カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

謎の少女

「……ずいぶんとやるじゃねぇか……だがそれまでだ、」

「……はァ……はァ…………」

挑戦者として近づけば、話を聞いてもらえると思ったが、まさかこんな事になるとは……

顔を合わせた時点で分かっていた。こいつは戦いの中に生きる男、狂戦士の目をしている。力づくで分からせなければ話を聞いてくれそうもない。

そして、俺は、こいつを上回るほどの力を持っていない。

「まぁ、抵抗するだけ無駄だったってことだな。次の一撃でてめぇは終いだ、」

だが、まだ、チャンスはある。俺は、こいつの弱点を見抜いた。

そこを付けば……

「ガキィィンッ!!」

「フッ……」

大丈夫だ、KUMIさん、俺は生きて帰ってくる。

「 ジャキィンッ!! カンッ!!」

クイックイクイップ、装備している武器を一瞬で変更するスキルだ。

「グッ!!」

先程まで軽かったはずの剣が、急に重い剣へと変わり、KILHAは何とか攻撃を受けるも……

「はぁっ!!」

「バキィッ!! …………」

KILHAの剣は、折れてしまった。作戦は成功、しかし一つだけ予想外だったのが、俺の剣まで同時に壊れてしまったということだ……

「…………フン、タダでは死なん、」

「なるほどな……」




目の前で、起きた出来事を、私は信じられなかった。あのKILHAの剣が折れたのだ……その様子を見ていた他の観客たちも、驚いているようだ。

「な、なんということでしょうか……挑戦者、KILHA選手、共に武器が折れてしまうとは……」

実況も困惑しているようだ。観客席にいたディーラーのうちの一人が、実況席へと走っていく。

「……」

またTellさんがこちらに目配せ、

「KUMIちゃん、先にドアの方まで行って、鉄の扉を空けておいて」

「わ、分かりました。」

直後、観客席を混乱におとしいれるアナウンスが流れる、

「たった今! 判定が出ました。両者とも、武器がなくては戦えないため、戦闘不能とみなされ、この勝負ドローとなります!!」

その瞬間、辺りがざわざわとしはじめる、今まで勝つと思われていたプレイヤーが、対戦相手と引き分けるなど思いもしていないからだ。
 
「ふざけるな!! 俺はKILHAに5000マニも賭けてんだぞ!!」

1人の観客が声を上げたのを皮切りに、次々に観客席から野次が飛んでいく

「剣がねぇなら素手で殴りあえ!!」

「勝負を続けろ!!」

観客達がTellさんたちの戦う檻へと近づいた瞬間!!

「ジャキンッ」

「クローショット!!」

「任せて!!」

「ギュウウウン…………ガシャンッ!!」

Tellさんの持っていたクローショットと、ネームレスの体に内蔵されたクローショットが、空中でお互いに噛み合い、Tellさんは檻を飛び越えて観客席へと降り立った。

「逃げるよ!!」

私が事前に開けておいた鉄の扉から外へ出て、通路へと逃げる。

「待て!!逃げるな!!」

「あいつを逃すな!!」

複雑に入り組んだ通路は、追ってくる観客達を巻くのにちょうど良かった。私たちは必死に走り、何とか追っ手から逃れることが出来た。

「ふう、やれやれ、」

「これで、あいつも、俺たちの話を聞いてくれるようになっただろう。」

全く、本当に人騒がせな人だな、Tellさんは、




名もなき挑戦者の顔を、その場にいた人達は、皆覚えているようだ。会う人合う人が、Tellさんを睨むような目をしている。

「凄い恨まれてますね、みんなに、」

「仕方ないよ、それぐらいのことをしでかしたんだから。」

今現在、私たちはKILHAを探して カジノの方まで来ている。やはり、見つからないみたいだ。

「どうする? 闘技場に戻ってみようか?」

「いや、私はいいです……」

私は完全に、あの闘技場の空気がトラウマになってしまっていた。なるべく、あっちには近づきたくない。

「仕方ないか、日を改めよう。」

「あの……」

Tellさんに突然、謎の少女が話しかけてきた。

「もしかして、Tellさんですか?」

「え? うん、そうだけど、」

少女は額に大きな傷痕があり、メイド服を着ていた。

「ご主人様に、Tellさんという男を連れて来いと言われました。 1度、お会いして頂きたいのですが、お時間を頂けませんか?」

ご主人様? 誰かの使いで来たのだろうか?

「ご主人様はなんて言うのかな?」

「KILHA様です。今一度、Tellさんと話がしたいと、おっしゃっていました。」

「KILHA……分かった、行こう、」

願ってもない展開だった。まさかそっちの方からコンタクトを取ってくれるとは思わなかった。

「では案内させていただきます。」




小さなメイドさんに連れられて、私たちは、カジノの奥へ行き、バックヤードへと進んだ。

「こ、こんな場所……通って大丈夫なんですか?」

「KILHAさまがお許しをくだされば、問題ないです。」

怪しい雰囲気の子だな。しゃべり方は幼いのに、態度は大人びていて、感情の起伏も少なく、アンドロイドのようにも感じられる。

「ここです。ここがご主人様のお部屋です。」

虎の絵が描かれた扉、こちらを威圧するように虎の目が赤く輝いている。

「入っていいの?」

「どうぞ、」

ゆっくりと扉を開けると、部屋の奥に、真っ黒い大きな椅子に腰かけているKILHAの姿が見えた。

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