

「でも出来ていなかったでしょう? 頭ではわかっているのにどうしてもぶつかり合ってしまう。人間というのはね、悲しい生き物なんですよ……自分が作り出した『自分の中の世界』をいつの間にか『みんなの世界』だと錯覚して、相手が自分の思い通りになると思い込んでしまう……」

Phoviaは薬品ビンを机の上に置き、天井を見上げるようにしながら言った。

「親子が一番いい例です。子は親の言うことを聞いているわけじゃない。『聞いている方が良い』と自分で判断しているから聞いているのです。そのことに気づかず子を従順であると勘違いして、ぞんざいに扱う親が世の中にどれだけいることか……」

この人……どんな親の元で育ってきたんだ……?

「話しましょう、ここは現世では無いのです。現世では心を通わせられなかった人と、ここでは上手く付き合っていけるかもしれない。ここには『親の事情』も、『複雑な社会』も無い、このゲームのプレイヤー同士として、あなたの考えを投げかけてみなさい」

「……分かった、やってみるよ、」

Tellさんも決意が固まったみたいだ。

「あのさ、」

途中でしのが割り込んできた。

「どうしたの?」

「そもそも、どこに敵のアジトがあるかわかってるの? お父さんに話をするには、捕まっている場所を知らなきゃ行けないでしょ?」

「それなら問題ない、RAYが知っているはずだ。メールで聞いてみよう」




「ピロンッ」

少し時間が経って、RAYさんから返信が帰ってきた。

「なんて言ってました?」

「アジトの場所は知ってるけど、そこに向かうのは危険だって、」

「どういうことですか?」

「どうも、彼らには本命のアジトの他に、仮のアジトをいくつも持っているらしい、それぞれの仮アジトを管理しているのがメリアやAsBemといった部隊長だ、」

「じゃあ、ワゴウ村にあった冥行会のアジトは……」




「それでね、ここ、冥行会のアジトなの」

「だから早くここを出ないと殺されちゃう、」




「ああ、元々は、AsBemが管理していた仮アジトだろうな」

仮アジトを、教会にしちゃったわけだ、だいぶやりたい放題だな、

「そして本部が攻められた時、1度近くの仮アジトまで逃げ、そこを本命のアジトとするらしい。つまり、『今の』本命のアジトの場所を知っていても、下手に攻めたらどこに逃げられるか分からないわけだ。」

難しいな……

「でも、その本部のアジトに必ずしもお父さんが囚われてるわけじゃ無いんでしょ?」

「そうだな、そこが1番の問題かもしれない。」

「じゃあどうやって……」

「……会うしかないな、Xekioに、」




その頃……

「……で、うちになんの用なんだ? ゼキパイセン、」

「まぁまぁ、そう焦らなくても良いじゃあないか、せっかく土産のケーキを持って来たんだ、食べながら話そう、」

「ケーキなんて、俺にはただの砂糖の塊にしか見えねぇよ、」

「そうか、それは残念だな、」

「てめぇまさか、ケーキ食うためだけに来たわけじゃあ無ぇだろう? 狙いはGENNか?」

「それ以外に、何があると?」

「やっぱり降りるのか? この作戦を、」

「まさか、君には期待しているんだ。
君がまだ、一兵士だった頃には、君がそんなに恐ろしい魔法を引き当てるとは思わなかった。
スキルガチャの恩恵を1番受けたプレイヤーは、この世界のどこを探しても君以外に居ないだろう、幸運だったね」

「なんだよ、煽ってんのか? 俺が幸運だけで部隊長になったとでもおもっていやがんのか……?」

「とんでもない、確かにその『ヨミ』の魔法が君を部隊長にまで押し上げた『直接』の理由だ、それは否めない。
しかし、君には元々部隊長になれるほどの素質があったということなんだよ。
あの魔法は難しすぎる。でもそれを君は見事に使いこなしているじゃないか、運と実力、その両方がなければ成し遂げられないことだろう?」

「どうだかな……」

「……そろそろ、本題に入ろうか、先程、KILHA君と話をしてきたよ。彼はどうやら我々のチームに入る気は無いらしい、説得するためにはTell君の協力が必要なようだ」

「だろうな……」

「そこで、Tell君の父親であるところのGENN医師を、私のところに引き渡して頂きたい……」

「あの、『地下ギャンブル施設内』のアジトか?」

「ああ、その方がTell君も動きやすいだろう、どうかな?」

「……乗った、しかし条件が2つある。」

「……なんだい?」

「1つは俺を地下シェルターに入れるようにすること、GENNの監視は俺がやる。」

「なるほど、では私からの紹介ということで地下施設に案内しよう、そして2つ目は?」

「KUMIから『呪いの剣を奪ってくること』だ、理由はまだ教えられない。」

「呪いの剣を……? ハハハ……君の考えは相変わらず全く読めないな。 その2つの条件でいいんだな? わかった、やってみるよ、」

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