カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

本当の闇

「ドンッ!!」

NARIELさんとの話に夢中になっていた私は、前方不注意で、目の前の男にぶつかってしまった。

ぶつかった瞬間、私はその衝撃に耐えきれず、そのまま後ろに倒れた。

ぶつかった相手の男は振り返り、倒れた私を上からは見下ろしている。

「ぁ……え、え~と…………」

私は目の前の男に恐怖し、何も喋れなくなった。完全に頭がパニクっている。

「なんだ、人にぶつかっておいて謝りもなしか? 」

その男は背が高く、私を威圧的な目で睨みつけてきた。背中には地面に着いてしまうほどの長さの長剣を背負い、両手の全ての指に、宝石のついた指輪をはめていた。

「……あんた、見た事ない顔だな、新入りか? 」

彼は私を睨みつけながら話した。

「は、はい……その……えっと……」

「無理して多く喋ろうとすんな、新入りのうちはオレらとあまり関わらない方がいい、」

そう言うと、目の前の男は周りにいた複数人の男を引き連れて、去っていった。

去っていく彼のポケットから、1枚の紙が落ちる。

「あ、あの! な、何か……落とし……」

「いらん……あんたにやる」

そのまま彼と、彼の取り巻きは、暗い通路の奥の扉を開け、その先の闇へと消えていった……

「あれは……誰だったんだ?」

しのがそう呟いた、

「闘技場の方に行ったみたいですけれど……」

「もしかしたら闘技場で戦ってるプレイヤーの人なのかも、」

そうか、そういえば隣の部屋では、闘技場で2人を戦わせるギャンブルをしていたんだっけな。

「あっちには、絶対に踏み込まない方がいい、戦いでは、血を見る事になるだろうし、運が悪けりゃ殺されるところを見てしまう。それに、勝負が着いた時も危ない。負けたほうに賭けてた人達が暴れだしたりして、暴動が起こる。そうすれば客席からも血が流れる。」

無法地帯じゃないか……

「そういえばさっきの紙には何が書かれてたんですの?」

落ちた紙をもう一度よく見てみる

「これ……名刺だ……KILHAキルハって書いてある。」

あの人はKILHAという名前なのか……

「なるほど……確かに、闘技場で戦ってるプレイヤーの中に、KILHAって名前があったはずだよ。」

「通りで怖そうな人だと思いましたわ。闘技場で戦っているなら、何人か人殺しをしていてもおかしくないですもの、そんな雰囲気が出てましたわ。」

「なるべく関わり合いにはなりたくないですね、」

「じゃあとっとと地下からおさらばしよう、そうすればあいつとまた出会うことも無い。」

私たちは、僅かに手元に残ったチップを換金し、足早にシェルターを去った。




シェルターを出た帰り道、もうゴロツキどもも寝ているのか、人の気配を感じない。

「今何時ですの?」

「午前4時ちょい過ぎ、」

うわぁ、4時間も遊んだのか、ちょっと罪悪感……

「あれ? あそこに誰か立ってる?」

見てみると、大男が壁に寄りかかりながら、腕を組んで立っているのが見えた。あれはなんなのだろうか? 時間も時間だし、人の気配も感じなかったのに……

「まさか……オバケ……ですの?」

「あんなムキムキの幽霊なんて見た事ないけど。」

「知らんぷりして通り過ぎましょう、」

通り過ぎようとした時、

「無視しようとしたって無駄だね、私はあなたたちに話があって来たのだから……」

まぁ、そう都合よくは行かないですよね~……




「あなた……何者?」

しのが暗殺者特有の殺気を放出しながら聞いた。

「その質問に答えれば、私の質問にも答えてくれるのかな?」

目の前の男は妙に柔らかな表情で言った。

「返答次第……かな、」

こういう時、しのがいると便利だ。相手を牽制しながら、相手の話を聞き出してくれる。

「なるほど、では、名乗らせていただこう、私は『Xekioゼキオ』、黒ギルド第2部隊、隊長をやっている。」

「く、黒ギルド……!?」

な、なぜ黒ギルドがこの町にも……?

「黒ギルドがなんの用?」

「おっとその前に、私からひとつ質問をいいかな?」

彼は一つ咳払いをしてこんなことを言った。

「Tellくんは今、どこにいるのかな?」

しのはほんの一瞬考えたあと。

「私の家にいる。けどあんたをそこに連れてく訳には行かない。」

と返した。

「確かに、レディの家にいきなり押しかけるのは失礼にも程がある。」

どうやらこの男、『紳士』を気取っているらしい。確かに服装もどことなく、現世のタキシードのような雰囲気がある。

「では、Tellくんにこう知らせてくれないかな? 『黒ギルドのひとりが、君に話があるそうだ』と、」

「……話?」

「具体的に言うと、取引をしたいんだよ。内容はこうだ、『シェルター内のある男の身柄と引き換えに、君のお父さんを解放する』。」




「アトラクトサイクロン!!」

「ビュオオオ!!」

「な、なんだっ!?」

「うぉああああッ!!?」




あの時、Tellさんのお父さんは、黒ギルドに捕まって……

「私たちはある人物を仲間に引き入れようと考えていてね、その人物をここに連れてきて欲しいんだ。名は確か……」

Xekioは少し考えるような仕草をして、私達も知っている名前を答えた。

「『KILHA』……だったかな。」

「き、KILHA……!?」

「知っているのかい?」

「え、ええ……1度すれ違っただけですが……」

うわぁ~……偶然ってあるもんだねぇ……

「わかった、そう伝えとくけど、乗るかどうかわかんないよ?」

「いや、伝えてくれるだけでいいんだ。あとどうするかは彼次第だしね……んじゃよろしく頼みましたよ?」
 
そう言って彼は夜の闇へと消えていった……

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品